世界に脅威を与える国防費の増加
中国の国会に当たる全国人民代表大会が開かれているが、そこで発表され注目されているのがドル換算で初めて1000億ドル台に乗った2012年度の国防費である。
1064億ドル(6700億元ー8兆7000億円)、これは世界第2位の国防費ということになるわけであるが、世界が懸念しているのは、世界経済の落ち込みの中で11%の
延びを示している点と、実際の費用が公表の数値と大きく異なる点である。
朝日新聞が中国高官の証言として述べているのは、兵器の研究費や外国から特殊な備品を買うといった装備調達費などが含まれておらず、実際の国防費の数値は公表の1.7倍に達し日本円に換算して15兆円近くに達するものだという点である。
ステルス戦闘機や空母の配備に向かっている最近の中国軍の現況を見れば、膨大な国防費が振り向けられていることはすぐに理解できるところである。それにしても、掲載したグラフに示された1988年以降の放物線を描いた国防費の増え方は米国だけでなく、周辺各国に脅威を与えるに十分である。
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国防費を上回る治安対策費
私が今回の全国人民代表大会で発表された数値で驚かされたのは、実は治安対策費の方であった。その数値は伸び率、実数値ともに国防費を上回るもので、対前年比11・5%増の700億元(約9兆円)という膨大な数値であった。
国防費が軍艦や戦闘機という高価な戦備品を備えるために、費用がかさむことは理解できるが、治安対策費というのはあくまで、国内におけるデモや騒動の
鎮圧等に使う経費であるから、国防費に比べたら桁違いの小さな数値であるのが一般常識である。それは先進国の数値を見れば一目瞭然である。
ところが、この国内の治安のための予算が国防費を上回っているというのだから驚いてしまう。一体それはなにゆえであるのか? 誰もが疑問に思うはずだが、その答えはしごく簡単である。それだけ国内で騒動や暴動が頻発しているからである。私が大紀元日本社や海外のマスコミが伝えるその種のニュースを時々HP上で掲載しているが、それはほんの一部に過ぎず、実際には中国中で大変な数の騒動が頻発しているのである。
中国政府の統治に反対するチベット族や分離・独立を目指すウイグル族との間の衝突は、我々が知らされているものとは遙かに違って、その頻度だけでなく、
個々の衝突は内乱に発展する一歩手前の状況に至っているのである。取り締まりによる死者や焼身自殺者のニュースを垣間見れば、悲惨な状況が想像できるというものである。
さらには、工業用水の垂れ流しや鉱山や林野の乱開発による環境汚染、地方政府に蔓延している役人の汚職による強制撤去や工場誘致、・・・・・こういったことに対する人々の怒りや不安が頻発する抗議行動へとつながっているのである。
6日付けの大紀元日本社のニュースが、その一端を伝えている。一部を転載させて頂いたので、詳細は大紀元日本を見て頂きたい。
セメント工場汚染に抗議する村民が警察と衝突=広東省
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【大紀元日本3月6日】先月末、広東省梅州市では2月27日朝、セメント工場による環境汚染に抗議する村民と警察の間で衝突が発生し、多くの村民が警察の暴力的鎮圧により負傷した。
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村民の訴えによると、問題のセメント工場「皇馬セメント」は07年ごろに生産が始まった。工場からは騒音が鳴り続け、大量のガス、粉塵が排出されているため、近隣の住民の健康にとって脅威である。汚水も未処理のまま直接排出されるため、魚やエビは食べられなくなり水も飲めなくなったという。村民は何度も現地政府に状況を訴えたが、最終的には全て未解決のまま棚上げにされたため、工場出入り口を封鎖する抗議活動を行い、メディアが問題を取り上げることを望んだのだ。
現在、村の家屋の上、バルコニーには粉塵が積もり、窓は開けることが出来ないうえ、農作物も汚染を受け売り物にならない状態だ。空気中の汚染も深刻で、村民は咳や肺などの疾病を引き起こしている。騒音が酷く、村民の休息にも影響を及ぼしている。水は重金属に汚染されており、川に流れ込んだ排水により田畑や魚などに被害が出ている。
事情に詳しい人物によると、同セメント工場は梅州市の市委員会書記が資金導入しており、同市幹部の多くが株を所有している。だから村民からの訴えが解決されないのだという。
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