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ドイツの景気減速感はユーロ圏に暗雲を呼びそうである。
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債務危機を受けてユーロ圏全域で支出が削減される中、好調な輸出に支えられこれまで域内の成長をけん引してきたドイツ経済がここに来て一気に減速状態になってきた。
ドイツ連邦統計庁が16日に発表した4−6月の実質GDP(国内総生産)速報値(季節調整済み)は前期比0.1%増に伸びが鈍化。大方のエコノミストの予想では0.5%増が見込まれていただけに、成長鈍化が鮮明になったと失望感が拡がり始めている。
著名なエコノミストのアリン・スハウリング氏は、「ユーロ圏経済は年内に著しい低迷が見込まれる」と指摘。「世界景気が冷え込みつつあるとすれば、ドイツでも同様の状況となるだろう」と語っている。
欧州中央銀行(ECB)は先週、昨年5月の国債購入プログラム開始後で最も大規模な買い入れを実施した。イタリアとスペインの国債利回りが投機的な動きで再び上昇するのを防ぐには、さらに購入を続ける必要があるが、7月以降,ドイツ経済がマイナス成長に転じるようならば、国債買い入れをいつまでも続けることが困難になってくる。
持続可能な政治的解決策が不在の状況では、ECBによる国債購入だけが実行可能な唯一の応急処置だけに、最大の支援国ドイツの景気減速感はユーロ圏に暗雲を呼び込みそうである。
因みにドイツの失業率は7・1%
で、米国の9・1%やイギリスの7・8%に比べれば比較的低いものの、決して良好とは言えない。就職や生活に不満を持つ過激的な人間が出てもおかしくない状況である。それを示唆するような事件が昨年7月からすでに発生している。ベンツやBMWといった富と権力の象徴である最高級車を主に狙った放火事件である。
ベルリンだけでも今年に入ってからの総計はすでに321件に達しており、18日未明に発生した無差別車両放火事件はニュースでも大きく取り上げられ、メルケン首相も連邦刑事局60年記念式典で強い懸念を表明している。こうした陰湿な行為は世の中が暗い時代に向かう前兆ともとれるだけに、心配である。
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ドイツのベルリンでは、車の放火がうさ晴らしになりつつある。狙う車両も
高級車から一般車両へと移りつつあるようだ。まさに無差別車両放火事件である。
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次に掲載するイギリスの暴動や放火は、車両放火事件を上回る大規模のものとなっている。
イギリスの暴動
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こうした光景を首都ロンドンで見るとは思わなかっただけにショックは大きい
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6日、警察官による住民射殺事件を契機に始まったロンドンやバーミンガムの暴動はイギリス国民に大きな衝撃を与えている。放火により次々と焼かれる大型店舗や商店からの略奪の映像を見ていると、北アフリカや中東の暴動と見間違うほどである。とても来年にはオリンピックが開催される国の情景とは思えない。
暴動の伏線は若年層の高い失業率と昨今の緊縮財政であるとされている。イギリスは昔から若年失業率が比較的高く若者は常にフラストレーションをためる傾向にあったところに、キャメロン政権による急激かつ多大な緊縮財政策がさらに失業率を高めるところとなり、油に火をつけるところとなったようである。
これから先、同じことがギリシャやスペイン、ポルトガル、イタリア、アイルランドと次々と起きてくる可能性がある。欧州中央銀行(ECB)の国債買い取りの絶対的な条件が財政緊縮をさらに進めることであるからである。国家のデフォルト(債務不履行)か不満お酢の暴動か、二者択一が日に日に迫る欧州情勢である。
それにしても、商店街から店の品物を略奪する若者の姿を写した上の写真や、商店街が放火で焼け落ち、路上では車が横転している下段の写真を見ていると、遠からずしてこうした情景が日常化することになりはしないかと,戦慄が走る。世界経済崩壊の震源地である米国でも,いつこうした映像が現実の物となるかもしれない。
INGグループの先進国市場債の戦略責任者を務めるパドライク・ガービー氏(アムステルダム在勤)は「。ECBは国債買い入れをやめることができないことにやがて気付くだろう」to
述べている。