ギリシャのパパンドレウ首相は31日、欧州連合(EU)が合意した第2次ギリシャ支援策の受け入れの是非について国民投票で問う方針を表明し、世界に衝撃を与えている。一体ギリシャ政府に、パパンドレウ首相にいかなる変化が生じたのだろうか?
ギリシャ国債の元本を50%削減
することや、欧州金融化安定基金(EFSF)を1兆ユーロまで拡充して、ギリシャをはじめ財政不安に陥っている国々を救済するとする先のEU首脳会議の決定は、ギリシャの財政再建策の実行が前提条件であった。
それだけに、ギリシャ政府としてはなんとしても困難な財政再建策を推進するしか手がない。しかし、年金のカットや公務員の大幅削減に対する反対デモが頻繁に発生し、警官との衝突も発生していることから、パパンドレウ首相は国家的混乱を避けるには国民投票によって民意を問い、賛成を得ることが不可欠と判断したのではなかろうか。見方を変えれば自己防衛策でもある。
首相は国民投票を来年1月に実行する意向のようであるが、国を2分する投票となることは間違いない。デフォルトが発生すれば、国家としてのメンツは失われることになるが、借金が棒引きとなり、ユーロ圏から離脱して安い自国通貨によって輸出振興が図られるなら、それもよしと考える国民が多数を占めるかも知れない。
そうなれば、第2次支援策の受け入れが否決されることになった場合には、EUの支援策は頓挫することになるだろうから、その結果、ギリシャ国家は破綻し、デフォルトによってギリシャ国債はただの紙くずと化すことになる。問題はその先の流れである。
50%削減なら何とか持ちこたえても、完全なデフォルトとなれば破綻する銀行が出てくることは間違いない。特にギリシャ国債を大量に保有するフランスの銀行は危険である。しかし、それ以上に懸念されるのが米国の銀行への波及である。
彼らはギリシャやイタリアなどのデフォルトに対する保証を債権として販売しているからである。つまり、ギリシャのデフォルトはサブプライムローンの再現でもあるのだ。だからこそ、米国のガイトナー長官がEU会議にまで特別参加し、ギリシャ支援策の推進を働きかけていたのである。
さらなる不安はギリシャ国家の倒産劇がイタリアなどに飛び火することである。イタリアのデフォルトの影響はギリシャの比ではない。それが分かっているだけに、パパンドレウ首相の突然の発言にメルケル首相とサルコジ大統領が急遽電話会議をするなど、EU各国首脳は大変な戸惑いを見せているのである。
明日からフランスのカンヌで、注目の20ヶ国首脳会議(G20)が開催される。先のEU首脳会議での決定事項を携えて会議に臨み、世界各国の支援、協力を得ようとしていただけに、メルケル首相もサルコジ大統領も目論見が狂い、どう対応したらよいか苦慮していることだろう。
G20でのオバマ大統領や胡錦涛主席の発言が注目されるところである。世界銀行やIMF(国際通貨基金)などを使って時を稼ぐための秘策が打ち出されることになるかも知れないが、遠からずして、EU(欧州連合)と通貨ユーロが崩壊し、各国が再び自国通貨へと逆戻りすることは避けられそうもない。後は延長時間がどれだけ先に延ばされるかどうかだけである。