食糧危機到来の今一つの予兆
年々、世界的な異常気象が進む中、順調と思われた我が国でも、この夏の低温と長雨による日照不足により、北陸、東北、北海道などで
、稲作だけでなくジャガイモやトウモロコシといった農作物にも大きな被害が出てきている。
8月中旬からの天気の回復で、稲作は大分持ち直しては来ているようであるが、それでも作柄はあまりよくないようである。作物への異常気象の影響が
、来年あたりから本格的になる可能性が大きいので、お米や小麦粉などの備蓄を考えておられる方は、今年の内に準備されておかれた方がよさそうである。
備蓄は、食糧危機に備えるためだけでなく、インフルエンザなどの感染症の蔓延や地震や放射能の緊急対策のためにも是非しておきたいものである。同じ備蓄でも、食糧危機対策用の備蓄は、インフルエンザや放射の汚染対策などと違って、その期間が長期化する分、量を多くする必要がありそうである。
そこで問題になってくるのが、都会に住む人々の備蓄する場所の確保である。他に保管場所を求められない限り、家の中の家具や備品を思い切って整理、搬出し
て少しでも多くの空間を捻出し、出来るだけ多くの備蓄を確保できるように知恵を絞らねばならない。
そんな状況が日に日に進む中、追い打ちをかけるように、先日(9月7日)のNHKテレビの「クローズアップ現代」で、「スーパー雑草」の繁殖による世界的な食糧危機
到来の可能性が取り上げられていた。
|
|
|
|
可憐な花「オモダカ」もスーパー雑草化すると、一気に脅威となる
|
|
スーパー雑草による被害の拡大
ご覧になられた方も多かったと思うが、見逃された方や見たものの、事態をあまり深刻に受け止められなかった方もおることと思われるので、改めてその内容を知って頂くために、番組の概要をお伝えすることに
した。決して聞き流しておれるような話ではないからである。
今、日本全国の農地で異変が起き始めている!
稲穂が実りはじめた今、日本の各地で稲の間を埋め尽くすように繁殖している「スーパー雑草」によって、稲作に大変な被害が発生しはじめている
ようである。
「スーパー雑草」とは何か? その代表的な種が先般、HP「水田の野鳥と昆虫@」に掲載した白い花の「オモダカ」という雑草である。
この「オモダカ」は水辺に咲く2センチほどの小さな花で、雑草にしておくのがもったいないような可憐な草花である。田んぼの一角で数輪が咲いている分には、農家の方にとってもさして害にならないが、これが田の中一面に生い茂るとなると、重大事である。
昔から農家の方にとって一番頭が痛いのは、田や畑の雑草の草取りである。それだけに、近年この雑草を除草剤で除去することが出来るようになったのは、農作業を進める上で大変喜ばしいことであった。
ところが、この除草剤に頼り切り、より効果の高い除草剤を農家の方が一斉に使うようになった結果、除草剤に耐性を持つ雑草が出現してきたのである。その一つが「オモダカ」というわけだ。
雑草にしろ、農作物にしろそれらの植物は、体内に持つ酵素がタンパク質と結合してアミノ酸を作って成長していく。そこで、酵素がタンパク質と結合しないように結合する面をふさげば、植物は枯れてしまう。その役目をするのが除草剤である。
近年、アメリカの薬品会社によってほとんどの雑草に効き、効果が長持ちする「SU 剤」 という大変効率のよい除草剤が開発された。一度散布すればそれで済むということで、農家の方が一斉に使用するようになり、今では
アメリカだけでなく世界中の主要な農地でこのSU剤が使われている
。
この40年間で、世界の人口はおよそ2倍に達した。その人口増を養ってこれたのは、乾燥や害虫に強い品種の改良や小量で多くの雑草に効果のあるSU剤などの除草剤の開発であった。日本においても、効率的な除草剤は多くの農家が求めていたものであったので、田や畑で広範囲に使われてきた。
雑草の反逆が始まった!!
製薬会社が開発を進めてきたのは、乾燥や害虫に強い品種の改良だけではなかった。除草剤の影響を受けない品種の改良も同時に行われてきた。それ
が出来なければ、強力な除草剤を使うことが出来ないからである。それらは、みな今論議を呼んでいる「遺伝子組み換え」の技術を使って為されてきた
ものである。
そして、散布から十数年が経過した今、いじめられてきた雑草たちの大反撃が始まったのである。稲の間を埋め尽くした「オモダカ」は、稲の養分を奪い、稲穂の成長を妨げはじめているのだ。
それによって、どの程度の被害が発生するのかというと、20%から40%の減産につながるというから、農家にとっては一大事である。
5年ほど前から除草剤の効かない「オモダカ」が繁殖し始めた宮城県では、今その被害が全農地の3分の1にまで広がってきており、農業経営に深刻な問題を引き起こしているのである。
さらに心配なのは、除草剤の効かないスーパー雑草が「オモダカ」以外にも広がっていることである。現在、専門家により確認されているだけでも、すでに17種類に達して
おり、その被害が懸念されはじめている。
もともと「オモダカ」は冷たい水で生育する植物なので、寒冷地や高冷地にだけ咲く花であったが、除草剤の影響を受けて、今は温暖な地、九州までその繁殖地が広がっている。それだけに、除草剤に免疫力を持ったオモダカが全国規模で広まるようなことになったとしたら、日本の稲作農家にとっては一大事である。
17種類のスーパー雑草の中には水田に繁殖する雑草だけでなく、畑で繁殖するものも含まれているので、このまま早急な対策が講じられなければ、日本
における食糧事情の悪化につながる可能性が大である。
その被害は世界に広まっている
|
|
|
|
アメリカの巨大農園が雑草の反撃にさらされはじめている。
|
|
それでは、海外からの輸入を増やせばよいのではないかと考えるかもしれないが、「スーパー雑草」の蔓延は何も日本固有の問題ではないのである。例えば、世界最大の穀物輸出国であるアメリカでは、
「スーパー雑草」の問題は我が国よりはるかに深刻な問題となっているのだ。
遺伝子組み換え農業の本家で、巨大な農場を持つアメリカのことであるから、想像に難くないところであるが、ジョージア州をはじめとするアメリカの東南部一帯では、
すでに「スーパー雑草」の繁殖エリアが
、この5年間で2800倍に広がっており、その拡大状況はまさに天文学的な数値に達しているのである。
アメリカでは、遺伝子組み替え作物の作付け面積の割合は、トウモロコシで85%、大豆では91%に達している。そのことを考えると、これからアメリカの農家を襲う
「スーパー雑草」の被害は想像を絶するものになる可能性が大きい。だからこそ、アメリカの研究者は「スーパー雑草」の蔓延は世界の食糧危機につながると警告を発している
のである。
またテレビでは、アメリカの状況だけしか触れていなかったが、その被害がヨーロッパやロシア、中国、東南アジアの一角に広がりはじめていることは間違いない。なぜなら、
「スーパー雑草」を産み出したSU剤は今や世界的に使用されているからである 。
遺伝子組み換えや除草剤の製造などを進める上で、研究者に欠けているのは、作物にしろ雑草にしろ、そうした植物の生命に対する倫理観である。
学者は植物も動物もみな人間と同じ心を持った生命体であることの認識に欠けている。そのため、そういった研究者たちによって産み出された
新種や薬品は、SU除草剤に限らず決してよい結果を産むことにはならないのである。
現に、最近の野菜類の栄養価は一昔前のそれらに比べて半分以下に落ちているといわれている。そこに目をつけたのが通販の主力商品となっているミネラル類の栄養食品である。劣化してきているのは栄養価だけではない。トマトなど昔のおいしさを知っている我々60代の人間は、
自然野菜の持つ本当のおいしさ感じなくなって既に久しい。
|
|
|
|
遺伝子組み換え作物の生産マップ(2005年)。
オレンジ色の5カ国は遺伝子組み換え食物の95%を生産している。
オレンジ色の斜線の国々は遺伝子組み換え作物をを生産している。
オレンジの点の国々は屋外での実験が許可されている。
|
|
野菜や果物に対する愛情を持たない研究者が作り出すものは、しょせん生産性を重視したお化けのようなものばかりである。だから、しばらくした後で必ずその反動が生じるのである。
番組の中で、スーパー雑草を調査している研究者たちは、人間と同じ解毒力を持った雑草が産まれてきていることに大変驚いている、と述べていた。
植物界に
も肝臓機能をもった「お化け」が出現してきたようである。
中央農業総合研究センターの研究者は、雑草の成長を抑えるには除草剤だけに頼らずに、他の植物と共生させることが大事であると話していた。その一例としてトウモロコシ畑にクローバーを繁殖させるという方法が紹介されていたが、その話を聞いて、畑の雑草を押さえるのにソバが有効的であることを思い出した。
私も少しばかり田と畑を持っているが、一番頭が痛いのは、そこに生える雑草の除草作業である。時間がないので、自分の手ですべての田畑の草取りなどとうてい出来ないが、家の前の畑だけは何とか耕耘機(こううんき)を使って除草している。
他の畑や田んぼの除草をどうしようかと考えていたとき、ある農家の方が妙案を教えてくれた。それは、今はやりのソバを人に頼んで作ってもらうことである。ソバは畑や田全体に満遍なく広がるので、光が遮断され雑草が生えるのを防いでくれるのだ
。つまり、種まきや刈り取りが簡単に出来るソバを撒いておけば、草むしりせずにすむというわけである。
この方法だとたいして手間暇をかけずに、畑を雑草から守ることが出来るわけである。私は専業農家ではないのでこの程度の方法で何とか自然保護に努められるが、大々的に農業をやっている方たちにとっては、ことはそう簡単にはすみそうもない。
年々農業従事者の高齢化が進んでいる日本農業の現状を考えると、
「スーパー雑草」の繁殖は不安を通り越して恐ろしくなってくる。いずれにしろ、世界中で始まっている洪水や砂漠化
、更にはミツバチなどの受粉をする昆虫の激減に加え、「スパー雑草」の天文学的な広がりを考えると、世界的な食糧不足がまた一段と増してきたようである。
畑や田を持つ農家の方は別にして、すべての食糧をスーパーで購入するしか手のない都会暮らしの人たちは、
これから先が思いやられる。いつまでもスーパーの店頭に食料品が並んでいるという保証はないからである。アメリカ先住民の諺(ことわざ)にこんな一説がある。
「すべての木を切り倒し、すべての川を汚し、すべての魚を取り尽くしてから、やっとあなたは気がつくことになる。お金は食べれないことに」
人類はやがて、この諺を身をもって体験することになりそうである。