8月23日、アメリカのバージニア州をマグニチュード5.8の地震が襲ったことは、既にご承知の通りである。震源はバージニア州リッチモンドの北西約64キロのミネラル付近。遠く離れたワシントンD.C.やニューヨークでも建物が揺れ、人々は外に飛び出した。45分後にはマグニチュード2.8の余震も起きている。
今の日本では、この程度の地震はすっかり慣れっこになっており、特段大騒ぎするほどのことではないが、少々気になる点があるので取り上げることにした。今回の地震の特徴は、アメリカ東海岸という地震が非常に珍しいエリアで起きているからである。
アメリカの地震と言えば、我々はすぐにカリフォルニア州を想起するが、巨大なサンアンドレアス断層が縦断する西海岸と違って、プレート同士がぶつかりあう大西洋中央部やカリブ海のプレート境界からでも数百キロも離れている東海岸では、地震が起きることは非常に珍しいのである。
今回は被害が小さかったため大きく報道されていないが、遠く離れたワシントンやニューヨークで、ビルから一斉に避難している掲載の写真を見ると、現地の人々にとっては、かなりの驚きであったことは確かである。因みに、バージニア州中部でこれまでに記録されている最大の地震は、1875年に起きたマグニチュード4.8の地震である。このように地震とはほとんど縁のない東海岸で、この時期になにゆえ地震が発生したのだろうか?
たまたま偶然という考えもあるかも知れない。しかし、今回の地震には何か意味が込められているように思えるてならないのだ。その可能性の一つがやがて到来する地球規模の大災害の発生の予知とその時に遭遇する原発災害に対する警告である。
遠からずしてやってくる大災害は、これまで学者が主張してきたような安全なエリアは存在しないことを伝えており、それによって、安全地帯であることを想定して建設された原発といえども、決して楽観視出来ないことを教えているようである。現に、米国では現在稼働中の104基の原子力発電所の大半が学者が太鼓判を押している東部、中西部に集中しているわけだが、今回はその一角で発生し2基の原発が操業中止となっている。
首都ワシントンの南西部約140キロにあるノースアンナ原発では、今回の地震で、非常用電源で原子炉を冷却する事態となっており、4段階の緊急体制のうち、下から2番目の警戒宣言が出されている。私が驚いたのは、この原発が想定している最大規模の地震はマグニチュード6.2であることである。ということは、今回の5.8の地震はぎりぎりのところであったわけで、もしももう少し規模が大きく6.5まで達していたら福島並みの大災害になっていた可能性が高いのである。
原発閉鎖を求める運動を続けてきているマリリン・エリーさんが「東部の断層は大丈夫と言いくるめられてきたが、それが嘘だったことがよく分かった」と語っているが、安全性に対する政府や原子力関係者の嘘は、なにも日本だけではなかったというわけである。
6月に発生した中西部ミズリー州の洪水でも、防水施設の一部が破損、核燃料プールの冷却機能が失われ、非常用ディーゼル発電機を稼働させ大難を逃れたことを考えると、先の洪水や今回の地震はこれから遭遇することになると思われる、大地震や大洪水による原発事故に対する警告である可能性は大きいように思われる。
実は、福島原発の発生の後、原発の安全性を再検証した特別チームが「米国では、福島のような出来事が起きるとは考えにくい」という報告書をまとめたばかりであるだけに、今回の地震が天からの警告だったとすると、なんとも絶妙なタイミングである。
これから先、200年前の1811年12月16日にロッキー山脈東側を襲ったマグニチュード7.7の大地震が再来したら、イリノイ州、インディアナ州、ミズーリ州、アーカンソー州、ケンタッキー州、テネシー州、ミシシッピ州一帯は大災害となり、原発災害は各所で発生しアメリカは壊滅的状況になるに違いない。
それにしても、米国では今年に入ってから、記録的な自然災害、大雪、寒波、巨大竜巻、熱波、山火事が立て続けに襲っている。そこに来て、今回の規模は小さいとは言え珍しい地震である。この後に、噴火でも起きるようならまさに自然災害の予行演習である。
米連邦政府はそれを予知しているかのように、今年5月、米国中西部で大地震が発生することを予測して、9,000人以上の州兵が動員されて大規模な避難訓練を実施している。