近づく世界恐慌の足音
懸念した通り、G20首脳会議はこれといった成果が得られないまま終了した。IQ指数70の首相が提案した日本での次期開催など何処の国からも相手にされず、4月に予定されているG20はロンドンで開催されることが内定したようである。
大風呂敷を広げたIMFへの1000億ドル(10兆円)や世界銀行への20億ドル(2000億円
)の拠出金は本当に提案されたのか、また参加国からどう評価されたのか、その詳細はまったく報道されていない。首相も首相だが、日本のマスコミもお粗末の限りである。
いよいよこれから、各国は自国で発生する経済問題、社会問題に対して自力で立ち向かうことになる。その後も日々、世界中から経済的危機が現実化し、社会問題となっててきている状況が伝えられている。中でも心配なのがアメリカの三大自動車メーカーとシティーグループやバンク・オブ・アメリカをはじめとした金融機関の経営危機の先行きである。
今回は自動車メーカーの危機に絞ってお話ししよう。
自動車メーカーへの2兆円規模の緊急融資に対する法案がアメリカ民主党から議会に提案された。今週末までにはその賛否の結果が判明するはずであるが、共和党議員からは経営失敗のツケを税金で賄うことに対する不満が続出しており、楽観視できない状況にあるようだ。
問題は、2兆円程度の融資ではどの自動車メーカーも危機を脱することが到底出来ないという点である。今回の金融危機が起きずとも、小型車の開発やガソリン車からの脱却などへの立ち後れから、経営が危機的状況に立ち至っていたことを忘れては問題の本質を見誤ってしまう。すでにアメリカ市場で三大メーカーの販売シェアーは50%を大きく割っていたのである。
そこへ来て、一大金融危機の到来である。1社に10兆円を超す資金を融資するというのなら別だが、3社で2兆円程度では、その場しのぎの支援にしかならないことは明白である。仮に支援案が可決されたとしても、GM(ゼネラル・モーターズ)社の資金繰りはせいぜい春先までしか持たないはずだ。市場は既にそれを承知している。
その証拠に、GMの株価は既に3ドル台にまで下落してしまっている。55ドルあった株価が3ドルになったということは、5000円だったトヨタの株がたったの300円になったようなものである。1000円台の株で言うなら100円を切って60円台になってしまったわけであるから、誰が見ても、もはや事実上の倒産会社である。
経営悪化の状況は、GM社だけの問題ではない。3社の中では比較的安泰だと思われているフォード社でも、虎の子のマツダの持ち株を手放すなど、ここにきて資金調達になりふり構わぬ状況を見せ始めてきている。三社の車を販売するディーラーも大変なようで、議会に陳情に来た大手ディーラーの経営者は、先月からの販売落ち込みが前年比50%を割ってきていると発言している。10%や15%なら別だが50%減という数値は尋常ではない。
どうやら、苦境にあるのはメーカーだけでなく、ディーラーや下請け会社など三大メーカーに関わる業種の多くが破綻寸前に追い込まれているようである。影響は海外にある子会社にも及んでおり、今日のニュースでは、ドイツのオペル社(GM社に買収され子会社化されている)が、本社からの運転資金の送金のストップが近づいているとして、ドイツ政府に支援を依頼している。
こうした状況下、もしも、今週の議会で法案が否決されるような事態になったら、その影響は世界中に飛び火しそうである。中でも、来週のウオール街は1000ドルを超す下げによってパニックが襲うことになるかもしれない。そうなれば、いよいよ本格的なメルトダウンの発生である。
心配はこうした株式市場の先行きだけに留まらない。三大メーカーが次々と破綻するようなことになったら、大量の失業者が発生することになるからである。三大メーカー本体の従業員数は30万弱であるが、関連会社、下請け会社などを入れれば、その数は500万人に達すると言われている。これだけの人々が一気に職場を追われることになったら、デトロイトやシカゴだけでなくあらゆる州で大量の失業者が発生することになるのは必至である。
物心両面の備え
今ウオール街を歩くと、そこかしこに警察官が大量に配備されているのが目にとまる。それは、すでにサブプライム問題で職を失い、家を失って流浪の民となった人々が、ウオール街に勤務するビジネスマンに向かって抗議行動を頻発させているからである。「お前たちのお陰で俺たちはホームレスになってしまったんだ!」 、「ウオール街を閉鎖させて、お前たちも同じ境遇にしてやるから見ておれ!」 ・・・・・・、その様子を見ていると、もはや単なる抗議運動の域を超しており、まさに脅迫である。
こうした不穏な動きはすでにアメリカ各地で数多く発生しているようである。州軍や国軍の兵士が大量に招集されていると言う情報は既に何件も入ってきている。
どうやらアメリカ政府関係者は、これから先にやって来る企業倒産の嵐や、それによって発生する大量の失業者によって暴動やテロ、場合によっては内戦さえ起きる可能性
を十分に承知しているようである。そうなれば、否が応でもイラクやアフガンなどに軍隊を駐留させておくわけにはいかなくなってくる。
こうした状況は、何もアメリカだけに限ったことではない。既に景気後退局面入りが確認され、失業者数が180万人を突破して2010年には300万人に達すること
が必至と言われているイギリスや、大量の出稼ぎ労働者が職を失い帰郷を始めている隣国中国においても、不足な事態の発生は十分にあり得ることである。
それよりお膝元の我が国においても、その兆しが見え始めてきてしまった。元厚生次官関係者を狙った一連の襲撃事件は、生活不安に対する腹いせ的なテロ事件に他ならない。こうした事件が起きると、同じ立場にいた方々は夜もぐっすり眠れない日々が続くこと
なる。それがテロの恐ろしさである。なんともいやな世の中であるが、殺伐とした世界が続く限り、これから先も次々とこうした悲惨な事件が引き起こされていくことになりそうである。
このように、世界は今、経済的破綻だけに留まらず、未曾有の社会的不安の状況下に突入しようとしている。70代以下の人は誰も経験したことのない世界
の到来である。どうか読者には、物心両面から十分な備えをして、無用な不安や恐怖心から出来るだけ遠ざかった生き方をして頂きたいものである。