シリア情勢と欧州の財務危機に世界の注目が集まっている最中、思いかけないニュースに世界の眼がロシアに向けられるところとなった。今月に行われたロシアの下院選挙でプーチン首相の率いる与党・統一ロシアが惨敗。それに追い打ちをかけるように選挙の不正に対する抗議デモが各地で発生という異例の事態が発生した
からだ。
大統領と首相を務めてきたこの12年、安定した経済成長で国民から絶大の支持を得ていたと思われていたプーチン首相であったが、
楽観視されていた今回の選挙は、どうにか過半数は得ることが出来たものの大量の議席を失うことになった。
この選挙において不正行為が行われたようだと、米国政府が懸念の声を出した時にはまだ世界はそれほど関心を集めていなかったが、先日行われた抗議デモはソ連邦崩壊以来かってない大規模のもの
となり、一気に注目を集めるところとなった。
これまではプーチン体制を公然と批判することは一種のタブーとされてきていただけに、これだけの集会やデモの発生は驚きであるが、中でも驚かされたのは十万人を上回る人々が指導的な人間や組織による動員が行われることなく集まったことである。
その理由を挙げると次の2点に絞られるようだ。
@ 下院選挙で大規模な不正が行われたこと、特に首都モスクワで行われたこと。
A ソーシャルメディアの力が発揮されたこと。
ソーシャルメディアの力というのは、他ならぬツイッターによる情報交換である。中でも今ロシアにはナバーリヌィという天才的なブロガーがおり、彼の反汚職サイトROSPIL(ロスピル)では「与党はペテン師で泥棒の政党」というキャッチフレーズが掲載され、無駄な公共事業や汚職の実体が具体的な資料をもとに告発されている。
(下の写真参照)
プーチン政権下では、これまでテレビを統制下に置くという手段によって、公然と言論統制が行われてきていたが、ツイッターによる情報交換が行われることによ
って不正と汚職の実体が明るみとなり、今までバラバラだった反政府運動が一気に統一化されるところとなったのである。
メドヴェージェフ大統領を隠れ蓑にして独裁的政治を行ってきたプーチン首相であるが、パンを与える代わりに自由を制限するという政策のほころびが、今回の選挙では国民から強い非難を浴びるところとなったというわけである。言うなれば、プーチン神話の終焉である。
いかなる政権も統治期間が長くなれば、不正と汚職がはびこることになる。ソ連邦崩壊から奇しくも20年目に当たる節目の年
、プーチン政権も同様な実体が表に出だしたというわけである。
それでは、プーチン神話が終焉を迎えたこれから先、彼ははどう動くのだろうか? 怪僧ラスプーチンの生まれ変わりと噂されている人物だけにその動きが注目されるところである。次回に続く。