ユーロ崩壊の予兆
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9ヶ国の国債格下げでユーロ17ヶ国の分裂への第2幕が始まった
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しばらく平穏を保っていた欧州諸国の財政危機とユーロ危機が再び大きく揺れ始めた。きっかけは格付け会社S&P社による、欧州9ヶ国の国債格付けの一斉引き下げであった。既に予想されていたこととはいえ、実際に発表されるとやはりショックは大きい。
なんといっても一番の打撃は、フランス国債のトリプルA(「AAA」)からの格下げである。これまで、ギリシャやイタリアのデフォルト(債務不履行)を救うべく、欧州金融安定化基金(EFSF)の融資額の引き上げや欧州安定メカニズム(ESM)の立ち上げなどにドイツと一緒に主導的役割を果たしてきたフランスだけに、影響は深刻だ。
お膝元に火がついたら、フランス国家の影響力やサルコジ大統領の発言力も弱まらざるをえなくなってくる。現在3%前後で推移しているフランスの10年ものの国債金利が4%、5%へと向かうことになれば金利の支払い増で、フランスの財政そのものが危機的状況を迎えることとなるからである。
欧州金融安定化基金が借り入れようとしている43兆円の資金の36%に当たる約15兆円を保証したり、欧州安定メカニズムの49兆円の29%、14兆円を拠出しようとしているフランスが、今回の格下げによってそれが不可能となり、さらなる基金の上積み困難となれば、あとはドイツに全てのお鉢が回ってくることになる。その結果、これまでスクラムを組んできたドイツとフランスとの協調が今まで通りに行かなくなってくる可能性が大である。この点が私が一番懸念しているところである。
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国債格下げでサルコジ大統領の発言力は弱まった (ロイター)
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昨年の秋口からこれまで、ユーロ圏諸国の財務相会議や首脳会議が開かれる度に、あれやこれやと債務危機の安定化に向けての対策が打ち出されてきた。また、イタリアやスペインをはじめとする財政危機国のトップが総入れ替えとなり新たな政権が誕生した。そうした面だけを見ていると、一見危機は収拾の方向に向かっているかのように思われてくるが、決してことはそんなに順調に推移しているわけではない。
その一例が、EUと国際通貨基金(IMF)がギリシャに支援をするための前提条件としている、ギリシャ政府と投資家との間での債権の50%カットオフに関する論議が一向に進んでおらず、話し合いの仲介役を務めてきた国債金融協会(IIF)は13日交渉の中断を発表している。
となると、次の危機はギリシャが3月までに迎える1兆5000億円の国債の借り換えができるかどうかという点にかかってくる。もしも政府と投資家との間の交渉が頓挫されたままで、債務不履行が発生するようなことになれば、イタリアやスペイン、さらにはフランスの国債もされに売られ、10年物国債の金利の高騰は必至となる。
しかし、これから先もあれやこれやと手を打って債務危機は先延ばしにされることと思われる。だから今回の格下げで一気に火の手が上がる可能性は低いが、頼みのドイツとてGDPのマイナス成長が予測されており、債務国の置かれた状況は更に輪をかけて深刻となってきていることを考えると、デフォルト国家の出現とユーロ破綻に向かって一歩一歩近づいていることは確かである。
歴史は繰り返すという。2012年末までに70数年前の世界大恐慌が、それ以上の状況で再現される可能性は更に深まってきたようである。
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