これまでにも何回となくお伝えしてきている中国の大気汚染。北京オリンピックを境に大きく改善されたかの印象を与えてきていたが、実のところ、改善は一向に進んでおらず、更にひどくなっているのが現状のようである。
昨年の年末、北京の米国大使館が「クレージーなひどさ(crazy
bad)」としてネット上で発表した数値は、汚染評価の最高水準500ポイントを超えものであった。それは、大気汚染の指標として国際的に注目されている微粒子状物質「PM2・5}の測定値をもとにした数値である。
これを受けて、北京市当局はそのような高度汚染は測定されていないと反発したが、北京市民が実感している汚染状況に合致していないとして、市民の間から、当局の情報隠しを疑う声が高まってきていた。
米国北京大使館の発表した数値と北京当局のそれとの間の開きは、測定する汚染物質の大きさによるものであった。中国当局がこれまでに公表してきたのは、PM10以上の大きな粒子のの数値を元にしてきていた。
しかし、汚染防止の意味からすると、これでは役に立たないのが実情である。細かい微粒子「PM2・5」はディーゼル車などから排出される粒子で、細かいだけに体内に深く入り込んで健康被害が大きくなるとされているからだ。したがって、PM10の粒子の測定結果では、健康被害に対する警報としては意味をなさないのである。
中国当局は、国民や市民の健康を案じるより先に、自分たちの身の安全、地位を守る方を優先させるために、こうやって汚染の実態を意味のない数値を使って誤魔化してきていたというわけである。
現実、このところ大気汚染が原因とみられる「白い霧」の発生は次第にひどくなってきており、北京市内では午前9時を過ぎてもヘッドライトをつけて走る車が多くなってきている。また、北京を発着する多数の飛行機が運航を中止したり、大幅な遅れが出たりしている。
「白い霧」の発生は、異常なまでの車の増加と周辺の工場から発生している排ガスの流入によるものと思われるが、世界の覇権国家になろうとしている国の首都である北京市の大気汚染指数状が「重度汚染」に分類される500ポイントを超して、定義範囲外となる日が日常化されているようでは、恐ろしくなってくる。
市民の汚染隠しの声を受けて、21日、北京市当局は微粒子状物質「PM2・5」の測定値の公表を始めたが、市当局は、複数の観測点の一日の平均値として発表したりなど、ごまかしの姿勢は変わっていないようなので、市民は毎時間のデーターをネット上で細かく伝える米大使館の情報の方を信頼し、注目しているようである。
問題は、大気汚染の情報隠しは中国当局の国民、市民騙しの一つに過ぎないという点である。大事故が起きれば死者の数は責任が追及されない数で抑えられ、暴動が起きれば平穏を装った場面が放送され、干ばつや水害が起きれば被災者の困窮状況など写さずに、中国軍兵士の復旧活動の様子を放映して、その実体をひた隠しにしてきている。
数日前から、四川省でチベット族住民と中国政府の衝突が激しさを増してきているようである。外部との接触が厳しく制限されているために、詳細は伝わってこないが、チベット自治区などと接する山間地では連日大規模なデモが発生しており、軍の発砲による死者も出ているようである。
53年前、ダライ・ラマ14世の中国軍による逮捕劇騒動の発生した3月には、毎年、チベット住民の民族意識が強まるだけに、大規模なデモや暴動の発生によって、僧侶や住民たちに多数の死者が出るのではないかと心配である。