スペインの財政危機が火を吹き始めて来たことは、6月3日付けの「世界大恐慌の予兆」に記した通りである。あれからわずか10日ほどのうちに、民間銀行の危機を
スペイン政府にはカバーできないと見た欧州連合(EU)は1000億ユーロ(10兆円)にものぼる巨額の融資を決定したばかりである。
これで、EU(欧州連合)や欧州中央銀行などからの融資は、2010年11月のアイルランド(675億ユーロ(約7兆円))、
2011年5月のポルトガル(780億ユーロ(約8兆円))、2010年5月と2012年3月のギリシャ(
2400億ユーロ(24兆円))に次いで、スペインもとうとう4番目の被救済国の仲間入りしたことになる。
つい先日まで、IMFやEUからの融資は受けないと公言していたラホイ首相であったが、国家財政が火の車状態の政府に銀行救済の余裕はなく、10日にはあっけなくEUからの支援を受け入れることを表明。その結果いったんは沈静化に向かうかと思われた金融情勢もわずか1日しか持たず、再び暗雲が漂い始め
るところとなってしまった。
銀行救済の目途がついたものの、各地方の自治州が公共事業などで膨らませた財政赤字もスペイン政府の大きな重荷になっていることが、明らかとなって来たからである。南欧諸国の借金地獄には2通りあって、ギリシャやイタリアは政府部門
、またスペインやアイルランドは銀行や地方自治体が多額の借金を抱えている。
ここに来て、スペインでは銀行だけでなく、政府の財政赤字も危機的状況に達していると見た市場は、政府の発行する国債を売り始めた。その結果、格付け会社ムーディーズの3段階引き下げ発表と相まって、数日前から国債の金利が危険水域の7%の大台に乗り始めた。
ギリシャに並ぶ52%前後の若者の失業率や個室ベッド770、診察室200、手術室36という建設費が300億円を肥える巨大病院の工事が3割を超えたところでストップしている現状を
見ると、政府の危機的状況が絵空事でないことが分かる。
そんな中、今度はイタリアでも国債金利が上昇し始め、6%を超えてきた。モンティ首相は危機的状況だとして、緊縮財政を進めるためにも2大政党の団結が必要だと訴えているが、ギリシャやフランス同様、緊縮反対の急進左翼進歩連合が支持率を広めてきており、金利上昇を抑える重しとなって来ている。イタリアも若者の失業率は35%台に達しており、ギリシャやスペイン
に続く高失業率となって来ている。
こうした状況下にあるものの、スペインやイタリアがすぐに国家破綻(デフォルト)に至ることは考えにくいが、問題は17日(日本時間の今夜)に迫ったギリシャのやり直し総選挙の行方である。緊縮継続の与党政権、緊縮反対の急進左翼政権、どちらが勝利するか予断を許さない状況にあるようだが、もしも急進左翼が勝利する
ようなことになれば、ユーロ離脱問題が発生するだけでなく、同様に財政悪化に苦しむスペインとイタリア両国に危機的状況が波及する可能性
が大きい。「次のギリシャ」が意識されやすくなるからである。
一方、旧与党政権が勝ったにしても連立政権が樹立されない限り、再々選挙となる可能性があり、混迷は深まるばかりである。いずれにしろ、こんな状況がいつまでも続くはずがない。ものには限界があるからである。その限界の期限がそう遠い先のことでないことは、投資家ジョージ・ソロス氏やラガルドIMF専務理事の発言が示している。
ソロス氏は3ヶ月以内にしっかり手を打たないと火の手は上がると発言しており、ラガルド専務理事はそこまで持たないかも知れないと、さらに厳しい意見を述べている。先ずは、世界の市場は明日発表されるギリシャ総選挙の結果を
固唾を呑んで待つことになりそうだ。