難民問題同様、世界の経済が危機的状況にあるにも関わらず、このところマスコミは経済の先行きに比較的楽観的な見方を示している。
我が国の株価は円高のため確かに20%前後下がってはいるが、世界の株価の状況を見ていると、まるで中国や欧州の経済危機の不安が遠のいたかのように
、株価は上昇基調にある。
中でもニューヨークダウ平均値は今年2月の最安値1万5000ドルから半年で20%も上昇し、1万8600ドルという史上最高値をつけている。 私がかねてから予想してきた高値は1万8000ドルを少し超えたあたりであった。 ほぼその予想値の圏内には留まっているが、この調子では1万9000ドル台に上昇することになるかもしれない。
英国の株価の動きも実際の経済情勢や社会情勢とは大きくかけ離れた動きを見せている。 英国のEUからの離脱が決まり、世界の株式市場が大揺れしたにもかかわらず、英国株は大幅な下落には至らず、2月の安値5500ポイントから6800ポイントまで
20%以上上昇している。 EU離脱は英国経済にとって間違いなくマイナスであるにも関わらずである。
しかし、どう見ても米国や英国の経済情勢や社会情勢を見る限り史上最高値をつけたり、
半年足らずで20%も上昇する状況でないことは明らかだ。 米国の株価上昇の要因とされているのは雇用者数の増加である。 しかし、失業率低下
(4・9%)は表面上のデータに過ぎず、その内容を分析すると
決して株価を史上最高値にまで押し上げるような内容でないことが分かる。
期間限定採用のパートタイム社員数は増えてはいるものの、長期雇用の正規社員数は大幅に減少しており、
パートタイム就労を余儀なくされている労働者(594万人)や職探しを諦めた人(59万人)を含む広義の失業率は9・7%と日に日に悪化して10%に近づいており、良好な雇用状況
とは言えない状況なのだ。
昨年12月に6年ぶりに金利を0・25%上げて0・5%としたFRB(米連邦準備理事会)がその後8ヶ月が経っているというのに、一向に追加利上げが出来ずにいる
のは、労働市場に力強さが欠けている何よりの証拠である。
それでは、こんなおかしな状況がなにゆえまかり通っているのかというと、
米国の0・5%という低金利や欧州や日本のマイナス金利という異常な金利政策が今もなお維持され続けている上に、世界の金融市場にばらまかれた1000兆円近い巨大マネーの大半が、今もなお市場から引き上げられていないからである。
従って、実体経済に合致しない異常な株高はしばらくの間続くかもしれないが、何かの要因でゼロ金利政策が終わり、各国の中央銀行が市場からマネーを引き上げざるを得ない状況になったら、株価の暴落が一気に始まることは必定。
過去の歴史にないゼロ金利や巨大マネーのばらまきの反動は尋常ではないはずだ。
やがてそれは世界恐慌の発火点となることだろう。
動物園の動物たちが餓死し始めたベネズエラの惨状
|
|
|
|
売り出しがあると聞いて、スーパーの前には数百メートルに達する長蛇の列が出来る
|
|
何時間もかけて並んだものの、品薄で後列の人間には品物は
手に入らない。 もし闇市で買おうと思ったら、粉ミルク1袋7万円、
パスタ1キロ3万円、とても一般市民が買える値段ではない。
|
その先触れとなっているのが、原油価格の暴落である。「原油価格暴落の真相」に記したように、原油価格が147ドルから30ドル割れまで急落したのは、
12月の米国の金利引き上げに向けた動きによるものであった。 しかし、追加利上げが見送られているため、原油価格はやや持ち直し経済的危機も一見収まったかのように思われているが、決して安心していられる状況ではないのだ。
150ドルから30ドル近くまで急落した原油価格は、その後50ドル前後まで上昇したものの、数日前には再び40ドル割れまで下落して来ており、最高値150ドルの3分の1前後の状態が
今も続いている
。 それゆえサウジアラビアを始め中東の産油国の財政は日に日に厳しくなって来ており、そうした状況はロシアも南米諸国も同じである。
国家収入の多くを原油に頼っている国家財政が貧弱な国は、こんな状態が長く続いたらたまったものではない。 その代表的な国が南米のベネズエラである。 食料品や建設資材、医薬品など多くの品物を海外から輸入しているベネズエラは
、原油の確認埋蔵量では世界一を誇っているものの、原油価格の低迷が続いているため外貨が底を突いてしまって
、海外から物資の購入が出来なくなっているのだ。
その結果、既に数ヶ月前からベネズエラのスーパーマーケットでは、日用品を売っている棚には品物がなく、たまに販売が始まると店の前には長蛇の列ができ、購入するのに数時間待ちという状況が続いている。 その結果、ハイパーインフレが発生し、国際通貨基金(IMF)の試算では2016年のインフレ率は500%近くに達し
、来年には1600%まで進むだろうとされている。
通常1000円の食料品を買おうとしたら1万6000円が必要になるのだ。
首都カラカスの状況は想像以上にひどくなっており、政府機関も電気の節約のため週2日間しか開いておらず、病院も機能不全状態でまともに治療できない状況に陥っている。
原油価格が再び40ドル割れに向かっている現状を見ると、遠からずして国家破綻となりデフォルト宣言が発令される可能性は大きいようだ。
そんな状況下、国民から上がる不満の声に対処するため、ベネズエラ政府が苦肉の策として始めたのが「物々交換」である。 その相手先は
、中央アメリカのカリブ海に浮かぶジャマイカ。 ベネズエラに石油の借金があるジャマイカからお金の代わりに食料や医薬品、建築資材、農業用資材を受け取る
ことにしたのである。
ベネズエラの現状を伝えるブログを見てみると、苦境に立たされているのは人間だけではないようである。 首都カラカスにある動物園では動物たちが餌をもらえず次々と餓死しており、ライオンやトラなど大型の肉食獣には肉の代わりにマンゴーやカボチャ
、ゾウには干し草の代わりに果物が与えられている。
人間自身が食べるものがなくなっているのだからやむを得ないとはいえ、なんともやりきれない気持ちにさせられる。 掲載した下の写真を見ると、自給率40%以下の我が国の輸入が止まった時の姿と、やがて人類が遭遇することになる近未来の餓鬼界の姿を見せられているようで、戦慄を覚える。
ベネズエラの姿がいつ我が国の姿になるか分からないのだ。
|