倒産間違いないGM
予想通り、クライスラー社の破綻は現実のものとなってしまったが、間もなくGM社も同じ運命を歩むことになりそうである。
それを端的に表す動きが起きている。それは、GM社幹部の自社株売却劇である。新聞報道によると、ロバート・ラッツ副会長始め現役幹部6人が、今月8日から11日にかけて、保有するGM株全てを売却したようである。
現在、GM株は1ドル丁度まで下落し、これは大恐慌以来の水準であるため、6人の売却額をあわせてもわずか32万ドル(3100万円)しかならない。それでも破綻が明らかになってからでは紙くずと化すわけであるから、今のうちに売っておこうとしたのであろうが、会社幹部が売り逃げするようでは、さすがのGM社も、もはやこれまでである。
トヨタは大丈夫か
トヨタ自動車の09年の3月期の経営損益が、4610億円の赤字に転落したことはご承知の通りであるが、1年前の決算が2兆2700億円余の黒字であったことを考えると、その減益の幅のあまりの大きさに改めて驚かされる。
業績悪化の主因は、年間135万台の販売台数の減少と急速に進んだ円高によるもののようであるが、135万台というと、09年度の世界販売台数が740万台だから、前年比で15%の減少ということになってくる。
そこで今年度の見通しであるが、数日前に朝日新聞で報道された記事を読むと、8500億円の赤字となっている。しかし、この1−3月だけで6825億円もの営業赤字になっており、これを、年率換算すると、2.7兆円もの大赤字となってしまう。
それではどちらが実態に即しているかと考えると、2兆円を超す赤字の方の公算の方が強そうである。その根拠は、8500億円の赤字予測の前提となっている為替は、1ドルが95円、1ユーロが125円となっているが、ここ3ヶ月ほどは円安傾向が続いているが、夏場からはふたたび円高に向かう可能性が強いか
らである。
仮に1ドル85円近く、1ユーロが110円近くまで円高が進むようなことが起きると、赤字幅が2兆円を超すことは間違いない。この為替レートは決してあり得ない数値ではないのである。むしろ年末あたりには1ドルが80円割れ、1ユーロが100円割れの可能性すらあり得るのである。
販売台数比も09年度が15%減であったことを考えると、今年度は25%以上の減少が続く可能性は十分にあり、下手をすれば30%の大台を超すことになるかもしれない。
なぜなら09年度の前半は実績割れにはなっていなかったのであるから、全期通算で15%減と言うことは、10月からの下期で30%を超す減少が続いたということになるからである。そう考えると、2兆円を超す赤字の可能性はますます高まってくる。
その先触れとなっているのが、2次、3次下請けの土方鉄工所、 サンテック・タケトモ、 ミシナ鉄工の事実上の倒産である。3社はこの3月期に負債総額 10億円 2億円、4億円を計上、信用情報機関によれば事実上の経営破たんに追い込まれたと発表されている。
トヨタからの発注が激減し、生産能力の5%程度にまで操業率が落ち込んだため、「もはやこれまで」となったようだが、トヨタ自身が今や生き残りに必死になっており、2次下請け、3次下請けの面倒は見てられないこととなったのである。
いくら、孫請け会社といえども、自動車産業は典型的なピラミッド構造になっており、このピラミッドの下が崩れれば自動車は作れない。今後、こうした形で部品会社の破たんが続けば、トヨタだけに限らず、全ての自動車メーカーが満足した自動車が作れない事態に追い込まれることになる。
これはゆゆしき問題である。それを考えると、トヨタの先行きにも、暗雲が立ちこめていることは確かなようである。
造り相場の株価にご用心
日立製作所の7873億の赤字決算を筆頭に、野村HD7081億円、みずほFG5888億円、トヨタ自動車4369億円、パナソニック3789億円、三井住友FG3734億円、東芝3435億円、第一三共358億円,NEC2966億円と、日本を代表する企業や金融機関が軒並み巨大な損出を計上。
さらに、来期も厳しい決算見込みを発表する中、こうした現状とは裏腹に、私の予想通り、4月から日米の株価が上昇に転じ、ダウが8000ドル、日経平均が9000円の大台を超え、もう一つ上の大台に向かって進んでいる。
日米共に景気指数の改善が見られたわけでもないのに異常な上昇相場を演じているのには、二つの要因がある。
一つには、「残り火の一相場」で書いたように、大赤字の債券の評価額を、時価評価というまやかしの手段を使って誤魔化し、決算の見せかけ数字を良くしていることと、じゃぶじゃぶの金融緩和で金余り現象を演出しているからである。
しかし、作り物の安定策は必ずほころぶときが来るものである。それが6月になるか7月かは別にして、そう遠からずの内にその時がやってくることは間違いない。時の到来が遅れて、株価の上昇が進めば進むほど、次なる下げ相場は一段と激しさを増すことになる。
お抱えのエコノミストや経済音痴の評論家の中には、経済と共に株価の底打ち論を言い出す輩も出てきているようだが、くれぐれもそんな戯言(たわごと)に載せられないようご用心されたい。
白川日銀総裁が4月のニューヨーク講演で、「偽りの夜明け」と表現したのは、世界的な経済と株価底打ち論に対する警告だったことを忘れてはならない。