ウクライナ戦争が行われていた最中の2014年7月、マレーシア航空機がウクライナ東部上空で撃墜され298人の乗客・乗務員が死亡した事故。 まだ皆さんの記憶に残っていることだろう。 この事件に関して捜査を続けて来たオランダやウクライナ、オーストラリア、マレーシアの合同捜査チームが旅客機を撃墜したミサイルは、ロシアから親ロシア派支配地域に持ち込まれて発射されたものだと発表。
これに対して、ロシア政府は一切の関与を否定し、国境に近いレーダー施設の記録からウクライナ政府軍が発射したものだと主張している。 しかし、今回、合同捜査チームが発表した、ミサイルがロシアから持ち込まれ、親ロシア派軍によって発射されたものだとする見解には、幾つかの重要な裏付けがあることから、信頼度が高いように思われる。
その裏付けを列記すると次のようになる。
@ 事件の発生した17日の朝にミサイルがロシア側から持ち込まれた点については、重要な
証拠があり、その証拠の一つとなっているのがロシア軍の将校が司令官に対して、ミサ
イルが「線」を越えたと伝えたメッセージである。 捜査チームは将校が言うところ
の「線」は 「国境線」の隠し言葉であったと判定し、国境越えの証拠としている。
A 発射装置がトラックに積載されて運び込まれるのを多くの人々が目撃しており、その写真や
動画がソーシャルメディアに掲載されている。(下の写真参照)
B 車両の向かった先はヘルボマイスクという地域の農地で、そこは親ロシア派が統治して
おり、その現場には焼けただれたミサイルの発車跡が残されている。(下の写真参照)
C 地元の農民が撃墜事故の発生した時刻にミサイルが飛んだ航跡を写真撮影している。
(下の写真参照)
D その後、ミサイルを積んだトラックがロシアに戻る姿が撮影されており、搭載された
ミサイルの数が一機少なくなっている。
捜査チームは事件には約100人が関与したと見ているようであるが、誰がミサイルの発射を指示し、実行に移したかについては、最終報告に委ねられているようである。
今回の報告書を見る限りでは、ロシア軍のロケットが持ち込まれ発車された可能性は高いことは確かであるが、問題は、親ロシア軍によるロケットの発射がマレーシア航空機を狙ったものなのか、ウクライナ軍機を狙ったものが的が外れて航空機を狙撃することとなったものなのか、と言う点がはっきりしていない。
もしも、マレーシア航空機を狙ったものだとすると、その理由は何か? これらの点を含めて一刻も早く真相が明らかになることを願っている。 それらの点があやふやにされたままで終わってしまっては、80人の子供を含めた298人の乗客・乗務員の魂は浮かばれない。
マレーシア航空機の事故と言えば、ウクライナでの事故以前にマレーシアから中国に向かっていた旅客機が南シナ海上空で行方を断ち、未だその原因もどこに消えてしまったのかも不明のままである。 アフリカ沖合で機材の一部が発見されたという情報が幾つか伝えられているが、確たるものであるか分からないままである。 オーストラリア空軍やマレーシア空軍が行って来た捜索活動は終了してしまったようなので、こちらの犠牲者もまた、浮かばれないまま地上界をさ迷っているのかもしれない。