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貧富格差に対する怒り

 


 
 


誤った貨幣制度の温床・ウォール街を占拠せよと呼びかけるデモ参加者

 

 

米国ニューヨークのウォール街近くで始まったデモはニューヨーク市警による逮捕者が出た後も衰えるどころか一段と勢いを増してきている。「ウォール街を占拠せよ」を合い言葉に、 ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアの力を借りて全米各地に広がり 既に100を超す街に広がっており、とうとう昨日は首都ワシントンの議事堂前でも行われるところとなった。

米国では、若者によるデモはこれまでも日常茶飯事的に行われてきてはいたが、今回のデモはそうしたものとは大きく一線を画している。組織的な背景がない点と、芸能界や経済界からも支持を得ている点、期間が長く、全国的に拡大している点 などが異なっているのだ。

今回のデモの一番の特徴は、ウォール街で狼煙(のろし)が上がったことと、「貧富の格差」を生み出している現代の経済システムや政治への不満を訴えている点である。それは、まさに私が前回3回シリーズで述べた今日の貨幣制度とその制度に基づいた経済 システムに対する不満の表れでもある。

金利という魔術により金(マネー)が金(マネー)を産み、他人の金を元手にしてバーチャルな世界で金を生み出す現代の金融システム。そしてそれを受け入れ てそのおこぼれを受け取り、共に名声と私腹を生み出す政治家たち。

だからこそ、今回デモに参加している若者たちが不満を訴えている点は、大手銀行や大手企業に対する優遇支援にくらべ、弱者である中小企業や失業者に対する 冷淡な対応であり、貧富の格差に対する不満である。デモ参加者の叫ぶ「銀行や企業は我々貧者から金を盗んでいる」と言う声がそれを表している。

私が前回3回シリーズで、現在の世界的金融危機は単なる経済的危機とは異なり、長きにわたって続いた貨幣制度の崩壊に向かうものだと述べたが、今、全米各地へと広がりを見せ始めているデモは正にそれを如実に表している。だからこそ、ウォール街という金の亡者どもが巣食う賭博場から狼煙が上がったのである。

デモを支持する著名人も少なくない。例えば「華氏911」などの作品で知られる映画監督のマイケル・ムーア氏は9月30日、「名門」として知られるジョージタウン大学の講堂で演説し、現在米国に降りかかっている災難は「21世紀の資本主義」が根本の原因だと主張。参加者から喝采を浴びている。
 

なぜ今始まったのか?

これまで、米国でこうした動きが起きなかったのはなぜか? それは中流、それに準ずる階級の人々は年々上がり続ける株価や土地・建物の波に乗って、ローンを組んでは生活水準を上げ、いつわりの栄華を謳歌して来ていたからである。貧者が「富める者」と錯覚させられていたのだ。
 

 

 
 


ウォール街のデモはすぐにイギリスに飛び火。

 


しかしここに来て、サブプライムローンに端を発したリーマンショックによって住宅価格や株価が低下し、 さらには給料が下がり、職を失い出して、一気におのれの身の程を知り目が覚めたというわけである。中流の生活感を味わっていた多くの人々は家を手放し職を失 って、はじめて自分が決して生活の安定が保証された中流階級でなかったことに気づき始めたのだ。

また、卒業を迎えた学生たちは20%台の就職率に驚き、政府は大手企業や銀行には手厚い保護をしている一方、中小企業や一般庶民には冷たい対応しかしていない ことに気づいたのである。米国政府がこれまでやってきたことは、富める者のみを優遇するという意味では、リビアやシリアなどのアラブの政権とあまり変わらないではないかと、憤りを感じ始めたというわけである。

だからこそ、デモで配布されているチラシやパンフレットには「私たち貧者は99% 、富む者は1%」とあり、優遇されてきた少数の富裕層に対する敵意をむき出しにしているのである。連鎖的に広がり始めた今回のデモ行動が単なるデモではなく、これまでの経済制度、社会制度を根本から覆す流れの一環であることを 、我々はよく理解しておく必要がある。

1日のデモはすぐさま英国に飛び火し、ロンドンでも同様なデモを発生させている。米国、英国両国は共に民主国家として長きにわたって世界を率いてきた中枢国家である。そこで今発生し始めた若者を中心としたデモが 、失業による生活困窮者や失業者を巻き込んだデモとなって広がって来ていることは、米国や英国にとって大きな不安要因であることは間違いない。

こうした動きは、さらにギリシャやイタリア、スペインなどの財政危機国に苦しむ庶民の不満に火をつけるところとなり、これから先、欧米を中心に世界各地でデモやストライキ、暴動が野火のように広がりを見せ始める可能性は大である。 第一次、第二次世界大戦を前にスピリチュアニズム運動の流れが世界に向けて始まったのも、米国ニューヨーク州のハイズビルからであった。

 ウオール街のストが今すぐに米国を揺るがす騒動へと発展するかどうかは分からないが、2、3年後に振り返って見たとき、あれが米国崩壊の 前兆だったと思うことになるのではないだろうか。読者も関心を持って見守って欲しいものである。

 

上がる貧困率 家族4人年収170万円以下が増える

デモ発生の要因が貧富の格差であることは既に述べたが、その実体を表す数字が先日発表されたので付記しておく。それを見れば、今米国で実際に貧富の格差が急速度に広がっていることが分かるはずだ。

米国では、家族4人で年収2万2314ドル(171万円)以下、または単身で1万1139ドル(約85万円)以下の層を「貧困層」と定義しているが、9月13日に発表された国勢調査の結果によると、2010年の貧困者の数は前年より260万人多い4620万人で、統計を初めて公表した1959年以降最悪を記録した。

人口に占める割合(貧困率)は前年比0.8ポイント増の15.1%で、93年以来最悪となった。また、世帯年収を物価上昇分を調整した上で比較すると、中間層は最近30年間で11%しか増えていないのに対して、人口の5%を占めるに過ぎない富裕層の世帯年収は42%も増加している。

 

 


 

 

 

 

 

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