失業を測る尺度である失業率は、労働力人口に対する失業者数の割合で定義される。以前にもお知らせしたとおり、ここでいう失業者とは「働く意思と能力があるのに仕事に就けない状態にある人」を指すので、仕事探しをあきらめた人は失業者には含まれないことになる。
ところが今回の数値を見ると、ハローワークに通って職探しをすることをあきらめた失業者の数が2万人も増えており、このために失業率が下がったというわけである。つまり、長年職探しをしていた2万人の人たちが、もうこれ以上努力しても職に就けることは出来ないとあきらめてしまい、路上生活者となったことを示しており、かえって不況の度合いを高めたことになってしまったのだ。
さて問題はこれからで、来週以降、秋口にかけて市場がどう動くかという点である。次の3つが要注意点となりそうである。
@ ギリシャ、イタリア、スペインの財政問題
A 米国国債の格下げ問題
B 米国の財政削減特別委員会の動向
@については、欧州各国や欧州中央銀行(ECB) の要人の発言によって不安と安心が錯綜することになるそうだが、ECBによるこれ以上の債務国の国債買い取りについてはドイツなどから強い反対の声が上がっており、容易ではなさそうである。
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ECBのトリシェ総裁が4日に行った会見で、「最近の経済指標は、この数か月、景気減速を示している。スペイン、イタリア、ギリシャ、ポルトガルは重大な経済問題に直面している」と述べ、ヨーロッパの景気に悲観的な見方を示したが、こうした状況下では、財政立て直しはさらなる景気減速を促進させるため、3カ国の財政立て直しとECBの支援はますます難しくなってくることが予想される。5日の英国をはじめ、フランスやドイツの株式市場が、昨年の夏場以来の安値水準で引けたことがそれを物語っている。
Aの格下げについては、世界の主要格付け会社であるムーディーズと、フィッチ社は米国国債の引き下げは当面見送ることを発表しているが、ここにきて、スタンダード・プアー社(S&P)が引き下げに転じる可能性が出てきており、注目を集め始めている。
S&P社はかねてから、米国が財政問題を安定化するには、緊急的速やかに最低4兆ドルの削減が必要であると述べてきている。ところが、今回の米国議会の決定は10年間かけてわずか2.4兆ドルの削減にとどまっている。その上に新たに2.1兆ドルの債務引き上げ(借金のかさ上げ)が承認されたわけであるから、S&P社の求める「AAA」格付け維持の条件を満たしていないことは確かである。
だいたい、今回の2.1兆ドル(160兆円)の債務引き上げだけで、1年間に支払う利払い額は750億ドル(6兆円)増加することになる。10年間では7500億ドル(60兆円)となるわけであるから、今回の2.4兆ドルの赤字削減目標値の4分の1が消えてしまう。
S&P社がどのような決定を下すか定かではないが、仮に長年にわたって優れた国債としての「AAA」の評価を維持し続けてきた米国国債が、「AA」もしくは「AA+」へと格下げされることになれば、政府が支払う国債の利払いは増加し、さらなる財政赤字へと進むことになる。
それは即、国民にとってクレジットカードや、住宅ローン、学資ローンなどの支払い額の高騰に直結するだけに、さらに景気の後退を招くことは必至である。まさに負の連鎖の始まりである。これにドル安による物価の高騰が起きてきたらスタグフレーションとなり最悪だ。
いずれにしろ、来週から秋口、さらには年末にかけてニューヨークのウオール街をはじめ、世界の株式市場からは目が離せない状況が続きそうである。もしも、前回書いたように、秋口までにダウ平均が一気に10,000ドルを割るようなことがあれば、世界的な経済崩壊の流れは加速し、世界は前代未聞の混乱に突入する可能性が大きくなってくる。
追記
昼のニュースを見ると、S&P社による米国国債の「AAA]から「AA+」への引き下げが決定されたようである。現在、財政赤字で悩んでいる英国以下ということになる。これを受けて週明けの世界の市場がどう動くかが注目されるところとなった。因みに日本は「AA−」である。