急転直下、英国の首相に急遽メイ内相が就任することになった。
離脱派と残留派の口論争いが未だ続く中で、英国与党の保守党のトップを決めるための選挙が9月に予定され、二人の首相候補者メイ内相とレッドサム・エネルギー担当相の本格的争いが始まろうとしていた矢先、突然、11日、テリーザ・レッドサム氏が党首選から離脱を表明。 これで次期首相はメイ氏に決まった。
それにしても、今回の次期首相選びはなんとも不可解なことの連続であった。 なんと言っても驚かされたのは、離脱派の中心人物として活動し、次期首相の最有力候補と言われていたボリス・ジョンソン前ロンドン市長が、仲間のゴーブ司法相の首相立候補によって、突如立候補を取りやめたことであった。
両者は同じ離脱派の推進者として共に戦って来ただけに、ゴーブ氏の出馬はまさに裏切り行為で、離脱派の人々からも非難の声が上がり、候補者選びからも脱落することとなった。その結果、レッドサム氏が離脱派からの唯一の人物として首相候補として残り、本格的な党首選が始まろうとした矢先に、彼女もまた突然の離脱表明である。
離脱の理由は、「できるだけ早く、強く安定した政権の誕生が必要である」「自分には保守党議員から25%しか支持を得ていないため勝ち目はない」という2点ということのようである。 しかしそんなことは鼻から分かっていたこと、それなら党首選の予備選が終わったすぐ後に、発表していなければおかしい。
別の理由として考えられることは、今月9日の英タイムズ紙に「母親であることは、国の未来を担う上で大事なこと」というインタビュー記事が掲載された結果、メイ氏夫妻ら子供がいない家庭への侮辱だとして批判が相次いだ点ではないか、とも言われているようである。
私はこの記事を読んだ後、保守党の大臣まで務められた方が、子供のない相手候補をそのような発言で侮辱するだろうかと疑問を感じた。
11日、レッドサム氏が撤退を表明したわずか30分もたたないうちに、保守党はメイ氏が党首に就任したと発表。 さらにそれを待っていたかのように、キャメロン首相が自分は13日には辞任するので、その日の夜にはメイ新首相が誕生することになるだろうと語っている。 新首相誕生までにはじっくり時間をかけるべきだと述べていた首相の言葉とは思えない発言には、何か違和感を感じる。
こうした動きを見てみると、何か裏に隠された事情があり、キャメロン首相以下、ここに来て皆相当慌て急いでいることが感じられる。 それと同時に離脱派を締め出す大きな理由が生じているようである。 しばらくすればその片鱗が見えてくるのではなかろうか。 いずれにしろ、これで英国にはサッチャー首相以来二人目の女性首相が誕生することが決定したわけだ。
私が一番注目しているのは、ドイツのメルケル首相との間で、EU離脱交渉がどのように展開されるかという点である。 メルケル首相のこれまでの発言を聞いていると、離脱を勝手に決めた英国によいとこ取りはさせないぞという点が見られるだけに、これから先、離脱で揺れる英国とEUの代表となる二人の女性同士の駆け引きからは、当分の間、目が離せない日々が続くことになりそうである。