求職を諦めた人々
先日アメリカの12月の雇用統計数値が発表された。それによると、失業率は前月より0.4%低い9.4%で、2009年5月以来の低水準となった。私は年末から年初にかけて労働状況は更に悪化するのではないかと考えていたので、前月に比べて0.4%も改善したのには
正直驚かされた。
アメリカの労働人口1億5000万人から見て0.4%の改善ということは、数字上では失業者の数が60万にほど減少したことになる。実際に発表された数値を確かめてみると、
失業者は確かに前月に比べて55万6000人減少し、その数は1450万人に改善されていた。数値が正しいものなら、55万人近い人が新たに就職が出来た
ことになる。
ところが驚くことに、同時に発表された就業者の増加数はたった10万3000人しかない。なんと、そこには45万人の差があるのだ。この数値が非農業部門に限られたものであることを考慮しても、先月に比べて新たに職に就いた人の数が10万人やそこらでは、どう考えても計算が合わない。
45万人の失業者はどこへ行ってしまったのか?
実は、ここに統計数値のマジックが隠されているのだ! 失業率というは(「失業者数」)を(「就業者数」+「失業者数」=労働人口)で割った数値である。
最近のデータは概略で、分子の失業者数はおよそ1500万人弱、一方分母の労働人口は1億5000万人強。その結果、10%弱の失業率になっているわけである。
ところが、ここで言う「失業者」の中には、仕事がなくても、仕事を探していない者はカウントされないことになっているのだ。つまり、長い間ハローワーク(職業安定所)に通って職探しをしてきたが、一向に就職先が見つからず、職探しを諦めた人は失業者の数に入らないと言うわけである。
ということは、「今回0・4%改善」、「雇用回復鮮明に」とマスコミが言っているのは、真っ赤な嘘で、数値が示す真相は、10万人は新たに職に就いたものの、求職活動に疲れて40万
人を超す失業者が職探しを諦めたということなのである。
こうした傾向は昨年当たりから次第に大きくなっているようであるから、政府が発表する雇用統計を鵜呑みにしていては、雇用情勢や経済状況を正しく判断することが出来ないことは明らかだ。それよりも、こうした就職を諦めた人々の増加が、これから先、アメリカ社会にどのような事態を招く
ことになるのかという点を考えたら恐ろしくなってくる。
先のHPで報告したように、今アメリカでは「ブーメラン世代」現象と呼ばれる大学卒業生の親元帰りが起き、各地で若者と年配者の仕事の取り合い合戦が
発生していることを併せて考えると、マスコミに登場する「雇用回復鮮明に!」などという記事に踊らされていては大変なことになりそうである。
このところ、ダウ平均が11,700ドル台をつけ、更に12,000ドルに向かおうとしているが、それはこうした政府やマスコミのまやかしの中で起きていることを
、読者は忘れないでおいて欲しいものである。