三井住友フィナンシャルグループが2005年3月期以来、4年ぶりの赤字転落をすることになった。また、三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループも赤字転落が濃厚で、3メガバンクがそろって純損失に陥り、2000年代前半に銀行界を襲った「冬の時代」が再び到来してきたようである。
融資先の経営悪化や、手持ちの株価の下落、昨年夏に融資したバークレイ銀行の株の損出など、厳しい決算が出ることは予想されていたものの、それにしても、1800億円の黒字見通しから、3900億円の赤字へと下方修正することになったのには驚かされた。さらに8000億円の公募増資発表も驚きである。
銀行は、記者会見の席で、「2010年以降の着実な業績回復を図るため、保守的な対応を実施した」と述べ、融資先企業の経営不振に備えた貸倒引当金の積み増しなどの「攻めの姿勢」による損失と強調しているが、銀行にとって融資先企業の業績が回復しない限り、成長に向けた道筋を描くのは難しいのが実情だ。だからこそ、最大8000億円の増資が必要になったのではなかろうか。
新聞発表を受けて、10日の株式市場で三井住友フィナンシャルグループ株が500円のストップ安で終えている。昨日まで買い上げてきた「
とがめ」が一気に噴出してきたともいえるが、赤字・減配・増資となれば買う要因は全くなく、週明け以降も売りが続くことになるかもしれない。
また、「みずほ」、「三菱UFJ」も膨大な赤字に陥ることは必至で、3メガバンクで1兆円を超す事態が予想されるだけに、金融株の崩壊相場が来週以降見られることになるかも知れない。
銀行の決算の悪化は、日本の経済が今や急速に悪化しつつあり、倒産が急増してきているなによりの証で、与信管理をしっかり行っているはずのメガバンクであっても、追いつかないほど企業の突然死が急増してきているということだ。
「貸しはがし」、資金回収合戦が始まった
そうした状況が起きてきているのは、単に物が売れなくなって経営がおかしくなっているだけではないのである。そこには骨肉争いの銀行同士の「貸しはがし」問題があるのだ。
先日、みずほフィナンシャルグループが2兆円を超える資金回収を行ったと報道されたが、この回収は他の三井住友と三菱UFJを出し抜いた形で行ったと言われており、そうだとすると、今度は2行が「みずほ」が貸し込んでいる企業から資金を回収することになり、今や「りそな」を加えた四大銀行が入り乱れて中小企業からの資金回収合戦となっているのある。
これでは、中小企業はたまったものではない。さもなくても貸し渋りが起きて資金繰りが悪化している上に、銀行同士の「貸しはがし」によって、この上さらに資金が引き揚げられたら倒産企業が続出するのは必至だ。
そのあおりを受けて四苦八苦しているのが、信金中金である。不良債権の拡大+有価証券の赤字と、ダブルパンチになっており、1800億円を超す創立以来初めての赤字に転落しようとしている。
こうしてみてみると、銀行の先行きは想像以上に厳しいと考えざるを得ないが、民間調査会社の帝国データバンクが、「大企業、中堅企業は“五月危機”と呼ばれる倒産続発が懸念されている」と指摘していることを考えると、株式市場のこのところの上げ相場がどこまで持つのか心配になってくる。
前回のレポートで、株の戻り相場が6月一杯続くかもしれないと書いたが、欧米に先駆けて日経平均は5月中には下落傾向に向かうことになるかもしれない。