米連邦準備理事会がJPモルガンの 1,000億ドル(8兆円)のポジションのデータを公開した
米連邦準備理事会(FRB)のウェブサイトに公開された公式のデータから
JPモルガンの取引についての詳細が明らかとなったが、その巨額な取引の実態に驚きの声もあがっている。
米国の銀行の四半期ごとにFRBに報告するデータによると、JPモルガンのクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の第1四半期末時点でのポジションは、840億ドル(6兆7千億円)のネットロングだった。これは2011年末時点の100億ドル(8,000億円)の8倍強にのぼる。
そのうちで、期間が1年かそれ以下の短期CDSは540億ドル(4兆3千億円)のネットショート。5年以上のCDSは1020億ドル(8兆1千億円)のロング。2011年9月末はそれぞれ36億ドル(2,800億円)、240億ドル(1兆9千億円)だった。いずれも、短い期間にポジションが急
拡大している。
これは、JPモルガンの規模の大きさを考慮しても、ポジションの変動が大き過ぎると指摘する専門家が多い。そして、このポジションの大きさから、これらを解消するには相当の時間がかかると指摘する。(訳文は
ブログ「In Deep」より拝借)
CDS (クレジット・デフォルト・スワップ)とは何かというと、企業の債務不履行にともなうリスクを対象にした金融派生商品で、対象となる企業が破綻し
、金融債権や社債などの支払いができなくなった場合、CDSの買い手は金利や元本に相当する支払いをCDSの発行会社から受け取るという仕組みの商品である。
つまり、これは民間企業に投資している人が掛ける一種の保険のようなもので、いわば2008年に世界的な金融危機を起こしたサブプライム・ローンの兄貴分のようなものである。サブプライムは個人の破綻を前提にしているが、CDSはその対象が企業
というわけである。
問題はこのCDS商品市場の大きさである。国際スワップデリバティブズ協会によると、世界の
CDS市場は2007年末には債務の額面残高が62兆ドル(5000兆円)に達しているというから、その規模がとてつもないほど巨大であることが分かる。
現在はそれをさらに上回っているはずだ。
今世界の経済がギリシャからスペインへと拡大する欧州債務問題、さらには世界最大の債権国米国の景気後退とデフォルトの大波に襲われようとしていることを考えると、
どこかで一旦堤防が崩れると、あれよあれよという間に世界中が金融危機という大洪水に見舞われる危険性は大である。
その結果、国家破綻 → 銀行破綻 →
民間企業破綻へと進んだ時には、5000兆円という化け物のような負債の多くが支払いの対象と
なってくることになり、その時には、モルガンをはじめとする発行元の投資銀行はすべて破綻し世界の金融市場は一気に地獄と化すことになる。
こうしてみてみると、今回の JPモルガンの
1,600億円の損失など氷山の一角に過ぎず、デリバティブ商品全体の抱えたリスクから見れば些細なものであることが分かる。市場にはこのCDS以外にも
一般の人間には考えつかないような様々なデリバティブ商品が出回っており、世界市場は想像を絶する巨大な賭博場と化しているのである。
一般市民が1000円、2000円を切り詰める日常生活を送っている一方で、金儲けに走る輩たちはこうした信じ難い市場を構築し、そこで丁半博打を打って来てい
たのである。今回のJPモルガンの1600億円損失のニュースは、資本主義経済が産み落としたデリバティブと呼ばれる金融商品が持つ恐ろしさの一端を
、少しばかり垣間見せたに過ぎないのだ。
今多くの人たちが、こうしたきちがい沙汰の金融システムが限界に達しようとしていることを感じ始めているのは、デリバティブという破滅的な自爆装置が動き出したことに本能的に気づき
始めたからである。張り手が丁半二手に分かれている内は良いが、どちらか一方に偏ったときにはサイコロの目の出方次第では賭博場は火に包まれることになる。それが今起きようとしている
ことのだ。
リーマン・ショックを引き起こしたサブプライムローンは、米国国内の住宅ローンを対象にした商品であったが、今爆発しようとしているCDS
(クレジット・デフォルト・スワップ)
は世界各国に跨がっており、そこに火をつけようとしているのが欧州の財政危機であることを考えると、世界規模の金融市場の崩壊
が目の前にちらつき出したことが分かるはずだ。
金の亡者たちが産み出したバーチャルな金融市場の崩壊は、世界を真っ赤な炎で包むことになる。我々はそう遠からずして、その燃えさかる炎の中から顔
を出す奇っ怪な妖怪の姿を見ることになりそうである。