今回のEU条約改正の動きや財政規律を強化する構造改革案の実行は、あくまでも、これから先ギリシャのようなデフォルト(債務不履行」必至の国家を出さないための措置であって、これまでに積み上げてきた財政赤字をなくしたりするためのものではない。
むしろ先のサミットでは財政危機国への支援は後退してしまった感すらある。11月の首脳会議によって決定された財政危機国への支援ための欧州金融安定化基金を4400億ユーロ(45兆円)から1兆ユーロ(105兆円)への引き上げることが
、各国の財政からして困難であることがはっきりしてしまったからである。
そのために、欧州金融安定化基金(EFSF)の後釜に予定している欧州安定メカニズム(ESM)の設立の時期を来年の7月に前倒しし、その規模を5000億ユーロ(52兆円」に増やすことや、各国から集めた2000億ユーロ(20兆円)をIMF(国際通貨基金)に拠出し、その見返りとしてIMFから財政赤字国への融資を引き出そうという、苦肉の策が講じられるところなった。しかし、これでは先の1兆ユーロへの引き上げ額に
は追い付かず、またその時期も遅れてしまうことになる。
格付け会社のムーディーズやフィッチが早ければ今週中にも、ユーロ圏諸国の国債の一斉格下げをほのめかしているのはそのためである。もともと、ギリシャなどの弱小国だけでなくイタリア
政府などの財政危機や、経営不安に陥っている銀行を救おうとしたら、少なくとも2兆ユーロ(210円)は必要だと言われているだけに、今回のサミットで決定した財政支援策は明らかに力不足である。
したがって、このままではこれから先、国債の金利の値上がりやそれに伴う一層の財政赤字の進捗化は避けられそうになく、さらなる支援策、例えばユーロ圏共通のユーロ債の発行や欧州中央銀行(ECB)の国債買い上げ拡大論などが再度浮上してくることは必至である。
しかし、ものには限度というものがあり、ここまで事態が悪化してしまっては、魔術でも使わない限り完璧な安全網の構築など不可能である。それだけに、EU圏の崩壊が避けられないことが、そう時を置かずして明らかとなることだろう。
問題はそれがいつになるかということである。
そうした状況下でありながらも、賭博場と化した世界の金融市場では、私が予測した通り魑魅魍魎どもが国家に次々と対応策を打ち出させ、それを防火壁にして最後の荒稼ぎに血眼(ちまなこ)になっている。
格付け会社による国債格付けの引き下げも、そのための一つの手段として利用されていると考えて差し支えない。
その結果、信じ難いことであるがダウ平均はここに至ってもなお12000ドルの高値圏に留まり、さらに新高値に向かおうとしている。
まさに狂気の沙汰でるが、おそらくこの動きは少なくとも春先から夏場までは続くことになるのではないだろうか。しかし、消えかかったローソクの火は消える直前の一時、大きな炎で赤く燃え上がるものだが、まさに今の灯はそのローソクの残り火である
ことを忘れてはならない。
その残り火を消す嵐が間もなく吹くことになる。遅くとも、1年後の今頃から2013年春先までには、世界経済は断末魔の声を発し始めていることだろう。その叫び声は30年代よりさらに大きなもとなることは間違いない。