政府が重い腰を上げ始めた
3月8日の「もし、新型インフルエンザが発生したら・・・?」という政府広報の記事を読まれただろうか? 読み損なった方はインターネット412.htmlから見直すことができるので、一度見ておいたらいかがだろうか。
そこには、紙面の約半分を使っての内閣官房、厚生労働省、農林水産省連名の「新型インフルエンザ対策」が載っていた。突然のことなので驚かれた方も多かった
ことと思うが、私はようやく政府が重い腰を上げ始めたなと感じた次第である。
2月6日掲載のHP 「忍び寄る脅威」 で、海外からの入国者に
対し抜き打ち的に体温検査を実施し始めたことを書いておいたが、今回の全国すべての新聞を使っての広報は政府がここにきて、強い危機感を持ち
、いよいよ「新型インフルエンザ対策」に本腰を入れ始めた証(あかし)と、受け止めるべきである。
なぜ8日の掲載を決断したのか? これまで、いつ載せてもおかしくない状況にあったことは事実であるが、やはりその引き金となったのは、愛知県豊橋市のウズラの飼育農家で、ウズラが高病原性・鳥インフルエンザに感染した疑いが出たことではないかと思われる。
日本での鳥インフルエンザウイルスが確認されたのは、宮崎県と岡山県で2007年1月から2月にかけて、相次いで感染して以来であるから、およそ2年ぶりである。今回は、強毒性のH5N1型ウイルスではなく、毒性が弱いH7亜型のウイルスであったために、1羽のウズラも死亡して
おらず、事なきを得たが、もしも発見がもう少し遅れて感染が広がり、
毒性のウイルスに変異していたら大変なことになっていたかもしれない。
この機会に、私なりに勉強した「鳥インフルエンザ・ウイルスH5N1型」について情報を掲載することにしたので、参考にして頂きたい。
まだまだ日本の社会では、鳥インフルエンザについては楽観論が支配的だ。その根拠となっているのは、「強毒性の鳥インフルエンザ・ウイルスH5N1型は、確かに怖いが、ここまでヒトからヒトへうつる突然変異が起きなかったのだから、もう変異は起きないのではないか」という
考え方によるものである。
こうした楽観論は一般市民だけでなく、医学界の一部にも存在している。それゆえ、官僚も医療関係者も他の先進国などに比べて鳥インフルエンザ・ウイルスの脅威に対する認識が甘く、知識も少なく、対処法も
熟知していないようである。
確かに、現在インドネシアやベトナム、中国で感染し死亡している人は、あくまで鳥インフルエンザ・ウイルスH5N1型に感染したのであって、我々が今問題にしている新型ヒト・インフルエンザに感染したのではない。人から人へ
の感染例も何十件か報告されているが、そのウイルスはあくまでH5N1型ウイルスであって、人から人への感染力を持った突然変異型ウイルスによるものではない。
しかし、「忍び寄る脅威」に書いたように、人インフルエンザウイルスと鳥インフルエンザウイルス双方の感染が同時に起こった時、つまり、人インフルエンザの患者に鳥インフルエンザウイルスが感染した時、人の細胞内でウイルスの組み換えがおこり、致死性が高くてヒトからヒトへの感染をおこしやすい新型の
ヒト・インフルエンザウイルスが生まれる危険性は十分にありえるのである。
それゆえ、世界保険機構(WHO)は、時期は別にして、鳥インフルエンザから人インフルエンザへの変異の確率は100%であると、
明言しているわけである。
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国連の発表によると、鳥インフルエンザはすでに60数カ国で発生し、
人類への大規模感染及び拡大の可能性があるという
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新型インフルエンザの脅威
問題はその新型ヒト・インフルエンザが発生した場合の人類社会への影響力である。はっきりしている
のは、いったん起きれば、人類史上最悪レベルのものとなるということである。
これまでに人間に大量死を招いてきたものは、病気以外では、戦争と革命である。戦争は第二次世界大戦の約6千万人の死者が最悪であり、革命は中国の文化大革命が最悪とみられる。その死者は、中国でいまだに情報公開どころか事実の精査と確認すら行われていないから定かではないが、2千万から3千万人が殺害されたとする見方が有力である。
これに対して、インフルエンザはすでにスペイン風邪や香港風邪によって、5000万人から1億人までの死者を出している。しかし、史上最悪の死者を発生させたスペイン風邪のウイルスと、今回のH5N1型ウイルスでは、比較にならないほどに後者のほうが毒性が強いことは医学界の一致した見解である。
したがって、もしも新型ヒト・インフルエンザが発生しパンデミック(感染症の爆発的流行)となった場合には、3億5千万から4億人以上が死ぬと分析・予測
されているのだ。この比率で計算すると、我が国でも700万人を超す死者が発生する可能性があるが、それどころか、もしも、感染率が50%で死亡率が70%と言う最悪の事態になったときには、それより遙かに恐ろしい事態になりかねないのだ。
今年の1月下旬の段階で発表された統計数値によれば、インドネシアの鳥インフルエンザの感染者は141人で、うち115人が亡くなっており、死亡率、致死率は実に82%に達している。感染すれば
80%もの人間が亡くなるという数値を見れば、鳥インフルエンザの毒性がいかに強いかが分かろうというものである。人型に変異の際に毒性が弱められない限り、あとはただ、感染率を防ぐしか
方法はない。
なんと言って人型インフルエンザの最大の脅威は、かって人類が発病したことのない病気だけに、免疫を持つ人間がこの世に存在しないということ
である。言い方を変えると、個人の体力、免疫力、その他の個性に関係なく、この新型ヒト・インフルエンザのウイルスH5N1型に接した人は、必ず感染する、うつるということだ。
あの人は強健だからうつらないとか、あの人は風邪に強いから大丈夫だ、などということは一切ないということを肝に銘じておくべきだ。
どこの国で発生する可能性が強いか?
世界保険機構(WHO)の発表している公式のデータでは、最悪の死者数を出しているのが、インドネシア、続いてベトナムであり、中国はインドネシアに比べて6分の1ほど
しか発生していないことになっている。しかし、これはそれぞれの国が正直にデーターを発表していることが前提である。
誰もが考えるのは、中国のデーターは怪しいのではないかと言うことである。ありとあらゆることが隠されて、誤った数値が発表されている中国のことである。とうぜん鳥インフルエンザの死者の数
だけが正確なものだとは、思えない。
実は、WHOの事務局長が中国人のマーガレット・チャン女史であるために、事実上、中国国内にはWHOの調査団が入れない状況にあり、鳥インフルエンザが発病してもその実体を調査のしようがない
状況にあるのだ。インドネシアの閣僚から公明性に欠けると怒りの声があがっているのはそのためである。インドネシアに限らず、どこの国も皆中国に対しては疑心暗鬼でいることは確かである。
そう考えると、インドネシアやベトナム、ラオス、カンボジア、タイ、ミャンマー以上に中国からの新型鳥インフルエンザの発生の可能性は大きいと見なしておいた方がよさそうである。
私は他の理由もあって中国が発生源になる確率が一番高いのではないかと思っている。
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中国では1月には8人が感染。うち5人がすでに死亡している。
写真は四川省成都市の鶏を売る露天商
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現に、中国での感染状況は今年に入ってペースは上がっていて、年初からの死者はすでに5人に達し
ている。1月6日には、「北京市内の19歳の女性が死亡し、マーケットで買ったアヒルを自分で解体し内蔵を洗浄したことが感染源とみられる」という発表があった後も、16歳の少年や18歳の男性など年若い死者が次々に発表されている。
一つだけはっきりしていることは、新型ヒト・インフルエンザが発生するためには、人間が鳥や豚と一緒に暮らしているだけではなく、養鶏家やふつうの農家が鳥や豚が死んだ時に、その死因を深く追及することなく、自分でその鳥や豚をさばいて、家族で食するという慣習が存在していること
が必要だという点である。
その点を考えると、我が国において、新型インフルエンザが発生する確率は、中国や東南アジアに比べて遙かに低いことは確かである。
理由がなく死んだ場合には、99%の人が疑いを持って検査に回すはずだから、自分の手でさばいて食することは、先ずないはずだ。従って、問題は、いかに他国からの感染を防ぐかという点
に絞られそうである。
感染者の入国を防ぐという点で問題なのは、インフルエンザは感染から発病までに2〜5日を要するという点である。従って、本人が発病したと自覚する
前に、あるいは病院で新型インフルエンザであることが確認される前に、日本行きの飛行機に乗り込んでいたらアウトである。
成田に着き、ホテルに宿泊、ビジネスなり観光をしている内に発病したら、あっという間に感染は広まってしまう。あとは、状況がマスコミで発表され、
国を挙げていかに感染を防ぐにかにかかってくる。
国立感染症研究所の大日(おおくさ)康史主任研究官らが行った最新のシミュレーションでは、「海外でパンデミックが発生し、新型ヒト・インフルエンザに感染した一人の日本国民が帰国した後に、そのまま会社や学校へ通い続けた場合には、首都圏に住む全人口の51.6%が感染する。しかし逆に、学校が閉鎖されたりマーケットへの買い出しが控えられ、通勤者も40%減らすという最善の方法がとられた時には、感染者は9.5%に抑えられる」となっている。
10%以下ならば、従来型のインフルエンザと、感染率だけならほぼ同じである。致死率が80%近くあると言われているので、この場合でも100万近い死者は出てしまうことになるが、50%以上が感染しその被害が全国に広まることを考えると、政府や行政機関の対応がいかに大事であるかが分かろうというものである。
いざ発生した場合の対応策
感染という面から考えて、なんと言っても人型インフルエンザの最大の脅威は、免疫を持つ人間がこの世に存在しないということにある。言い方を変えると、個人の体力、免疫力、その他の個性に関係なく、この新型ヒト・インフルエンザのウイルスH5N1型に接した人は、必ず感染する、うつるということだ。
従って、人型インフルエンザ発生のニュースが流れたら、先ず第一になさねばならないことは、人と接触することを控えることである。今回の政府広報でも、どうしても必要なとき以外は外出を控えて下さいと呼びかける
一方、国や自治体も、学校や保育施設の臨時休校、集会やコンサートの自粛、公共交通機関の利用自粛などを呼びかけますと述べている。
お子さんをお持ちの方は、通常のインフルエンザと違い、パンデミックが発生した場合には、まだ一人の患者が出ていなくとも、学級ではなく学校全体を閉鎖せねばならなくなり、その期間も、最大では6
ヶ月から8ヶ月ほどに達することを考えておく必要がある。
それゆえ、子供が家の中で長い間過ごさねばならなくなる可能性が大きいので、
精神的ストレスを起こさないように室内ゲーム機だけでなく、たくさんの本などを用意しておかれたらどうだろうか。
マスクは役に立たないことはないが、決して万能でないことも肝に銘じておく必要がある。専門家は高機能のマスクをしていても、電車通勤やバス通勤においては、他の乗客から基本的に2メートル以上、最低でも1メートル以上は離れていないと、パンデミック下では感染の危険が高くなると指摘している
からである。
N95、N99、N100といった感染防止能力の高い高機能マスクもあるにはあるが、これらの医療用マスクは、呼吸が苦しくなるまでの時間が20分ほどしかないので、日常生活には向いていない。
政府広報が公共交通機関の利用自粛などを呼びかけているのは、マスクだけでは完全な予防ができないからである。通勤者の激減によって、電車やバスがガラガラ状態であるなら別だが、その保証がない限りは電車通勤やバス通勤はできるだけ避けた方がよさそうである。
そこで問題になってくるのが、食糧や日常品の確保である。かねてから私が申し上げているように、最低2週間から20日分の食糧・日常品、それにその家庭ごとに必要なものを買いだめし、保存しておくことが肝要である。以下に必要例を記しておいたので、参考にして頂きたい。
新型インフルエンザが発生した場合、そのH5N1型ウイルスの
菌を日本が入手してから、新しいワクチンが出来るまでに、およそ半年の日数かかるからことを考えると、2週間や20日分と言わずに、できるだけ多くの備蓄を心がけておいた方がよさそうである。
備蓄一覧
【食料】(長期保存可能なものが基本)
■主食類:
米、乾麺(そば、ソーメン、うどん)、切り餅、コーンフレーク・シリアル類。乾パン
■各種調味料
■その他:
レトルト食品、冷凍食品(停電に注意)、インスタントラーメン、缶詰、菓子、ミネラルウォーター、ペットボトルや缶入りの飲料
【日用品・医療品】
■常備品:
常備薬(胃薬、痛み止め、その他持病の処方薬)、絆創膏(大・小)、ガーゼ・コットン(滅菌のものが基本)、解熱鎮痛剤(アセトアミノフェンなど)
※薬の成分によっては、インフルエンザの症状を増幅する恐れがある。購入時に医師・薬剤師に確認が必要。
■インフルエンザ対策の物品:
マスク、ゴム手袋(破れにくいもの)、水枕・氷枕(頭や腋下の冷却に用いる)、漂白剤(次亜塩素酸。消毒効果が期待できる)、消毒用アルコール
■通常の災害時のための物品:
懐中電灯、乾電池、携帯電話と充電キット、携帯ラジオ・携帯テレビ、カセットコンロ・ガスボンベ、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、キッチン用ラップ、アルミホイル、洗剤(衣類用と食器用)・石けん、シャンプー、保湿ティッシュ(アルコールのあるものとないもの)、生理用品、ビニール袋(汚染されたごみの密封用)
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前回の「忍び寄る脅威」でも書いたように、私は、人型インフルエンザによるパンデミックの発生は、年内は発生する可能性が低いと考えているが、ある予見者は今年の秋から年末にかけて若者たちが不思議な病気で次々となくなっていく場面を見せられている。
新型インフルエンザは中高齢者よりも若年層に死者が多くなると予想されていることを考えると、予見者の見せられたのが、新型インフルエンザによるパンデミックの情景だった可能性は高く、もしかすると、私の予想より早めに発生する
のかも知れないので、用心は欠かさないでおいて欲しい。
また、これからは
、ビジネスや調査研究などでやむを得ない場合以外は、海外旅行はできるだけ控えることをお奨めする。特に中国や東南アジアの旅行は危険である。万一、お出かけになる場合には、
日本政府の意向で航空便の離発着が止められ、現地での長期の滞在や、病院で一人寂しく療養する覚悟はしておく必要はありそうだ。もちろん、20〜30枚のマスクの携帯は必須である。
それと、もしもH5N1型ウイルスに感染した場合は、潜伏期間が短くて2日ほど、長いと5日ほどになるので、帰国したら、最低でも3日ほど、できれば1週間、自宅にこもって症状が出ないのを確認してから出社したり学校へ行く
位の余裕を持って、お出掛けになって欲しいものである。
家族のことが心配なら、空港から家に直行せず、ホテルに4〜5日宿泊して様子を見る位の覚悟が必要かも知れない。中国や韓国、東南アジアなどに出向いた際には、なおのことである。縁あってこのHPをご覧になった方は、備蓄にしろ、海外旅行にしろ、「転ばぬ先の杖」を肝に銘じておいて欲しいものである。