次々と廃墟と化す
シリア首都近郊の都市
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カタールのアルジャジーラTV が伝える戦闘の悲惨さ
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シリアの首都ダマスカスの郊外の町ドーマでは政府軍の爆撃で連日のように多数の死者が出ている。 しかし、このところの爆撃には米国も国連も、またアラブ諸国もアラブ連盟にもまったく動
く気配が見られず、なんら手を打とうとする意思がないようだ。
カタールのテレビ局・アルジャジーラは、「シリアの多く人々は国際社会が自分たちの苦しみに目を向けず、アサド政権による新たな虐殺行為を目をつむって放置していると感じており、もはや国際社会になんの期待もしなくなってしまっている」と、伝えている。 なんとも悲しい
事態だがそれが今の国際社会の実体なのである。
戦闘の凄まじさは下の写真を見ればお分かりになるだろう。 犠牲になるのはいつものことながら女性と子供たちである。 先日のアサド大統領の発言を聞いていると、
シリア政府はイスラム国や反政府軍からの攻撃で相当厳しい状況に追いこまれているようで、もはや我が身を守るために
は、国民の犠牲など構っておれなくなってきているようだ。
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政府軍の爆撃を受けたドーマの町
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首都・ダマスカスの近郊の町がこれほどの惨状となっているのだから
500万人を越す国内外への難民が出て当たり前である。〈アルジャジーラ)
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欧州へ逃れるシリア難民
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トルコからギリシャ、マケドニア、セルビア、ハンガリーを経由してドイツやフランス、
スカンディナビア3国を目指す難民ルートを、陸の「バルカンルート」と呼ぶ。
(以下の写真はフランスF2 / ドイツZDFより)
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写真で見る「バルカンルート」の苦難
こうした状況下、シリアの国民は自国に留まっていたのでは命を守れないため、国外脱出を計っている。 逃げ延びる先はヨーロッパである。 さらにシリアと同様
、厳しい状況下にあるのがイラクであり、アフガンでありパキスタンである。 かの国の人々も自国に未来はないと考え国を脱出している。 彼らの求める先もまたその多くがヨーロッパである。
ヨーロッパに渡るにはアフリカ経由で地中海をわたり、スペインやポルトガルに向かう「海のルート」の他に、トルコからギリシャへ渡り北を目指す「陸のバルカンルート」がある。 これまでHPで海のルートによる遭難・沈没など悲惨な状況をお伝えしてきたが、「陸のバルカンルート」
は命を失う危険度は「海のルート」に比べれば少ないものの、道中の悲惨さは「海のルート」と同様である。
今回は「陸のバルカンルート」の実体を写真を使って追ってみることにする。 バルカンルートというのは、シリアやイラクに隣接するトルコの西海岸から
、ギリシャに渡りバルカン半島を北上しマケドニア、セルビアを経由してハンガリーへと進むルートである。 難民たちはそこから最終目的地であるドイツ、デンマーク、スエーデン
フランス、イギリスなどを目指すのである。
先ずは、トルコのボドルムからギリシャのコス島を目指すことになる。 深夜に手引き人の案内でゴムボートに乗りコス島に向かう〈写真@)。 トルコの海岸からコス島は目と鼻の先、夜の明かりが見えるぐらいであるが、小さなボートに多くの人々が乗り込むため途中で転覆し命を失ったり、辛うじて泳ぎ戻って来る人々が多い。
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写真@
4000キロの避難旅の出発点となるトルコの海岸から、ギリシャのコス島を目指す
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写真A
観光地コス島に無事たどり着いて喜ぶ人々。 しかしそこでは
避難申請手続きが終わるまで、野宿同様な厳しい暮らしが待っている。
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写真B
コス島では、トイレもシャワーも洗濯をする場所すらない野宿暮らしが待っている
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なんとかバルカンルートの玄関口であるギリシャのコス島に無事たどり着いても、待っているのは劣悪な環境だ(写真A、B)。
1日に200人のペースでやって来る難民の数は、7月だけで5万人、今年に入ってからの総数は12万5000人に達している。 これだけの避難民がやって来ては、国家破綻に遭遇しているギリシャ政府が対応できるはずがない。
そのため難民たちは渡航手続きが完了するまで、トイレもシャワーも洗濯の場所すらない野宿同様な暮らしを強いられることになる
〈写真A、B)。 その後、彼らはギリシャ本土へ渡り、徒歩で何週間もかけてギリシャ北部を目指すことになる(写真C)。
〈先週から大型客船が収容施設として使われ始めているので、乗船できる難民は少しは楽になって来ているようだ)
ギリシャから第3の中継点・マケドニアにたどり着いた難民は、ここから列車でセルビアを目指すことになる。 マケドニアの小さな駅から1日3回
セルビア行きの無料列車が運行しているが、毎日4000人が押し寄せており、この列車に乗り込むのが大変だ。
下の写真Dを見てもらえればその過酷な様子が分かるだろう。
超詰め込みの列車に写真Eのような小さな子供を連れて乗り込むのだ。 中には子供は乗せたものの、親が乗れず親子が離ればなれになるケースもある(写真F)。 バルカンルートの中で、マケドニアでの列車への乗り込みは最も厳しい挑戦となっているようだ。
セルビアから目指すはハンガリー。 ハンガリーに渡るには国境付近では身を隠さねばならなくなってくる(写真G)。 ハンガリーは大量の難民の流入で対応が出来なくなっているため、
難民の入国を拒否しているからである。 そのため、現在高さ4メートルのバリケード(柵)が全長175キロにわたって設置されつつある(写真G)。
8月中にバリケードの設置が完了するため、難民はいま急いで押し寄せているのだ。
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写真C ギリシャを徒歩で北に向かって歩く難民
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写真D マケドニアの小さな駅からセルビアを目指す人々。こんな風景見たことがない。
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写真E こんな小さな子供たちが超詰め込みの列車に乗り込むことになるのだ
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写真F 電車に乗り込めなかった親に向かって叫ぶ子供
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写真G
セルビアからハンガリーに向かうには、国境付近で一時身を隠さねばならない
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写真H
セルビアとハンガリーの国境には172キロにわたって柵が作られつつある
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写真I
何ヶ月間にもわたる4000キロの過酷の旅を終え、
身も心も疲れ果てた様子で、ハンガリーの避難所を目指す人々 |
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トルコから約4000キロ、東京〜大阪の8倍の距離に及ぶ過酷な長旅を終えた人々は、これから先、目指す国々に散っていくことになる。 主な国々はドイツやノールウエー
などスカンディナビア半島諸国。 このところイギリスやフランスは少なくなってきているようである。
しかし、一番の希望先ドイツでも
、今年は年初の見込み数25万人を遙かに超えて75万人に達しようとしているため、亡命申請をを終えて自由の身となるには、かなりの日数がかかることになりそうである。
自由の身となった人々とて安心してはおられない。 彼らには、極右勢力による人種差別的暴力行為が待ち受けているからである。
紛争地シリアやイラク、アフガニスタンに残るも地獄なら、避難先を目指す道中も地獄、運良くたどり着いたとしてもそこでの暮らしもまた地獄。 恵まれすぎて平和ボケしている日本人には想像も出来ない避難民の苦難である。
一方、国民の意見が2分する中で、彼らを受け入れざるを得ないヨーロッパの国々もまた大変である。
自国の財政が厳しい国々においてはなおさらだ。 これから先、世界的な経済破綻が進むことを考えると、まさに受け入れ国も地獄
の苦しみを味わうことになるのは必至である。 こうして世界中の国民がみなそのカルマに応じた苦難と悲劇に遭遇することになるのだ。
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