7月下旬以降の大雨による洪水で死者数が300人近くに達しているのがタイ。隣国カンボジアでも既に170人近い死者が出ており、ベトナムなどのインドシナ各国も
かってないほどの被害に遭遇している。さらに東アジアでもフィリピンで台風により100人を超す死者
が発生、中国では新疆ウイグル自治区と海南島では都市部が連日の大雨で冠水している。
タイで最大の被害が発生しているのは、寺院などの遺跡群で知られる古都アユタヤ地方。数週間前から一部地域が浸水していたが、ここ数日で水位が急速に増し、寺院や遺跡群も水に漬かって深刻な被害が出
ている。地元紙によると、17世紀に建てられた寺院「ワット・チャイワッタナラーム」や山田長政で知られる日本人町跡などの文化遺産が冠水しており、その映像はTVでも映されているので、読者もご覧になっている
ことだろう。
また、アユタヤはホンダや日産自動車の日系の自動車生産工場が集まる工業団地でもあり、下請け工場の生産設備が水没して部品調達が滞ってしまい、今月初めから生産停止に追い込まれる企業が続出してきている
。関係者は「再開には少なくとも3〜5ヶ月かかる」というから事態は深刻である。
昨日あたりから、アユタヤ地域を襲っていた洪水は首都バンコクにも及び始め、既に一部の地域では冠水が始まっている。これを受けて、インラック・シナワット首相は、11日から予定されていたシンガポールとマレーシア歴訪を延期することになった。キティラット副首相は8日、
「洪水が広がり続け、非常に危険な状況だ。被害額はすでに300億〜400億バーツ(約750億〜1000億円)にのぼる」と語っている。
タイと同様に被害が深刻なのがカンボジアである。アジアの穀倉地帯であるカンボジアの深刻な被害は、被災地域における農業従事者や貧困層だけでなく、近隣諸国の食料価格の高騰への影響も懸念され始めている。
なにしろタイ、カンボジアはアジアを代表する稲作地帯であるからだ。
首都プノンペン近くのプレイベン県で、冠水し湖となった学校の校舎前で網を投げて漁をする男性の写真を見ると、陸地が湖と化した
異様な状況が分かる。こうした深刻な被害状況を目にすると、我が国の台風被害など小規模なものに見えてくる。龍神に守られた国に住む日本人は幸せである。
正にウォータークロックの到来を実感する毎日であるが、下に掲載したタイの洪水被害を見て頂き、読者も伝えられる洪水や冠水がこれまで遭遇してきた規模とは桁違いのものであることを実感して
頂きたい。ここに映っている状況は既に1ヶ月近く続いており、これから先も1−2ヶ月は続くことになりそうなのである。