金融株の下げが続くアメリカ市場
株式市場が再びおかしくなってきている。東京市場は今日も続落し、112円安の7534円(昨日のダウ7552ドルとよく似た仲良し数値)で終えているが、10〜12月期GDPの下落率が12.7%と2桁の落ち込みとなっては致し方ないことである。
デフォルト宣言もあり得ると言われている、イギリスやロシア、韓国と言えども、まだ一桁台の下落に留まっていることを考えると、いかに、我が国の不況が深刻かが分かろうというものである。とても、国際会議の前後にアルコールなど嗜(たしな)んでいるどころではない。
株式市場の本家、アメリカでも大幅な下落が続き、昨日の300ドル近い下げで、10月につけた最安値7150ドルまで、あとわずかに迫ってきた。
落日のウオール街
問題は、オバマ新大統領の肝いりの72兆円を超す史上最大の景気対策法案が議会で承認されたにもかかわらず大幅な下げを演じていることである。そのきっかけとなったのが、鳴り物入りで始まろうとしていたガイトナー財務長官の金融安定
化計画について、
その中身が十分に詰め切れていないことが明らかとなったことであった。
金融機関救済資金の件で議会の公聴会が開かれた席上で、その用途別の資金枠などの明細について、ある議員がガイトナー財務長官に質問したところ、
長官は明確な答えを用意していなかったというのだ。 これを知った株式市場はただちに下落したというわけである。
また、先週の木曜日にガイトナー長官が出席して、ゴールドマンサックス社で開かれた秘密会議に、ヘッジファンドの大手
も参加した。ところが、秘密会議と言うことで、
彼らから本音発言が飛び出し、会議はパニック状態になったというのだ。
というのは、彼ら発言から明らかとなったヘッジファンドの保持しているデリバティブ商品が巨額すぎて、簡単に潰(つぶ)せる代物でないことが判明したからである。この調子だと、どうやらヘッジファンド
そのものも救済対象にせざるを得ないことになりそうである。
1ドルを切ったAIG株
こうして見てみると、金融機関を救済しようとすると、際限なく資金を投入せざるを得なくなってくるようであるが、問題は、これから先どこまで、国民の支持が得られるかどうかという
点である。議会や金融機関との間で進められている秘密裏の会合の内容が表に出るにつれ、国民からは拒否反応が出てくる可能性が大きそうである。
となると、これ以上見通しの立たない金融機関を支援しようとすると、国有化するしか方法はなくなってくる。アメリカの大手金融機関は、あのアイスランドの銀行と同じ運命をたどることになるのだ。
既に、それを見越した動きが金融株に顕著に表れている。次の下落率を見ればよく分かる。
JPモルガン $21.65(−12.31%)、バンカメ $4.90(−12.03%)、シティ $3.06(−12.32%) AMEX $13.96(−11.31%)、AIG $0.78(− 8.24%)
軒並み12〜13%下落し、一桁台の株価に陥っている銀行も現れている。中でもひどいのは、シティと保険会社のAIGである。両社は既に2兆円を超す巨額な資金援助を受けているのにもかかわらず、株価の下落は一向に止まらず、AIGIはなんと1ドルをきって、たったの78セント。つまり、一株が70円と紙切れ同然となっているのである。
なぜここまで、金融株の下落が進んでいるかというと、倒産と違って国有化という事態になると、その瞬間に株券はただの紙切れとなり、株価はゼロとなってしまうからである。それゆえ、金融株を保有している人たちは、
損失を覚悟で次々と売却してきているというわけである。
GMとクライスラーの救済の行方
17日、GMとクライスラー社から再建計画案が議会に提出されたようである。しかし、会社と組合との問題が解決されていないため、十分な再建計画が立案されている可能性は低く、すんなりと議会で承認される可能性は極めて低いと思われる。
それどころか、両社は先の2兆2000億円の緊急支援に加えて、新たに2兆円もの追加支援を求めている
。先に環境車生産の支援金名目の2兆5000億円と
部品メーカーに対する支援金とを合わせると、自動車業界全体への支援金の要請額は9兆2000億円に達する。
もはや、1兆円や2兆円の支援は、ガン患者に胃薬を投薬しているようなもので
、その場しのぎの支援に過ぎないことが分かる。私が前から述べているように、2社はも
はや事実上倒産してのだから、巨大な支援金は無駄金となることは明らかである。因みにGMの株価は昨日10.8%下げて2.18ドル、たったの200円である。
会社と組合との交渉がまとまらない要因を見れば、いかにGMとクライスラーの将来が絶望的であるかが分かろうというものである。というのは、GMもクライスラーも今回の再建計画立案に際して、負担の大きい
医療保険制度を会社から全米自動車労組(UAW)に移そうとしている。そのための基金として、会社の株を提供しようと言うわけである。
開き直ったワゴナーGM最高経営責任者
しかし、その提案を労組は拒否しているだ。なぜかというと、組合側は、いつつぶれるか分からない会社の株では、基金としての価値がないと考えているからである。
私は大手企業の経営のトップにいた人間であるから分かるのだが、組合は会社の経営状態というものを熟知しているものである。それだけにその組合側から、経営の存続を危ぶまれるようになったら、会社が危機的状況にあることは間違いないのだ。
一方、ワゴナー最高経営責任者は、GMとクライスラーに対する政府支援に批判的な議員に向かって、破産法適用を申請した場合のコストは1000億ドルに上るとしており、その資金は政府によって拠出してもらわねばならないと述べているというから、思わず笑ってしまう。ここまで開き直ったら
、たいしたものである。
こうしてみてくると、中小は言うに及ばず
大手の銀行もビックスリーもそう遠くない内に破綻あるいは国有化と言う事態に至りそうである。これでは、資本主義の本丸が共産化へと向かうことになってしまう。
いずれにしろ、多くの銀行や自動車会社の先行き懸念が本格化したときには、株価暴落の第2幕が切って落とされることになる。その時期は、早ければ3月末から4月、遅くても夏場の終わりと言ったところではないだろうか。