深まる核事故への疑念
緊急レポートJ「隠蔽された四川大地震の秘密
@」で、四川省内の地下には、研究用原子炉(1カ所)、核燃料生産施設(2カ所)、核兵器製造施設(2カ所)などの核施設が存在していること、そして、その一部が今回の地震によってトラブルを発生している可能性が強いことをお伝えした。
その理由として、中国政府が放射源(核物質)が埋もれ、その内の幾つかが行くへ不明となっていることを発表していることと、
その報道内容が2転3転して非常に曖昧(あいまい)であること。それに、地震発生の直後、震源地付近の山が噴火状態になり、火口から溶岩ならぬコンクリートの破片が大量に噴出していることがあげられる。
その後、マスコミは核に関する疑念は一切報道しなくなってしまったが、放射能漏れの心配が全くなくなったという中国当局の発表を鵜呑みにすることは危険だと考えている。現に、山からコンクリートの破片が飴状になって吹き出したことを知らされた核の専門家は、地下核施設の爆発の可能性を強く示唆している。
その後の調べでは、四川省には、前期の核施設の他に研究用の原子力発電装置が2基
あって稼働していたようなので、メルトダウンの恐れもありそうだ。
読者は忘れてしまっていると思われるが、地震発生から19日経過した5月31日、救援活動に当たっていた軍の輸送ヘリが、四川省文川県映鎮近くで墜落したニュースが流れた。その件を日系ネットは次のように伝えている。
【北京=佐藤賢】1日の新華社電によると、中国・四川大地震で救援活動に当たっていた軍の輸送ヘリコプターが5月31日、四川省ブン川県映秀鎮近くで墜落した。濃霧と乱気流が原因とみられる。乗員4人と負傷者10人が乗っていた。胡錦濤国家主席は捜索・救助を指示し、制服組トップの郭伯雄・中央軍事委員会副主席を現地に派遣した。(後略)
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Mi-17型輸送ヘリ |
問題はその後の中国政府の対応である。事故の報に接した中国の最高指導者・胡錦涛主席は直々に指示を出し、軍の制服組トップを現地に急行させたのである。
今回の地震では温家宝首相や胡錦涛主席が自ら被災地を視察しているから、それは当然のことだとも取れないこともないが、それにしても扱いがあまりにハイレベル過ぎはしないかと感じられた。
私の感じた異様感はその後の情報によって更に増すこととなった。報道記事の中に「捜索隊1万名が墜落地点と思われる付近で捜索作業を行っている」という一文があったからである。
胡錦涛特命の制服組トップの現地入りだけでも驚かされたが、ヘリ1機の墜落事故に1万人動員というのは異例である。さらに、搭乗員の中に第
3軍医大学(重慶市)の「防疫専門家」が含まれていたという点もひっかるところである。
「防疫専門家」が疫病に対する医療チームなのかとも思えるが、緊急レポートJに掲載した防御服と防塵マスクに完全防備された救援隊の姿を見ると、彼らは核汚染された人間を救助するための専門家たちであったのではないかとも思われる。
もしかすると、ヘリには核による汚染者が収容されていただけでなく、重要な核物質
が積みこまれていた可能性もある。いずれにしろ墜落したMi-17型輸送ヘリは、相当重要な任務を帯びていたことは間違いないようである。
それから4日後の6月3日には
、被災地救助部隊からさらに2000名がヘリ捜索に回され、ヘリ3機が延べ19回も捜索飛行に出たことが『解放軍報』に掲載された。
我が国の事例を見てみると、1985年に群馬県の御巣鷹山に墜落し500余名の犠牲者を出した日本航空123便の墜落事故でもせいぜい数百人規模の救助隊であった。
また、先般の岩手・宮城内陸地震で派遣された自衛隊の数も同様であったことを考えると、1万2000名の規模がいかに尋常でないかがわかろうというものである。ヘリには同乗していた防疫専門家とクルーを除くと、わずか10名
しか乗っていなかったのだから。
平時ならいざ知らず、他の被災地では数万名の規模の死者や数百万の負傷者が出ていて、猫の手も借りたいようなときに、なぜ10人そこそこの救助のために、1万2000名もの捜索隊を送り込む必要があったのかと思わずにはいられない。
それも中国人民軍の制服組のトップが陣頭指揮をしていることを併せて考えるとなおさらだ。
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派遣された捜索隊 |
それでは、それほどの大人数を繰り出したことによって、墜落ヘリがすぐに発見されて、救助活動がスムーズに終了したのかというと、事故から1週間程経ってからようやくヘリ発見のニュースが伝えられたのだから、何とも不思議である。
それではそれまでに事故機が本当に発見されずにいたのかというと、どうもそうではなかったような気がするのだ。
機体はすぐに発見されたものの、積載していたもの(核資源)に異常事態が発生していて、近寄ることが出来なかったのではないかと思われる節もあるのだ。
そのため、公には墜落機不明という形で時間延ばしが計られていたのではないだろうか。となると、1万2000人は捜索隊として派遣されたのではなく、墜落現場の周囲の封鎖要因として配置された
ことになる。
今ひとつ考えられることは、負傷者(被爆者)の何人かが行くへ不明となってしまったために、万が一外部に被爆の事実が漏れることを恐れて、異常な数の捜索隊もしくは封鎖隊が派遣されたのではないだろうか。
事故から4日目の北京の「新京報」には、それを暗示するような奇妙な記事が掲載されていた。
「事故の重要な手がかりを提供した人には1万元(15万円)の懸賞金が提供される」 というニュースである。殺人事件や誘拐事件ならいざ知らず、地震発生現場近くの墜落事故で懸賞金がかけられるなどということがあるものだろうか。それも、共産主義国家である中国でだ。
1万元といえば中国では大変な額である。北京で50インチのプラズマテレビが約1万元だというから、日本ではさしずめ40万円相当になるだろうが、四川省の山間部に暮らす人々にとっては、年間収入に値する
程の額である。そんな大金を懸賞金にするというのだから驚かされる。軍本部が相当慌てるような事態が発生していた証ではないだろうか。
堰止め湖がもたらす核汚染の恐れ
もしも、私のこうした推測が当たらずとも遠からずで、四川省の地下に設けられた核施設や研究用原子炉で不測の事態が発生していたとしたら、政府は今もなお手のつけられぬまま、事態を静観している可能性が高い。
チェルノブイル事故が発生したあと、欧州から観測された放射能によって放射能漏れが騒がれるまで、当時のソ連が核事故の発表を伏せていたことを考えれば、それは十分にあり得ることである。
中国はソ連と同じ共産主義国家であることを忘れてはならない。
問題は、核事故が事実だとしたなら、いつどのような形で近隣の地にその被害が広がっていくかという点である。私が最も恐れているのは、地震によって出来た「堰止め湖」が台風などの大雨で決壊し、核施設一帯に洪水が押し寄せたときのことである。
万が一、研究用原子炉に不測の事態が生じていたとすると、地下への水の流入によって蒸気爆発が発生し、重大な被害が発生する可能性が大きいからだ。
核事故とは別に不安なのが核廃棄物の水没による汚染である。堰止め湖決壊の危険性が心配されている四川省綿陽市北川県の唐家山地域には中国で最も重要な核研究施設が集中していることは既に述べたが、これらの施設の大半が残されており、現在軍2万人が動員されて移設を行っている最中であるようだ。
堰止め湖の排水作業が当初の予定より遅らされているのはそのためであるが、これからの降雨次第では移設が未完了のうちに放水を余儀なくされたり、決壊が生じてしまう危険性が生じる。そうなると、過去40年間にわたって蓄積してきた核廃棄物や危険な軍事科学工業の原材料が地下水にしみて広域核汚染あるいは科学汚染が引き起こされる可能性がある。
なにしろ、この堰止め湖の決壊による水没範囲には、中国最大の核研究所「中国行程物理研究所」の他、核工業の839基地、中性子爆弾製造の857工場、核弾頭貯蔵庫、解放軍最大の空洞実験施設群などがひしめいているのだ。
しばらくは、四川省周辺のニュースからは目が離せない状況が続くことになりそうだ。
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