連邦破産法適用
経営危機に陥っているGMが27日、自社の社債を保有する債権者との債務削減交渉がまとまらず、交渉を打ち切ることを発表した。これをもってGMは
事実上、倒産が決定したことになる。
先のクライスラー社に続くビックスリーの倒産劇の第2幕の幕開けである。残念ながら私が1年前に描いたシナリオ通りに事態が進んでいるようである。
当初26日までに削減交渉がまとまらない場合は、今月まで交渉を続けるはずだったが、1回の交渉で打ち切りを発表したのは、同意者の数が予定の90%どころか10%にも満たないことが明らかとなったからである。
270億ドル(2兆6000億)の90%を棒引きにしてくれというのだから、同意者が出るはずがない。債権者の中にはGM社の従業員や元従業員が多く含まれているようだから、彼らは会社は首になる、退職金はもらえない、所有していた自社債券が紙くずになるわで大変だ。
すでに退職している人々にとっての心配事は、これまで掛け続けてきた医療給付金や年金が大幅にカットされるか、最悪まったくもらえなくなることである。医療保険金の支払いに充当すると言われているGMの株式は、破綻が決まれば非上場株となるので、市場での換金が一段とむずかしくなってくる。
さらに年金資金は、破綻した企業の年金を保証する政府系の年金給付保証公社に移管されるようだが、公社そのものがすでに鉄鋼大手や航空会社などの破綻によって335億ドル(3兆
2000億円)の債務超過に陥っており、今後、立ちゆかなくなる可能性が大である
ことを考えると、こちらも不安である。
来月初め、正式にアメリカ連邦破産法11条に則った倒産手続きが行われた後は、政府がその株式の50%以上を保有し、経営再建を目指すことになるものと思われるが、政府はすでに200億ドル(2兆円)の出資を行っており、再建には
さらに、最低500億ドル(5兆円)との1000億ドル(10兆円)とも言われる膨大な資金が必要になってくる。
50%の株式を保有した政府はどうやって経営に参加していくつもりだろうか。いずれの方法をとろうが、お役人が経営する会社が成功する可能性が低いことは、日本でもアメリカでも同じはずだ。万が一旨くいくようなら資本主義経済を放棄して社会主義経済に移行した方がよくなってくる。
問題はその政府だが、先月10日に米財務省が発表した3月の財政収支は、赤字が1922億7000万ドル(19兆円)に達し、同月としては過去最高となっている。なんと、前年同月の482億1000万ドルから4倍近くへ拡大したことになる。
その結果、2009会計年度上半期(08年10月─09年3月)の赤字も過去最大の9568億ドル(90兆円)となった。金融危機や景気後退への対応で支出が膨らんだ
結果である。ファニーメイやフレディマックなどへの資本注入や失業保険に関する州政府への補助金などが増加の主因である。
昨年度上半期だけで90兆円ということは、2009年度の財政赤字は間違いなく200兆円を超すことになる。200兆円と言えば、アメリカの国家予算並である。金融機関を含めこれから先はさらなる大型倒産が増える可能性が大きい上に、税収がますます減少していくことを考えれば、もはやアメリカ政府そのものの破綻が視野に入ってくる。
こんな情勢の中、アメリカの株式市場は作り物相場で8500ドル付近まで上昇し、さらなる上値を求める展開が続いている。
今しばらくはこんな状況がつづくものと思われるが、先に延びれば延びるほど、戻りが高ければ高いだけ崩壊の衝撃は大きくなるだけだ。
所詮(しょせん)残り火は残り火に過ぎない。いつまでも燃え続けることはありえない。マスコミが伝えるアメリカの現状は、アメリカ国家と市場経済崩壊の
残り火をカモフラージュした虚像に過ぎないことを、くれぐれもお忘れにならないように。