12日の日没から始まったシリア内戦の停戦合意。 しかし、北部の町・アレッポでの米軍によるアサド政府軍に対する空爆で、先行きが不透明になって来た。 シリアの国営メディアは、米軍がF16戦闘機2機とA10攻撃機2機で、空港に近いシリア軍の拠点数カ所を空爆し、シリア軍兵士に多数の死傷者が出たと報じている。
在英のNGO「シリア人権監視団」はシリアの兵士の少なくとも83人が死亡し、空爆後、一時、IS(イスラム国)が政府軍の拠点を奪い返したと伝えている。 米軍は空爆の実行を認めているが、イスラム国(ISIS)を標的としたものであり、シリア軍兵士に当たったとすれば偶然だと発表している。
一方、シリア政府軍は「シリアに対する敵対行為で、米国とその同盟国がIS(イスラム国)を支援している確たる証拠だ」と非難声明を発表。 またロシア外務省も、ISを壊滅させたシリア軍がその場で攻撃を受けたことを深く憂慮しており、ホワイトハウスがISを擁護しているという全世界にとって恐ろしい結論に我々は達しつつある」とする声明を発表している。
今回の米国のシリア軍に対する空爆は、私にとって少々驚きであった。 ロシア軍による反政府軍への空爆ならあり得るが、まさか米軍が反対の行為をするとは思っていなかったからである。 米国はISの拠点と間違ったと言い訳をしているが、空爆場所が先にISによる占領地をシリア軍が奪い返した場所であることは、米軍が知らないはずはないだけに、言い訳は信憑性に欠ける。
今回の停戦合意は、米国よりロシアの強い希望で実現した可能性が強く、どうやら本音では米国は停戦を望んでいなかったようである。 今回の停戦合意が遵守されれば、対ISなど過激派掃討作戦で米・露が協力することになっていたことを考えると、どうやら、シリア政府やロシア政府が主張するように、IS壊滅作戦は米国にとって都合が悪かったようだ。
ロシア外務省が声明で、「ISISやシリア征服戦線(旧ヌスラ戦線)などのテロ組織との闘いにおいて、米国がロシアとの間に緊密な協力関係を構築するのをかたくなに拒んできたことが今回の事態の背景にあるようだ」との見方を示していることが、それを裏付けている。