先週、クーデター未遂事件が起きたトルコでは、昨日の真夜中近く(日本時間21日早朝)、テレビでエルドアン大統領が重要な発表をすることを知った何千人もの人々が、全国各地の広場に集まる中、大統領は3ヶ月間の非常事態宣言を出すことを明らかにした。
クーデターを鎮圧後、政府はこれまでに軍人6000人余、裁判官や検察官およそ800人、警官100人の他、民間人650人など1万人を超える人々を拘束。 また今日のニュースでは、解任・停職処分になった地方自治体のトップを含む公務員の数は5万人を超えたことが伝えられている。
それでも、国家の分裂を良しとしない多くの国民は、今回のクーデター鎮圧は国民と大統領の勝利であると喜んでおり、拘束や解任・停職などの処分に不満の声は上がっていないようだ。 しかしヨーロッパ各国から、今回の非常事態宣言によって、エルドアン大統領による強権的な政治の発動が、さらに強まることに対する懸念や非難の声は上がり始めている。
現に、トルコはEU(欧州連合)加盟を目指す過程で、2002年に死刑制度の廃止を決めているが、今回の事態を受けてエルドアン大統領は「国民の死刑復活を求める声が大きければ、死刑を復活することはあり得る」と述べており、今回のクーデターを利用して、クルド人過激派など現政権と対立する勢力に弾圧を強めることになる可能性は否定できない。
そうなれば、EUはトルコのEU加盟を認めるわけにはいかず、その結果、難民危機への対応やIS(イスラム国)に対する戦いでのトルコ政府との協調に問題が生じることは避けられず、ヨーロッパの混乱は一段と深まることになりそうである。
フランスで非常事態宣言が解除されようとした直前に、トラックによる大量ひき殺し事件が発生し、来年1月まで非常事態宣言が延長されたばかり。 今度はトルコの非常事態宣言の発令である。 こうした異常な状況を目にすると、今やヨーロッパを中心に世界が、まさに非常事態化してきているかが分かるというものである。
ここ数日、大規模なテロや銃乱射事件は収まっているが、世の中が平穏に向かっているわけではない。 ドイツでは18日夜、アフガニスタン出身の難民の少年が、走行中の列車内で斧やナイフで乗客に襲いかかり、4人に重傷を負わせた後、銃殺される事件が発生している。
ドイツはメルケル首相の難民受け入れに対する積極的な姿勢の下、昨年は他のEU諸国とは桁違いの100万人の難民を受け入れている。 しかし、右翼系団体など難民受け入れに反対する勢力も出てきているだけに、今回のような、施設で保護されていた少年が起こした無差別的な殺傷行為は、反対勢力を勢いづけることになる可能性が大きく心配である。
一方、米国ルイジアナ州では、17日、黒人で元海兵隊員の男によって警察官が銃撃され、3人が死亡、3人が負傷する事件が起きている。 10日前にテキサス州ダラスで警察官5人が射殺される事件が起きたばかり。 米国国内では、今後さらに同じような事件が起きるのではないかという懸念が広がっている。