Aソ連型ウイルスの流行
この冬流行しているインフルエンザの36%を占めているのが、Aソ連型ウイルス(H1N1)によるものである。
このウイルスの特徴は、昨年までのインフルエンザと違って予防接種が役に立たないのと、感染した時に進行を抑える働きのあるタミフルが効かないことである。つまり、耐性ウイルスであるという点である。
実は、このインフルエンザは昨年、ノルウェーなど北欧で発生した時には強い感染力はあったものの、タミフルに対しては耐性を持っていなかった。つまりタミフル
が有効であったわけである。ところが、1年後に日本で発生した時には、耐性を持ってしまっており、タミフルの効果はなくなってしまっていたというわけである。
耐性を持つウイルス性の菌は、これまでにも医療現場ではしばしば検出されていたものの、それらの菌は感染力が弱いため、広がる恐れがなかったのである。しかし、今回のAソ連型ウイルスは耐性を持ちながら感染力を持つという厄介なウイルスとなっていたため、特効薬のないインフルエンザが日本中に広がってしまった
のである。
それでは何故、耐性がなかったウイルスが突然、タミフルに耐性力を持つことになってしまったのかというと、2種類のウイルス、強い感染力を持つウイルスと耐性を持つウイルスとが、人間の細胞の中で合体して、新たな混合ウイルスとして生まれ変わってしまったからである。
そこで心配になってくるのが、人インフルエンザウイルスと鳥インフルエンザウイルス双方の感染が同時に起こった時、つまり、人インフルエンザ
の患者に鳥インフルエンザウイルスが感染した時、人の細胞内でウイルスの組み換えがおこり、致死性が高くてヒトからヒトへの感染をおこしやすい新型のインフルエンザウイルスが生まれる危険性である。
新型の鳥インフルエンザに対してはタミフルの効果は期待できないため、H5型やH7型の人インフルエンザが生まれてしまうと、対処療法がないため、致死率が60%を超すと言われている新型鳥インフルエンザが大流行し、大変な事態が発生することになると言うわけである。
体温検査が始まった
2月に入って、アラスカから日本に戻った観光客全員が機内で、免疫検査官による体温検査を受けさせられたという情報が寄せられた。どうやら
2月からは、我が国では、いよいよ入国の際に体温検査が義務づけられることになったようである。一定体温(38度)以上に熱がある乗客は、そのまま
出発国に引き帰えさせられるか、強制的に病院に入れられるかどちらかの処置をとられるものと思われる。
この体温検査こそが、かねてから、鳥インフルエンザの国内侵入を防ぐために我が国が実施することになると言われていた対策である。この体温検査が冬場だけの
処置なのか、
今後、年間を通じて実施する対策なのか定かでないが、日本政府がこの冬の鳥インフルエンザの発生に、強い危機感を持っていることだけは確かである。
万が一、外国で爆発的感染(パンデミック)が発生した際には、その国からの飛行機や船舶の乗り入れそのものを拒絶することになるので、パンデミック
発生国やその周辺国に出掛けていた人は、しばらくの間、帰国できないことになってくる。それゆえ、これから海外に出掛ける人は、
感染の恐れだけでなく、数ヶ月の足止めも覚悟をしておく必要がある。
こうした状況を考えると、国内にいる場合でも、鳥インフルエンザに対処するマスクだけは用意しておいた方がよさそうである。その話は講演会等では何度か話してきているので、既に
準備されている方も多いことと思うが、品不足にならない内に、家族分まとめて用意しておくことが肝心である。
そして、国際線や国内線の空港だけでなく、空港に連結している列車の中でも、出来るだけマスクの着用を心がけることである。今年中は、パンデミックの発生は
起きないのではないかと思っているが、「転ばぬ先の杖」の例えもあるので、注意するに超したことはないかもしれない。事態はそこまで迫ってきているのである。