預金引き出しが始まったギリシャ
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6月17日の総選挙の結果がユーロ離脱のきっかけとなるかもしれない
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ギリシャの財政危機が最終段階に向かって動き始めた。先の総選挙の結果「反緊縮財政」を掲げた急進左翼進歩連合が票を伸ばしたため、大統領の調停工作も失敗し、議会で多数を占める連立政権が誕生できなくなってしまったからである。その結果、来月17日に再び選挙が実施されることとなった。
このままで行くと、ギリシャのユーロ圏離脱は避けて通れそうもないようである。ギリシャ国民の多くがユーロからの脱退には反対であることが伝えられているが、新たに誕生する政権が「
緊縮財政」に反対する立場を取ることになれば、欧州連合(EU)に対し緊縮策の押しつけや支援条件の見直しを要求するのは必至である。
しかし、EU側がすんなりとギリシャの要求を受けいれるとは思えないので、予定している財政支援がストップする事になり、結果的にユーロ圏脱退に進まざるを得なくなって来る
はずだ。国民にはそうした事態が予見されているようで、既にそれに対する行動がとられ始めている。それは銀行からの預金の引き出しである。
今年に入ってからの引き出し額は既に100億ユーロ(1兆円)を超してきており、ここ数日は1日だけで8億ユーロ(800億円)という大量の預金が引き出され、銀行の手持ち資金が急激に減り始める事態が発生している。
ギリシャ政府がユーロ離脱を宣言するその日、銀行預金は封鎖され、通貨はユーロから旧通貨のドラクマに移行することになる。その後、ドラクマの対ユーロ比率は
半分近くに引き下げられることになりそうなので、国民は早めにユーロ札を手にしておこうと考えているのだ。
いずれにしろ、もしもユーロ圏離脱の事態となれば、デフォルト(債務不履行)→ ドラクマ復活 →
ドラクマの暴落 →
超インフレの発生へと進む事となりそうである。その結果、多くの銀行が機能不全に陥るためにさらなる倒産や失業が増加し、国民はハイパーインフレ下で一段と厳しい生活を余儀なくされるところとなる。
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ギリシャのデフォルトは世界の格式市場の崩壊に繋がっている
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ユーロ圏諸国の中には、小さなギリシャなど離脱したところで、さして問題ではないという考えがあるようだが、それはとんでもない間違いである。ポルトガルやスペインなどの南欧諸国で同じ道をたどるのではないかという連想が生まれ、
それらの国々にドミノ倒しが発生する可能性が大きいからである。
そればかりか、ギリシャへ大量の融資をしているフランスやドイツ
政府、さらには両国の民間銀行も返済不履行による大痛手を被ることになってくる。心配なのはフランス政府と民間銀行である。
フランスの民間銀行はここ数年ギリシャの企業や銀行に、直接あるいは欧州中央銀行や欧州安定化基金を通じて4000億ユーロ(4兆円)近い額を融資している。こうした多額の融資が返済不可能となってくると銀行の倒産が発生し、経済の混乱が生じることは避けられそうにない。
こうした負の連鎖はいったん始まると止めようがなくなってくるのが常である。その結果、経済崩壊の波は南欧諸国へ、ユーロ圏全体へ、アメリカへ、中国へ、日本へ、世界全体へと広がっていくことになる。そして
その波及のスピードは想像以上になるはずだ。
一旦ギリシャに火の手が上がったら数ヶ月の内に、世界経済全体が炎に包まれることになる可能性が大である。やがてその大火は現在の貨幣制度
、金融制度の崩壊へと向かうことになる
。早ければ6月がターニングポイントとなるかもしれない。その予兆が世界の株価の下落に見え始めてきているからである。
そうした動きをなんとしても避けようとする人々は、これから先ありとあらゆる手段を通じて火消しに務めることだろうが、既に昨年秋から、欧州安定化基金やIMFの増資など手を打ち続けてきた後だけに、
残された手段は少なく対応は容易なことではなさそうである。明日から始まるG8会議などさして役に立ちそうにない。
いずれにしろ、世界経済の行方は6月17日のギリシャ選挙の結果次第ということにな
りそうだ。失業率が20%を超えているギリシャ国民がさらなる財政削減という苦渋に耐える道を選ぶか、ユーロ圏離脱により混乱が待ち構える
とデフォルトへの道を選ぶことになるのか、その選択の時はわずか1ヶ月後に迫っている。
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