今朝の米国・ABCニュースは、29日の早朝(日本時間昨夜遅く)、ニューヨーク近郊のホーボーケン駅で大規模な列車事故が発生したことをトップニュースで伝えている。
ホーボーケン駅はハドソン川を挟んでニューヨークの対岸にある駅で、複数の路線の終着駅でもある。 事故発生時はラッシュアワーの混雑した時間帯で、250名の乗客を乗せた列車はスピードをまったく落とさないまま進入し、ホームの先にある車止めを乗り越えて大破。 乗客だけでなくホームで待っていた人々を巻き込んで、1人の死者と114人が負傷する大規模な事故となった。
米国では北東部を中心にここ数年、列車の衝突事故や脱線事故が驚くほど多発してきている。 事故の発生の頻度は、1日あたり3件、1年間で1000件近くに達しており、事故を伝えるテレビのニュースキャスターが、「信じ難いほど頻繁に起きている」と語っているほどである。 この数値は、いくら国土面積が広い米国と言えども異常である。
昨年から今年にかけて私がHPで取り上げただけでも、昨年5月のペンシルベニア州のフィラデルフィアで多数の死傷者が出た脱線事故(「米国・列車転覆事故」)、6月のテキサス州・ヒューストン西部での貨物列車9両の脱線事故(「米国の惨状」)、7月のテネシー州の東部
での脱線・炎上事故(「列車事故と猛暑」)、さらに今年に入ってからの、4月のニューヨークからジョージア州・サバンナに向かう列車の大型のクレーン車両との衝突脱線事故(「相変わらず続く米国の事故と災害」)など4件に達している。
今回の列車事故のニュースを見て、私が真っ先に思ったのは、「また列車事故か!」「心配していた通りになってしまったな」であった。 読者は昨年の5月14日付けの記事「米国・列車転覆事故」で、米国ではこれから先、自然災害がその規模と頻度を増してくる一方で、今回のような列車事故や航空機の大規模な事故も多発してくることだろう、と記したことを覚えておられるだろうか。
なぜ私がそうした状況の到来を予期したのかというと、「事故の要因は、運転手の精神的障害と思われるものや、線路の整備不良や天災など様々な要因があるようだが、これ
だけ事故が多発している背景には、そういった個々の要因とは別に、
米国という国家が衰退に向かっているという大きな流れが潜んでいるのではないかと、思えてならなかったからである。
そんな私の予感が奇しくも的中してしまったわけだが、米国の鉄道の安全基準の遅れが
今回の事故の大きな要因となっていたようである。 実は国家運輸安全委員会が以前から、列車の速度超過を自動的に抑える自動制御システムの導入を義務づけて来たにもかかわらず、コスト面から導入が進んでおらず、今回の事故を起こした列車運行会社に至っては、440台を越す車両の内1台も導入していなかったのである。
これでは、米国は鉄道における安全面において、中国と同じレベルと見なされても仕方がないではないか。 未だ列車の安全システムが導入されていないなどと言うことは、
先進国では考えられないことであるが、どうやらそれが米国という国家の隠された一面だったようである。 そしてそれはまた、世界の覇権国家であった米国が衰退に向かっている何よりの証でもあったのだ。
残念ながらこれから先、米国では列車や航空機の事故だけでなく、自然災害や銃乱射事件はますます頻度が増し規模が大きくなって、人心を動乱させていくことになりそうである。 今回の事故を見て、こうした流れはもはや止めることの出来ないもので、国家が衰退していく真の姿を映し出しているのだと直感された読者も多かったに違いない。
何事も一歩退いて、その裏に隠された背景から見ていくと、事の真相が見えてくるものだ。