案じられる「G20首脳会議」の行方

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  同床異夢のG20

20ヶ国の首脳と財務相が金融危機への再発防止策を話し合う金融サミット(G20)が、ワシントンで日本時間の15日の午前中から始まっている。

麻生首相も中川金融相と共に、3つの主軸からなる日本の金融危機対応策を携えて出席。

@ IMF増資に1000億ドル(10兆円)拠出 
A 世界銀行の途上国の金融機関の資本増強に
20億ドル(2000億円) 拠出
B アジア開発銀行(ADB)の資本を現行
500億ドルから倍増させる提案を日本が行う。

何処の国も自分の国の救済策で目一杯で、日本のように会議の始まる前から、大風呂敷を広げて参加するお人好しの国は見当たらない。今回のG20は欧州とアメリカの主導権争いの場となることは間違いなく、麻生総理の発言の出番などそう多くはさそうであるが、今回は通訳付きだから「未曾有」の危機を「みぞうう」などと発言しても、参加国の首脳の顰蹙(ひんしゅく)を買うことはなさそうなので、安心である。

表に出る出ないは別にして、主要先進国が狙っているのは基軸通貨の獲得と確保であることは間違いない。アメリカは従来通り世界唯一の基軸通貨としてのドルの維持を図ろうとするであろうし、イギリスはポンドを、欧州はユーロを基軸通貨に格上げするための戦略を携えて参加しているはずである。イギリス首相とフランス大統領の最近のブレトンウッズ体制復活の発言を見れば一目瞭然だ。

ポンドもユーロも世界的金融危機以来の値下がり率は激しく、その影響が実体経済に波及している欧州各国は、通貨維持に大変な危機意識を持っている。中でもポンド安は凄く、対ドルで1.4555ドルと6年半ぶりの安値を付けている。それだけにイギリスを筆頭に各国首脳はG20を通貨危機回避の格好のチャンスと捉えている。サルコジ大統領が先月アメリカに乗り込み、キャンプデービットでG20の開催を決定したのも皆そのためである。

ただ今回の会議だけで基軸通貨に対する結論が出ることはあり得ないので、これから先数ヶ月をかけて丁々発止の論議と駆け引きが拡大していくことになるものと思われるが、アメリカとドルの擁護一辺倒の日本は一歩間違えば、凋落していくアメリカと地獄までつきあうことになってしまうかも知れない。IQ指数70の首脳同士は何処へ行こうが構わないが、両国の国民はたまったものではない。
 

 

 

ブッシュ米大統領は金融サミット参加国が金融
危機を克服すると確信していると言明
ロイター)

   

 

会議の後に地獄の釜の蓋が開く

問題は、今回の会議の結果を市場がどう評価するかである。門外漢の私などには会議の行く末など皆目見当がつかないが、常識的に考えて救世主がいない今回のG20において、世界の市場が評価するような政策や対応策が決まるとは思えない。度合いは違っても何処の国も皆貧困にあえぎ始めているわけであるから、「無い物ねだり」の会議にしかならないように思えるのだが、いかがなものだろうか。

資金がないのは参加国だけではない、IMF(国際通貨基金)や世界銀行、アジア開発銀行、どれをとってもみな余剰資金などありそうもない。その証拠に、国家的危機に陥っているアイスランドに対して、わずか20億ドルの資金融資を決めたはずのIMFは未だ融資が出来ずにいる。残念ながら、日本など資金拠出のために呼ばれているようなものである。

何にも増して今回のG20に期待が持てない最大の理由は、次期大統領であるオバマ氏が直前になって参加を見合わせたことである。ブッシュ大統領は会議の日程を選挙後に設定し、新大統領に同席してもらって責任を分担してもらおうと図ったに違いないが、どうやら「捕らぬ狸の皮算用」に終わったようである。

オバマ陣営にしてみれば、成功裏に終わる可能性の少ないG20に飛び入り参加して、前政権のツケを引き受けることなど、とんでもないことだと言うところではないだろうか。

そうした動きを機敏に察知している中東の衛星テレビネットワーク「アルジャジーラ」(Al-Jazeera)などは、G20に対して、鼻から、市場が期待しているような政策が打ち出されることなどありえない、という冷めた見方を伝えている。また、G20を前にした昨日のニューヨーク市場の300ドルを超す下落をみても、ウオール街も決して楽観的な見方をしていないことがわかる。

いずれにしろ、会議は日本時間の16日朝、議長国であるアメリカのブッシュ大統領が声明を発表して閉幕することになるが、その内容次第では、来週早々の世界のマーケットは大きな混乱に陥ることになるかもしれない。かりに、大きなな反応がなかったとしても、実体経済の数値が表に出てくる24日以降のマーケットでは、厳しい反応が表面化する可能性が大である。

 

 

     (ロイター)

 

会議後の動向

会議の終了と同時に市場の関心は、政策論議から実体経済の動向に移っていく。まっ先に目が向けられるのが、アメリカの自動車産業、なかでもGMの動向である。その他にも韓国のデフォルト危機やアメリカの急増する財政赤字、欧米の失業問題など、身震いするような暗いニュースが待ち受けている。

次回は、「地獄の釜の蓋が開いた」後に待ち受けている市民生活の混乱と、失業者の急増によって発生する可能性の高い「暴動」や「内戦勃発」について考察してみたいと思っている。

 

 

 

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