我々は20年間、知らないふりをして
きただけだった。
米国の熱波は国の3分の2を覆い、既に死者の数も30人を超し始めてきている。また、ソマリアでは干ばつにより、食料や飼育していた家畜を失った避難民の数が数百万に達し、国連が緊急事態宣言を出すに至っている。
実は、こうなることは皆、既に分かっていたことであり、ただ我々が知らぬ存ぜぬで来た結果に過ぎないのである。それを思い知らされることになったのが、今回お伝えする「伝説のスピーチ」である。
添付の映像は、1992年6月。ブラジル、リオ・デ・ジャネイロでの「環境と開発に関する国連会議(環境サミット)」に集まった世界の指導者たちを前に、当時たった12歳だった
日系のカナダ人少女、セヴァン・スズキちゃんの伝説のスピーチである。
先ずは、読者が送ってきてくれた次のユーチューブの映像を見て頂きたい。
お恥ずかしい話であるが、私はこれまでに彼女の「伝説のスピーチ」を聴いたことがなかった。それだけに聴き終わった後のショックは大きかった。読者の中にも、12歳の子供のスピーチに涙する人も
いるに違いない。そして、地球の環境改善に対し、これまで何もしてこなかった自分自身が恥ずかしく感じられるかもしれない。かく言う私もその一人であった。
(画像の下の右端の×印をクリックすると、日本語が見れます)
12歳といえば、中学1年生位であろうか。そんな小さな少女が国連の環境サミットという重要な場で、原稿を読み上げるわけでもなく堂々とご自分の考えを
語るスピーチを聴いていると、官僚が書いた原稿を読み上げるだけの大人が情けなく見えてくる。
1992年といえば20年近く前である。こんなに前から、このような子供が人類の環境破壊の恐ろしさと訴えていたことに、改めて衝撃を感じる読者も多いことだろう。
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私(少女・セヴァンちゃん)の時代には、いつか
野生の動物たちの群れやたくさんの鳥や蝶が舞うジャングルをみることができる。しかし、自分の子供たちの世代はもうそんな夢を持つこともできなくなっているのではないか。あなたがたは私ぐらいの時に、そんなことを心配したことがありますか? |
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彼女の言う通り。現在40歳以上の人間は誰もが皆、子供時代に環境問題など心配したことなどなかったはずだ。しかし、今から20年前に既に12歳のセヴァンちゃんは
地球と人類の未来を心配し、カナダのバンクーバーから自費でブラジルまでやって来てスピーチしているのである。
そして彼女が案じた通り、まさに彼女と同年齢の30歳代のお母さんたちは、現に、子供たちにたくさんの鳥や蝶が舞うジャングルを見せられなくなってきて
しまっているのである。前回掲載した「ペルーの異常気象」を読まれれば、どなたも皆それを実感するはずだ。
石油開発やトウモロコシの栽培によって金儲けしようとする人間どもによる熱帯雨林の伐採で、ジャングルは大きく枯れ始めている。その上に40度を超す
気温が25度になって蚊さえ飛ばなくなってしまったらどうやって鳥や蝶が舞うことができるというのか。
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アマゾン流域の焼き畑・伐採 2006年7月撮影
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さらに彼女は居並ぶお偉さんを前に、いつまでのんきなことを言っているのだと、強い警告を発している。
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こんな大変なことがものすごい勢いで起こっているというのに、私たち人間と来たらまるで、まだまだ余裕があるようなのんきな顔をしている。 |
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20年前に子供の目から見ても、既に「大変なことがものすごい勢いで起こっている」と
感じられていたのである。ただ私たち大人はその実態を知ろうしなかっただけである。日本の原発事故や米国や中国をはじめとする世界各地のとどまるところのない巨大
な自然災害を見て、31歳の彼女は今、どんな思いでいるのだろうか。(彼女は現在29歳で、環境活動家として活躍されており、最近来日された際、自然を大事にするアイヌの生き方に共鳴しておられた)
当時の大人たちが子供に語っていた言葉を、彼女は次のように語っている。
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親たちは自分たち子供に向かってよく言ってきました。「大丈夫、すべてうまくいっているから」「できるだけのことはしているから」、「この世の終わりじゃないから」。しかし、大人たちはもうこんな慰めの言葉を使うことができなくなっているようです。 |
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まさに彼女の言った通りである。あれから20年、すべたはうまくいっていないし、
我々は何もして来なかったし、世の終わりさえも見え始めて来ているからである。それなのに、我々はまだ気づかずにいるのだ! 原発一つ止めること
すらできないでいる。電力不足が起きるから、電気料金が上がるから、働き口を失うから ・・・・・・・ なんとも情けない限りである。
これから先も、「闇の勢力」はあらゆる手段を使って口封じを試みるはずだ。しかし、原発推進論者の言い分などに耳を貸す必要などない。
安全神話などとうに吹き飛んでしまっているからだ。原子力開発や石油発掘に注いできた膨大な費用を自然エネルギーに振り向けたら、電力不足など
10年もあれば解決するはずである。ただ、今まではやって来なかっただけ、やることを妨げられて来ただけのことである。
その間、色々と不自由さを感じることだろうが、我慢するしかない。他ならぬ自分自身がそうしてきたのだから。講演の最後に彼女は言っている。行動することこそが大事だと、不言実行である。せめてハガキの一枚ぐらい出そうではないか。他ならぬあなた自身、あなたの子供たち、そしてあなたの孫のためなのだから。
それが出来ぬようなら「光の世界」の到来など望まぬことだ。
周波数の同期化と送電線の共有化
電力問題でよく言われているのは、日本は外国と違って国家間での電力の融通が出来ないから、原発の廃止は無理だというという点である。だからドイツのように、原発全廃にはいかないのだという意見について
考えてみたい。
確かに我が国は、世界の先進国の中で唯一周波数が二分されている国である。それは、100年ほど前に外国から発電機を輸入する際、ドイツと米国に分かれたために、60ヘルツ(ドイツ)と50ヘルツ(米国)に分かれしまったからである。
このヘルツの違いがなければ、電力の需要が高まる夏に関電、中電と東電が融通しあったら、10%や15%は供給しあえるはずである。しかし日本ではそれが出来ないから、原発は必要だという意見については、実は大きな問題があるのだ。そうした考えを述べる人に聞
いてみたい。本当に問題の周波数は統一化することが出ないのだろうか、と。
原発推進のお先棒を担ぐ人間は、周波数の同期化は経費がかかり過ぎて100%不可能だという。また、電力会社もその地域の電力の一社体制が崩れるために、彼らも同じ考えに立っている。しかし、不可能説を唱える人間は、どれだけの経費がかかるか?それはどうやって算出した数字か? などについては一切根拠を示していないのが実情である。
少し調べてみると、実際には、それほど大きな経費がかかるようではなさそうである。現に、NHKのBSテレビに出演していたある人物は、決して不可能なことではないと断言している。年数も15年もあれば実現可能だという。電力会社や原発推進族の発言を鵜呑みにしてはだめである。
周波数の同期化と併せて検討する必要があるのは、送電線の共有化である。海外では電力を供給する電力会社と送電線を持っている会社は別々である。だから、送電線は電力会社の所有物ではなく、電力会社同士あるいは民間の電力供給会社が共有できることになっている。この点も
、これから先、民間会社が自然エネルギーによる電力を発電し、供給する上で非常に大事な点である。
これらの点と、自然エネルギーへの取り組みを真剣にやっていったら、危険極まりない原発など、10年少しで全廃に持っていけるはずである。現に、ドイツでは2022年までに原発の全廃を与野党が合意し、既に閣議決定しているではないか。ドイツが出来ることを日本で出来ないはずがない。後は強い意志を持って実行に移すかどうかである。
政治家や官僚、電力会社の人間に、セヴァン・スズキ少女の「伝説のスピーチ」を是非とも聴かせたいものである。
追記
セヴァン鈴木さんのドキュメンタリー映画「セヴァンの地球の直し方」は、東京の恵比寿の東京写真美術館で見ることが出来るようです。
セヴァン鈴木さんのお父さんはデヴィッド・ススキ(75
歳)といい、カナダで最高の栄誉であるカナダ勲章、第二のノーベル賞と言われるライト・ライブリフッド賞などを受賞しておられる、カナダでは大変有名な生物学者・動物学者であり、環境保護運動家のようです。
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