アメリカ社会の不思議
世界の謎を探索する私であるが、最近の世の中の動きをみていると、現代文明の様々な動きの中に、先史文明や宇宙の謎にも増して不思議な現象を見ることが出来る(笑)。その不思議な世界の最先端を行くのがアメリカ社会である。
その一例をあげてみよう。
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バンク・オブ・アメリカのメリルリンチの吸収合併の怪
資本金不足に陥って経営が立ちいかなくなり、17日の決算発表ではとうとう4半期連続の巨大赤字を計上することになったメルリ・リンチであるが、この銀行を買い取ったのがバンク・オブ・アメリカである。
ところが、バンク・オブ・アメリカと言えば経営状態が思わしくなく、先日「いよいよ始まったメルトダウン」でお知らせした通り、株価はすでに25ドル台に急落しており、
伝えられるところでは、ニューヨークでは当銀行の小切手が通用しない店が出ているほどである。
その銀行が、すでに政府の金融安定法案による資本増強を受けることが決まっているような銀行を吸収するというのだから驚かされる。通常の経営感覚からすると考えられないことである。
なにゆえ、浸水が始まって沈没警告の鐘が鳴っている船舶が、すでに海面下に消えようとしている他船を救出しよとしているのか? 誰でもが思う疑問である。
あのアメリカの金融界に同情的救済などと言うことはことがあるわけがない。
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バンク・オブ・アメリカの本社ビル
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A
GM社とクライスラー社の合併協議の不思議
アメリカの三大自動車メーカーの一つであるクライスラー社は経営内容が悪化してきており、報道されているところでは、どうやらGM社がクライスラーを吸収する方向で交渉が進んでいるようである。
しかし、ここにも不思議現象垣間見られる。というのは、この吸収しようとしているGM社自体が、「正念場を迎えたアメリカ経済
A」でお伝えしたとおり、経営内容が悪化しており、一部のブログ情報では、その金融子会社であるGMACのデ・モリナ最高経営責任者が、既に資金調達が困難になったとのメールを従業員に送ったと言われていて、一部では破産法申請が迫っているとも見方も出てきているほどである。
現に、それを裏付けるように株価はクライスラー社と共に10ドルを大幅に下回っており、17日現在6ドル台である。(10日には、4・76ドルまで下げている)。その結果、時価総額は40億ドル(4000億円)ほどしかなくなって来ており、トヨタ社の20兆円台に比べると2桁以下になってしまっている。
通常の感覚では、こういった経営状態なら先ずは不採算部門を身売りするなどして、緊急的速やかに身軽になって経営の立て直しに向かわねばならないはずであるのに、なにゆえ、自社と同様、経営悪化に苦しむ
クライスラー社を吸収合併するのか、首をひねりたくなってくる。
6兆円を超す債務超過に陥り、1カ月に10億ドル(1000億円)の資金流出が続いているGM社にとって、クライスラー社の持つ100億ドル(1兆円)の手元流動性資金がのどから手が出るほど欲しい気持ちは分かるが、仮に合併によって一時、延命が図られた
としても、高燃費の大型車や過剰な生産設備の重複化によって、スリム化はさらに厳しくなる事態を考えると、窮余(きゅうよ)の一手とはいえ、あまりに節度を越した合併劇だと言われても致し方あるまい。
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売りに出された「GMの本社ビル
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B
銀行大手の巨額赤字が発表された日の株価暴騰の怪
10月15日に700ドルという史上2番目の株価暴落が発生したその翌日、株価は市場取引の開始早々に300ドルほど下げて8000ドルを割り込むのではないかと、世界が固唾(かたず)をのんで見守っていたところ、株価は一気に上昇に転じ始めた。
この日はメリル・リンチとシティー・バンクの決算発表が行われる日だったので、その赤字額が市場の予想よりは少なく、これを好感した買いが入ったに違いないとだれもが思ったに違いない。
ところが、時間をおいて伝えられた両社の決算内容を見てみると、その内容はひどいもので、メリルリンチが51億5200万ドル(5150億円)、シティーグループが28億1200万ドル(2200億円)と共に4期、5期連続の
巨大な赤字で、とても市場の雰囲気を明るくするものではなかった。
さらにこの日は世界の有数な金融機関の一つであるスイスのUBSがスイス国立銀行から5300億円の緊急資金注入を受けることが発表され、世界的な金融危機が一段と
印象づけられた日でもあった。そんな先行き真っ暗な状況の中でなんとダウは400ドルを超す暴騰をしたのであるから驚きというより、奇っ怪であった。
前日に小売売上高の悪化を受けて700ドル下げた同じ市場で、2社の大手銀行の予想を上回る赤字決算の発表という暗い材料が発表されたというのに、今度は一転して400ドルの上昇だとい
うのだから、あいた口がふさがらない。
こうして見てみると、@やAの不思議な現象は、もはやアメリカの経営者の一部がまともな経営感覚を持ちわせなくなってしまった結果ではないかと思われる。年収何十億、何百億という信じ難いほどの巨額の
収入によって、拝金主義者と化してしまった経営者の頭の中には、従業員の生活のことや株主のことなど頭から消えてしまって、我が身の保身と在職の延命しか頭に浮かばなくなってしまったのではないだろうか。
また、Bの怪現象は、もはやウオール街という証券市場が、資本主義経済を支えるまともな取引の場ではなくなって、マネーと呼ばれる妖怪が跋扈(ばっこ)する恐ろしい魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界と化してしまったことを物語っているようである。
今この世界で行われているのは、市場経済に基づいた正常な株取引などではなく、「オプション」や「デリバティブ」と呼ばれる奇策を駆使した「丁半バクチ」で
しかない。そこにはもはや、不安と恐怖心が渦巻く、地獄の世界と強欲者同士の騙し合いの場しか残されていないようだ。
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追記
昨日(10月18日)の日経新聞を読むと、GMグループの金融部門会社(GMAC)が今月の13日から自動車ローンの審査を厳しくすることになったため、販売台数の大幅な減少が免れない見通しだと報じている。
アメリカでは、購入した住宅を担保に自動車ローンを組む消費者が多いことはご承知の通りであるが、大幅な住宅価格の値下がりが続く中、更に厳しいローン審査が行われるわけである。その結果、これまで車を購入できていた人のなんと40%がローンの対象外となると言うから驚きである。
こうして販売台数が一気に落ち込むと、これから先は長期にわたって「工場の稼働率」がますます下がることは必至である。現に、調査機関(CMSワールドワイド)は、工場稼働率が60%台に落ち込むという見通しを発表している。採算が合う稼働率は最低でも70%台だというから、これでは、これから先は製造して売れば売るほど赤字が増え続けることになってくる。
これでは、国の基幹産業ということで、政府から金融機関並の膨大な資金を注入してもらわない限り、もはや存続することが難しくなってくる。その事情は、GM社やクライスラー社だけに限った話ではな
い。三大メーカーの一角であるフォード社も同じ運命をたどらざるを得なくなって来る。因みにフォード社の株価も既に2ドル台に落ち込んでいる。
もしも、三大自動車メーカの倒産が現実となったら、それはアメリカ発の世界恐慌の始まりである。
カウントダウンが始まった世界恐慌
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