フランスで15日に発生したノートルダム大聖堂の火災後、大聖堂再建のための寄付の動きが急激に広まり、なんと2日間で8億5000ユーロ(1070億円)
が集まり、本日のABCニュースではその額は1250億円に達していると伝えている。
ここ数年、フランにおける寄付者の数や寄付額は急激に減少傾向にある
だけに、驚きの金額である。その大半が大富豪や高級ブラン、大手化粧品メーカーによるものが大半を占めているようだが、寄付者の中には1億ユーロ(126億円)、2億ユーロ(250億円)の超巨額の寄付者がい
るようである。
早速、マクロン大統領はこの動きに
便乗し「私は、この大惨事を結束の機会とする必要があると、強く信じている」と述べ、「大聖堂を5年以内に再建させる」と力強く語
ていた。支持率が低迷している大統領にとって、大聖堂再建への盛り上がりは人気回復に願ってもないチャンスと考えたようである。
私は超巨額の寄付金が次々と寄せられているというニュースを聞いた時、フランスでは「黄色いベスト」運動の抗議デモが5カ月にわたって続き、富の不平等と低所得者層の窮状に注目が集まっていた最中だけに、「そのような寄付の集まりを、キリストやマリア様がお喜びになられると思っているのか
!!」と、落胆と強い憤りの気持ちにさいなまれた。
その後のフランスのF2テレビのニュースを見ていると、盛り上がっていた再建に向けての動きが一気に冷め、世論は2分されるところとなって来ているようである。「黄色いベスト」運動で注目されている女性は、にがにがしい思いを次のように語っていた。「とんでもない額をポンと差し出している億万長者たちは、日々苦しんでいる人々のために、お金を出そうと
はしていないではないか」と。
この女性が言うように、「黄色いベスト」運動で掲げる低所得者層の支援には全く寄付の動きがないのに、なにゆえ100億円、200億円という巨額の寄付者が現れたかというと、今回の寄付では大規模な税額控除が受けられるという点と、数千万人というキリスト教信者から尊敬され
、支持を得ることが出来るからではないかというのが大方の見方のようである。私もその通りではないかと思っている。
寄付額はこれから先も更に集まることだろう。しかし、そんな大金を使っていかなる大聖堂再建を行おうというのか。キリストやマリア様は「私たちの祈りの場は質素なものでよいから、世界各地で困窮し苦しんでいる人々の支援に役立てなさい」そう思っておられるに違いない。
大変な
資産を保有する超富豪や大企業、民間財団は、「黄色いベスト」運動が進める低所得者層の支援や格差是正などは全く念頭にないのだ。だから6カ月間にわたってほぼ毎週行われてきた「黄色いベスト」運動の抗議デモが、20日の土曜日に再び大規模に行われ、200人を超す逮捕者が出る暴動と化すこととなったのだ。
富める者と貧者との「狩り合い合戦」へ
「黄色いベスト」運動参加者の叫びはただ一つ。「政府や大富豪たちは大聖堂の再建には迅速に動いているのに、自分たちの運動には対応がなされていないではないか」という憤りであった。どうやら、天が下したと思われる今回のノートルダム大聖堂の火災によって、富める者と貧しき者の戦いが
一段と激化することになりそうである。
ホピ族の予言は、大規模な戦争の端緒となるのは病的世界にいら立った民衆の蜂起と、虐げられたマイノリティー、すなわち持たざる者、貧困にあえぐ弱者の報復であると次のようにのべている。
「高い地位の猟師と低い地位の猟師との間に狩り合い合戦が始まるだろう。高い地位にいる者たちは、暴動やテロリズムを通して獣(けだもの)のように狩られるであろう。指導者たちも報復し、狩り合い合戦が始まる。やがてこの状況は力を増して広く行き渡り、世界中どこであれ統制が効かなくなるであろう」
今フランスで発生している「黄色いベスト」運動とノートルダム大聖堂の火災は、何年も前から私が伝えて来た高い地位の猟師と
、低い地位の猟師との間に狩り合い合戦の発火点となりそうである。どうやら、英国と米国に次いでフランスも分断と闘争の渦中に巻き込まれていくことになりそうである。