米国の凋落は世界の凋落
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世界の覇権国家米国の凋落が始まった。(ロイター)
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心配されていた格付け会社スタンダード・プアーズ社(S&P)の米国債の格下げが、世界の証券市場を揺るがし始めた。
昨日8日、世界が注目する中、最初に市場が開いた東京市場が200円近い下げを見せると、堰を切ったかのように中国市場からヨーロッパ市場へと荒波が押し寄せ、混乱の元凶となったニューヨーク市場ではダウ平均が5.6%、ナスダックは6.9%とリーマンショック以来の最大の下げを記録するところと相成った。
サブプライム問題から発した2008年秋の株価暴落はショッキングではあったが、カラッとした面があった。しかし今回の急落には暗い絶望感が漂っている。なぜなら、世界の覇権国であった米国の凋落が背景にあるからである。
世界中から借金に借金をしまくり、その負債総額は国民一人あたり700万円、5人家族であるなら1家族3500万円に及ぶ負債を抱え込んでしまった米国は、これから先、国民の血のにじむような困難を伴わない限り、再建が不可能なところまで来てしまったのである。
先のリーマンショック後には、米国政府は日本の国家予算を上回る70兆円近い資金を金融機関や自動車会社の救済に使い、景気の立て直しに力を注いだ。しかし、それがさしたる効果を産まなかったことは、実質的な失業率が10%を大きく上回り、大卒の就職率
が30%以下に落ち込んでいる現状を見れば明々白々である。
今回はこうした民間の経済悪化だけでなく、救済する立場にある政府そのものが火の車であることが明らかとなったのだから、政府による財政支援は期待するわけにはいかない。もしも
、そのようなことをしたら、世界は一気に米国を見限ることになる。銀行から融資を断られた人間が、サラ金に手を出すのと同じことになるからである。
国債評価の切り下げに反発するオバマ大統領の演説が行われている最中にもかかわらず、株価が下げ続けたことが、如実にそれを物語っている。私が今回の株価の急落は「暗い絶望感が漂っている」というのはそのためである。
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寂しげに去るオバマ大統領の姿が、今の米国を象徴している (ロイター)
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我々は、今回は単なる経済の悪化という側面だけでなく、米国という世界の覇権国家の凋落という悲しむべき一面を見せていることを見逃してはならない。歴史を振り返れば、スペインやギリシャが凋落した後、英国がそれに代わって覇権国家となり、その後
、英国が衰退した後、米国が表舞台に登場し今日に至っている。
このように、これまでは世界の覇権国家が衰退するとその都度、次なる覇権国家が台頭して来ていた。誰もが考えるのは、今回、米国の後を引き継ぐのは中国である、ということである。しかし、その中国の今の社会情勢はそれに応えるられる状況ではない。
経済的な発展はめざましいが、国家と国民との間には「不信感」、国民同士の間には「差別」という途方もないほど高い壁が立ちふさがっているからである。それどころか、いつ暴動が起き、共産党政権が転覆するかわからないのが現状である。こんな状態で世界の覇権国家になれるはずがない。
その点は、私のHPの読者には十分理解できるはずだ。だからこそ、今回の経済的危機、財政的危機は暗く絶望的なイメージがつきまとうのである。そして、米国の凋落は世界の凋落でもあるのだ。
米国は「負債中毒を治療」し「収入に見合った生活」を!!
それにしても、先の米国債の格下げが発表された後の中国の反応は、米国国民に相当のショックを与えたはずだ。中国から発せられたメッセージを一言で言うなら、「米国よ、米国国民よ、いい加減に自分たちの背負った借金の大きさに気づき、身の丈にあった生活に切り替えよ!!」というものであった。
日用品をローンを利用して購入するという概念のない中国人にとっては、政府が国債というローンを大量に利用し、個人がカードで収入に見合わないローンをしまくっている状況を見た時、「身の丈にあった生活をせよ!」という気持ちは、分かろうというものである。
米国国債の22%、1兆1400億ドル(90兆円)の国債を所有する中国の言うこととなれば、米国民は何を言われようが甘んじて受けるしかない。ほぼ同じ額の国債を保持しながら、何の苦情も言わない我が国のように、中国は甘ちゃんではないのである。
イタリアとスペインの財政問題が次なる暴落の起爆剤として待ち受けている。読者には、よくよく世界情勢には気を配っておいて頂きたい。
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