AFP通信は、今月初めに北極海に面したロシアのヤマル半島にあるヤマロ・ネネツ(Yamalo-Nenetsky)自治管区で炭疽菌による感染症(炭疽症)が集団発生し、先週までに23人が感染、少年1人が死亡したことや、政府が感染拡大を防ぐためにレスキュー隊や兵士らを数百人規模で配備したことを伝えている。
どうやら、今回の集団発生の原因は、70年前に炭疽菌に感染したトナカイの死骸が永久凍土の融解により露出し、他の動物に感染したことのようである。 問題はこれから先、温暖化によって永久凍土の融解がさらに進み、その他の病原体が今回と同じように露出することである。 中には氷河時代にまでさかのぼる病原体もあるようなので心配だ。
ロシアで進む温暖化については、シベリアの森林火災など、これまでにも何回かお伝えして来たが、ロシアでは世界平均よりも2・5倍の速さで温暖化が進んでおり、中でも北極に近い地域では同国のその他の地域よりもさらにその進み方が早いようである。 ヤマル半島の今年7月の最高気温はなんと35度にも達しており、これは、例年より8度も高くなっている。 これでは永久凍土が溶けて当然である。
この北部の永久凍土一帯には19世紀末に天然痘が流行した際の感染体埋葬地がある他、最近では、マンモスの死骸の中からも「巨大なウイルス」が新たに発見されている。 ヤマル半島には、トナカイの遊牧をする人々がわずかしか住んでいないが、他の地域で新たな感染症が広がるようなことになると一大事だ。
今後の環境問題への影響について海洋学者のバレリー・マリニン氏は、「ヤマルは小さな警鐘にすぎない。 自然は私たちに挑戦し続けるだろう」と厳しい口調で警鐘を鳴らしている。
温暖化で南太平洋の小さな島々が水没の危機に瀕していると言うのに、これまで世界の大国 ・
ロシアや米国、中国は温暖化対策に本気で取り組んで来なかった。 それが今、「因果は巡る」の喩え通り、米国や中国では巨大な自然災害で、ロシアでは森林火災や感染症という形で我が身に降りかかって来ているのである。