一歩踏み出したシリア・イラク情勢


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3日間の空爆停止、さてその後は?

 
 

 
 

 
空爆で瓦礫と化した建物の中で奇跡的に生き残った少年。 しかし、家族は全員死亡

(カタール・アルジャジーラ)

 
 

18日からロシアとシリア軍によるアレッポへの攻撃が一時的に中止されている。  一時停止は人道的理由によるものだ。 20日はアレッポ東部に住む民間人の住民や病人、怪我人、それと 撤退を希望する武装勢力が、確保された6つの避難路を通って撤退する日。 その前の18〜19日の2日間は、撤退を着実に実行に移すための準備期間というわけだ。

現在、アレッポにはおよそ30万人の市民が残っており、内戦の被害にさらされ続けている。 特に反政府軍に支配されている東部ではロシアとシリア軍による激しい空爆によって、 多くの犠牲者が発生し続けている。 休戦明けの9月19日以降だけでも、100人 を越す子供を含む450人近い人々が犠牲となっている惨状については、「 さらに遠のいた和平への道」に記した通りである。

ロシアとシリア政府は、欧米諸国をはじめとする多くの国々から、一般市民を犠牲にした激しい空爆は「戦争犯罪」に値すると強い抗議 を受けている。 また、EUからは経済制裁の声も出ていることから、ロシアとシリア政府は市民をアレッポから退避させようと、避難日を用意したわけであるが、避難日の20日にどれだけの市民と戦闘員が避難することにな るか不明だ。

たとえ避難したとて、市民はテント生活が厳しいことは十分に承知しているだけに、市民の大半は残ることになるのではなかろうか。  また武装集団の戦闘員も多くの撤退は望み薄だ。 そうした事態を予測したロシア政府は、残存する市民や怪我人用の食料や水、医薬品などを18、19日に 搬送しているようである。 

しかし、21日以降に空爆再開された後は、これまで以上に激しい空爆となることは必死だ。  ロシアとシリア政府にとって、武装集団の壊滅のためだという大義名分が通用するからだ。 それだけに、残った市民にとっては、これから先も悲惨な地獄絵の日々が続くことに変わりはなさそうだ。 そして、 子供を失った両親や孤児となった子供たちが次々と発生することになることだろう。

 

 

 

 
 

 
 


こんな崩壊寸前の建物も市民にとっては安住の空間。 しかし、その安住の住まいも
次なる空爆が始まれば一瞬で瓦礫と化してしまうかもしれない。(ロシアTV)

 
 

 

 
 

イラクではモスル奪回作戦始まる
 

 

 
 


ISの最大の拠点となっているモスルの奪回作戦が始まった。

 

 

一方、イラクではIS(イスラム国)に侵略された幾つかの都市の奪回作戦が展開されており、昨年の3月以降、ティクリットやファルージャ、ラマディなど主要な都市の奪還が達成されてきている。  そうした状況下、17日未明からIS(イスラム国)の最大の拠点となっている北部モスルに対する奪回作戦が開始された。 

この戦闘に参加しているイラク側兵士は総勢10万人。 一方、モスル を制圧しているISの戦闘員数は5000人〜1万人。 10万人対1万人では簡単に決着がつきそうに思えるが、実はこの戦闘にはそう簡単にはいかない 幾つかの事情があるのだ。 その主要な要員は次の4点。

@ モスルはISにとって最大の拠点で手放し難い占領地であること。 

A モスルには100万人を超す市民が在住しており、ISは彼らを盾にしていること。

B イラク側は「イラク政府軍」や「クルド人部隊」の他、「シーア派、スンニ派の民兵」も
  加わった 混成部隊であるため、その連携がうまくいくかどうか心配されていること。

C モスルの住民の多くがスンニ派であること。

モスルはISの最大の拠点であるだけでなく、2年前の2014年6月に制圧し、その直後に「イスラム国家」を宣言したISにとって 最重要なシンボル都市である。 また、周囲には幾つかの油田があり、そこから得られる収入はIS にとって重要な収入源となっている。

このようにモスルはISにとって、なんとしても失いたくない最大かつ重要な拠点であるだけに、ISは必死に抵抗するものと思われる。 現に、市街地の周囲には数メートルおきに多数の地雷が埋設されており、イラク軍の戦車部隊が町の中に容易に近づくことが出来ない状況となっている。 また、主要な建物には多くの住民を収容し彼らを盾にしているため、容易に砲撃することが出来ない状況にある。

さらに問題なのは、モスル住民の大多数がスンニ派に属している一方、政府軍部隊の隊員の多くが敵対するシーア派である点である。 フセイン元大統領はスンニ派 であったが彼が追放された以降 、政権を担っているのはシーア派。 つまり、同じイラク人とはいえ、救助しようとする住民は戦闘部隊にとって敵対する宗派というわけである。

そのため、制圧に際して住民の被害が拡大すれば、シーア派が主導する政府への反発が強まりかねないため、シーア派民兵は周辺の包囲だけを担い、モスルへの攻撃には参加しないことになっているようである。 しかし、クルド人部隊やスンニ派民兵だけで、モスルを奪回すること は容易ではない。 こうした問題点を考えると、戦力的にはISを遙かに上回るイラク軍側であるが、モスル陥落は簡単ではなく、 少なくとも1ヶ月、場合によっては数ヶ月を要することになりそうである。

いずれにしろはっきりしていることは、戦闘の終了までにかなりの数の犠牲者と避難民が出ることである。  それだけに、避難民の受け入れのための施設がどこまで出来ているのかが心配である。 イラク政府が建造した3万人を収容する施設は既に完成しているようだが、何十万人の難民が押し寄せたときにはとうてい収容しきれない。

先般、寄付させて頂いた国連のUNHCR協会 も7000人が収容できるキャンプ村を用意しているようなので、少しはお役に立つことだろうが、桁違いの避難民が押し寄せて来た際には、収容出来きれず、ヨーロッパへの新たな難民が発生することになりそうだ。 

 
 

 
 


モスルの奪回作戦が始まった。 (ドイツZDF)
 

 
 

 
     
 

 
 

 

 
 

 
 



イラクでまた新たな難民が発生することになりそうだ。
 

 
 

 
 


3万人が収容できる新たな収容施設周辺には、既にモスルからの難民が到着している。

 

 

 

 

 

 

 




 

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