アメリカの失業率7.6%に悪化
アメリカの労働省が発表した1月の失業率が一段と悪化。就業者数が前月比60万減少し、34年ぶりの激減となった。また失業率も0.4%悪化し7.6%に跳ね上がった。
今回の景気後退が始まった2007年の12月からの雇用減は既に約360万人に達し、あの大恐慌期の1939年以来の最悪の数値となっている。11月から
わずか3ヶ月でその半分近くに達し、失業率は1年間で、2,7%も上昇していることを考えると、今回の不況がいかに急転直下型の不況
であるかが分かろうというものである。
問題は、この7・6%、60万人という数値が、事前にアナリストが予想した7.5%、52万人より遙かに大きな数字であったという点である。通常は、
事前予測との間に、これほどの差が出ることは希であるが、なにゆえこんなに大きな狂いが出たかというと、アナリストと呼ばれている連中が、景気悪化の実体を
十分に把握していなかったからである。
彼らの多くは、今回の金融危機による経済の悪化を通常の景気後退と捉えており、最悪期は昨年の12月であったと予想していた。そのため、
年始めから失業者の数は減り始め、1月の失業者数は12月より減少すると予測したわけである。しかし、実際は雇用減少はまだ始まったばかりなので、彼らの予測が当たらなかったのは、当たり前のことだったのである。
これからいよいよ大手企業や、金融機関の倒産が始まろうとしていることや、パート雇用の数が800万人を超すこと等を考えると、これから先1年間の失業者の増加数が、1月の失業者数×12ヶ月=720万人となっても決しておかしくないのである。
つまり、夏場までには10%の大台を超し、年末には、失業者数が1500万人に達している可能性が大きいということである。
10人に1人が職を持たないということは大変なことで、恐ろしいことである。そんな厳しい雇用情勢が発表されたというのに、昨日のニューヨークの株式市場は220ドルを超す大幅な上げ相場を演じている。
魑魅魍魎どもの狂気相場には慣れているものの、あまりに理屈に合わない相場に、唖然とさせられる。オバマ政権の発動する救援法案が週明け早々に上院を通過しそうであるので、またしばらくは上げ相場が続くことになるかも知れないが、そろそろこうした反発局面も、終焉を迎えることになるのではなかろうか。
因みに大恐慌時の失業率は25%に達したと言うから、それが再現されることになると、失業者の数は3700万人に達することになる。また、閉鎖された銀行は1万行に及び、1933年2月にはとうとう全銀行が業務を停止、社会主義革命の発生すら懸念されたというから、その時の荒廃した世情を想像しただけで、恐ろしくなってくる。
ぞうぞくと続く金融機関の倒産
大手銀行のシティ・バンクやバンカメ・アメリカン等が何とか延命しているニュースだけを見せられている読者の多くは、今、アメリカの金融機関がいかに厳しい状況に追い込まれているかをご存じないかも知れない。
しかし、アメリカの金融機関は中小の銀行を入れると、ほぼ毎週1行が破綻する状況が続いており、今年に入ってからだけでも、既に7行が破綻しているのである。
金融機関には、ブッシュ政権当時に発動された75兆円に及ぶ金融機関救済法案によって膨大な資金供給がなされているのに、なにゆえ倒産劇がそんなに進んでいるのか疑問に思われ
る読者も多いに違いない。
しかし、大手銀行と違って中小の金融機関はFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)に差し出す担保が残っていないために、救済を受けられず、預金者が預金を引き出し、現金を手元に置き始めている今、資金繰り難で倒産する金融機関が続出しているというわけである。
こうした状況が続く中で、いずれシティやバンカメのような大手銀行が行き詰まり、国有化か破綻に追い込まれるのは必定である。その時には、いよいよ魑魅魍魎たちの修羅場が始まるのだが、善良な市民がそれに巻き込まれないことを願うのみである。