このところギリシャを始めイタリアやスペインの財政危機に対する不安から、ユーロ安が進む一方、ユーロ諸国の株価が下落し、世界的な株安に向かうのではないかと
いう懸念が広がっている。
ギリシャの債務不履行(デフォルト)については取りざたされてから久しいが、2010年5月に欧州中央銀行やIMFからの1100億ユーロ
(11兆7000億円)の資金援助が決まり、既に700億ユーロ(7兆4000億円)が支給されて来ている。それでもなお資金不足が続いており、
急ぎ追加支援がないと10月はじめにはデフォルトが発生すると言われている。
700億ユーロが支援されて来ているのに、なにゆえデフォルトの可能性が強まってきているのか? ギリシャの経済成長率が予想より低いこととや
ギリシャ特有の脱税が相も変わらず行われているために、財政再建に取り組みながらも、税収入が一向に増えてこないからである。因みにギリシャの経済成長率は昨年はマイナス4%、今年はマイナス5〜6%
にまで落ち込むのではないかと言われている。
それでは、ギリシャのデフォルトはすぐに起きるのか? 私の答えはNO!である。今年の7月に1090億ユーロ(11兆6000億円)の新たな資金援助
(新金融安定基金)が決定していることを考えると、こうした資金の力を借りてすぐにデフォルトに陥ることは回避されるものと思われる。
しかし、フランスやドイツなどEUの主要国から、財政立て直しに対する実行が進まないギリシャに対して、自分たちの税金を使うことに不満の声が上がってきていることを考えると、いつまでも支援を続ける
ことが困難であることは間違いない。
問題はドイツやフランス政府が国民の不満の声に押されて、「債務不履行(デフォルト)やむをえず」と判断するまでどれだけの期間、支援が続けられるかという点である。私は
これから先しばらくは欧州中央銀行とIMFによる融資というカンフル剤投与によって、来年の春先から夏の終わり頃まで
は延命されるのではないかと考えている。
ただし、1090億ユーロの新金融安定基金(EFSF)はEU17カ国の全ての国が国会で条約の批准を行う必要があるため、万一、批准が出来ない国が1ヶ国でも出た場合には一気に支援は不可能となり、ユーロ共同債の発行でも行われない限り、デフォルト突入という事態が発生する
ことになる。また、ギリシャ政府の財政削減策がギリシャ国民に受け入れられずに、大規模なゼネストや暴動に発展した場合も同様である。
その時には、ギリシャ国債を大量に保有しているフランスをはじめとする欧州の銀行の何行かは、第2のリーマン・ブラザースとなりかねない。
現に、今回の危機でフランス第2位のソシエテ・ジェネラルなど2つの銀行が格付け会社ムーディーズによって信用度を引き下げられている。
すでに2行共に時価総額が半減しているからだ。
イタリア、スペインの財政危機
イタリアとスペイン、両国の財政危機もかなり深刻な状態に来ている。財政規模がギリシャに比べて遙かに大きいだけに、もしもデフォルトとなればその影響は甚大である。2010年の5月にはギリシャだけでなく全ての
ユーロ圏の財政難の国家に対する融資額として7500億ユーロ(80兆円)の枠取りが決定されており、既にアイルランドやポーランドに対して融資が実行されている。
また、2011年7月には、新金融安定基金として新たに4400億ユーロ(47兆円)の準備枠が決定している(これも各国の国会での批准が前提である)が、これはイタリア、スペインの財政危機を支援するのが目的の基金である。
従って、厳しい財政事情にある両国ではあるが、この4400億ユーロの支援があれば、ギリシャと同様、しばらくはデフォルトに陥る事態は避けることが出来そうである。
また中国やブラジル、インド、ロシアのブリックス(BRICs)諸国から国債の購入などの支援が発表されているのも安心感を与えている。
しかし、遠からずしてギリシャのデフォルトが発生してその影響がスペインやイタリアへと波及、また、支援国たるドイツやフランス国民からの不満の声が高まって4400億ユーロの支援やユーロ共同債の発行が行き詰まった時には、一気に
デフォルトへと突入する可能性が出てくる。
延命策は破綻時の衝撃の大きさの裏返しでもあるだけに、その時には、世界的な株価暴落が発生し、大恐慌へと突入することになる。それでは、その時期はいつか?
その時、世界の株式市場はどのような形で終末を迎えるのか? また、経済崩壊の裏にはいかなる力が働いているのか?
そうした点については、チェコのミルカ・パヴェルコヴァさんから世界経済の先行きについてのメッセージが届い
ているので、その報告と併せて近いうちに改めて書く予定である。