EUからの緊縮策を受け入れるかどうかを問うギリシャの国民投票、事前の予想とは異なり反対が賛成派を大きく上回る結果となった。
5年間にわたる緊縮策で年金や給与を大幅に減らされ、さらに増税によって厳しい生活を余儀なくされてきた国民の意向が、今回の投票結果となったものと思われる。
ユーロ圏からの脱退を望む人は少ないという報道で、賛成派が多数を占めることになるのではないかと思われていたが、ユーロ圏に留まる、留まらない云々より、日々の生活の先行きを、多くの国民が優先したということのようである。
この結果にほくそ笑んでいるのは、ロシアを訪問中の習近平とプーチンではないだろうか。
これから先、チプロス首相は国民の民意を後ろ盾に、EUとの交渉に向かいことになるわけだが、EU側がギリシャ政府の意向をどこまで受け入れるか、先行きは不透明である。 主要国フランスとドイツの首相が本日パリで首脳会談を予定しているようだが、交渉再開についての同意は得られても、はっきりした対応策が出されることは無理だと思われる。
これまで国の内外で指導的な力を発揮してきたメルケル首相であるが、今回の債権国・ギリシャ国民の開き直りとも思える投票結果を受けて、これ以上の支援に対してドイツ国民の同意を得ることは一段と難しくなったことは明らかである。 現にドイツの副首相は今回の結果を受けて、「新たな銀行支援など想像すら出来ない」と発言している。
いずれにしろ前回の「ギリシャ債務不履行」で記したように、これから先、ギリシャの債務問題が債権国
と債務国、また双方の国民同士が納得し合えるような円満な解決方法などあり得ないことは確かである。
問題はデフォルトの発生がどのような形で起き、その後、ユーロ圏からの離脱に向かうことになるのかどうかという点であるが、ギリシャ国民にとって、銀行での預金引き出しが再開されるかどうか
が当面の問題となること確かである。 ドイツの副首相の発言を聞く限り、先行きは容易ではなさそうである。
また一方で、世界の金融市場への影響がどこまで広がるかも注目点である。 株式市場の一時的な下落はあっても、当面暴落的な落ち込みは避けられるのではないかと思われるが、ギリシャ問題の混迷が、これから先やって来る世界的な株式市場崩壊の一つの狼煙(のろし)となることは間違いな
い。 どうやら秋本番に向けて、債権と株式市場の大きなうねりがいよいよ始まることになりそうである。