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  中国、アメリカどちらが先か?

今世界が、本格的な経済崩壊に向かって突き進んでいることは、すでに何回かの経済情報でお知らせしてきた通りである。あとはそのきっかけとなる異変がアメリカで起きるのか、はたまた中国で発生するのかだけで ある。私の見たところいずれとも言えないほど、両国は危機一髪の問題点を抱えているように思われる。いうなれば、両国経済がいつ奈落の底へ向かって崩落し 始めてもおかしくないほどの危機的な状況にあるということである。

とりあえず今回は、アメリカに焦点を当ててみてみることにしよう。

アメリカ経済危機の実体

アメリカ経済崩壊の一番の起爆剤として懸念されているのが、住宅ローン問題で揺れる金融機関の倒産である。その序章として、今年に入って既に8行、7月以降だけでもインディマックをはじめ4行 の倒産劇が始まっていることは、先の「鉄火場と化したアメリカ株式市場」でお伝えした 通りである。

次なる破綻の筆頭にあげられているのが、米銀第5位のワシントン・ミューチュアル銀行である。住宅ローンの焦げ付き増加による赤字続きで、資金の引き揚げも取りざたされ始め 出している同行は、既に倒産している8行と違いその規模が大き く、従業員は4万人を超え、総資産も3180億ドル(35兆円)に達している。それだけに、万一のことがあったら、全米規模の金融危機の引き金を引 くことになる可能性が大である。

それはまた、全米の預金者の銀行預金に対する不安を一気に増長しかねない。というのは、昨年暮れには600億ドル(6兆5000億円)ほどあった預金保険基金の残高が、現在は400億 ドルを切ってきているか らである。もしも、ミューチュアル銀行で火の気が上がるようなことになれば、経営が思わしくない上に大幅な資本不足で、その存続が危ぶまれているコロラド連邦貯蓄銀行やホライズン銀行、インペリアル貯蓄貸付銀行など 倒産予備軍には 、預金引き上げの長蛇の列が出来ることは間違いなさそうである。

それらの民間銀行の破綻劇より桁違いに大きなインパクトを持っているのが、民間でありながらアメリカ政府の支援機関でもあるファニーメイとフレディマック 社の破綻である。まさにこの2社こそ金融危機発生の 「真打ち」的存在である。ポールソン財務長官が、両社の救済を議会に求め、議会もまた金融恐慌の引き金となることを恐れて、その救済法を緊急可決した それゆえである。
 

   事実上の倒産会社となった
   フレディー・マック社
     


法案では両社の増資をアメリカ財務省が引き受けられるようにしたのだが、問題はその中身である。資本金から推定損失額を差し引いた債務超過額は、ファニーメイが3860〜6860億ドル (40〜70兆円)、フレディマックが3190〜5270億ドル(33〜55兆円)。債務超過額は両社を合わせると6870〜1兆2130億ドルと推定されている。なんと、円換算すれば70兆〜130兆円 、我が国の国家予算の2倍に達する額である。

両社は、5兆3000億ドル(550兆円)を超す多額の債券(かっての日本の長期信用銀行でいうならワリチョーとかリッチョーと呼ばれていたようなもの) の発行と併せて、民間の住宅ローンの債務保証もしている。借金会社が他人様の保証を続けていること自体、なんともおかしなことであるが、それらの額が大き過ぎてつぶせないということで、救済法が可決されたわけである。しかし、ここに来て、 両社の持つ1兆ドル(110兆円)にも及ぶ債務超過額を、政府が救済することが本当に可能かどうかが疑問視され始めてきている。

アメリカ連邦準備理事会(FRB)とポールソン財務長官との間で内輪もめが発生し、救済策の実施が一段と危うくなってきているのが、その現れである。そうした動きを受けて、両社の株価がここに来て一気に下落し始めた。8月20日には、2億株を超える物凄い売り物が殺到し、レディマックが22.06%、ファニーマエが26.79%と 暴落し、それぞれの終値は3.25ドルと4.4ドルとな り、株式市場に大きな衝撃を引き起こした。わずか1年前に30ドル近くあった両社の株価が3〜4ドルと、90%も下落したことは、もはや事実上の破綻を意味するからである。

1兆ドル近い債務超過額をアメリカ政府が引き受けることは、財政赤字の続く中でそう簡単に出来ることではない。だからこそFRBがイチャモンをつけ政府補償に反対しているわけである。また、仮に政府がそのような全面的な株式買い取り策に出たとしたら、 既存の株主はすべての株券を放棄することになるだけに、それはそれなりに問題であるのだ。

そこで今、当面の善処策として考えられているのは、発行債券償還のための資金作りとして、新に発行される優先株を政府が購入することではないかと言われている。優先株式は既存の株主の権利に影響を及ぼすことがないので、株主への影響が少なくてすむからだ。しかし、 巨額の債券の償還は次々とやって来ることを考えると、そのような小手先の処置でどこまで持つかという点が気になるところである。

8月末に償還期限が来るおよそ300億ドル(3兆円)の償還はなんとかやりくりをつけたようであるが、これから先も数百億ドル(数兆円)規模の償還期限が次々とやって来る。それをどう乗り切るかをウオール街は、固唾を飲んで見守っている ところである。仮に政府補償がもたつき160兆円規模の債券自体に火がつくような事態が生じたら、その30%以上を海外の金融機関が所有していることを考えると、 アメリカの金融危機の発生だけにとどまらず、世界金融恐慌の引き金を引くことになる。

因みに、我が国の金融機関では、農林中央金庫が5兆5000億円、三菱UFJ銀行が3兆円、日本生命が2兆2000億円、みずほ銀行が1兆5000億円保有していることが明らかになっている。各行ともにこれだけの損出が発生したら 一大事である。サブプライムの損出額とは桁違いであるだけに、日本の金融界も到底無傷ではすまされそうもない。

世界恐慌へと繋がるアメリカ金融危機の警鐘を鳴らす第一候補がファニーメイとフレディマック問題であるなら、第2、第3の有力候補は自動車産業のゼネラルモータースと 、証券会社のメルリ・リンチとリーマン・ブラザーズだといわれている。3社の話は次回に掲載することにする。


 

 

 

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