10月3日のロシアテレビは、2000年に締結された米・ロシア間のプルトニウムの処理に関する合意が破棄されたことを伝えている。
この合意事項というのは、東西冷戦が終結した2000年に、クリントン大統領とプーチン大統領が調印したもので、核兵器の解体によって生じる高濃度プルトニウムを、原子力発電に利用するMOX燃料用に処理するというものである。 その量は米・露それぞれ34万トンづつ、併せて68万トン。
この合意に沿って米ロシア双方が取り組んできていたが、ロシアは再処理のための化学燃料加工コンビナートが既に建設され、1年前から処理作業が行われており、新しい原子力発電所においてMOX燃料の利用が始まっているようである。 一方、米国は南カリフォルニアに工場を建設することで進めていたものの、2011年で作業が中止され、5年が経過した今もそのままの状態が続いている。
今回ロシアのプーチン大統領は、米国の合意事項の未実行を元に、米ロシア間の切迫した状況をかんがみて、合意事項をこれ以上実行することは出来ないと、プルトニウム処理を中止することを発表したというわけである。
これに対して、3日、米国の国務省は異を唱えると同時に、シリア停戦を巡るロシアとの協力関係を中断すると発表。 その結果、シリア内戦の停戦協定は完全に破棄され、米・ロシア間の関係悪化も一段とエスカレートするところなった。
ロシア政府は今回の大統領令を撤回するためには、次の2点が必要だとしている。
@ 米国が東ヨーロッパ諸国に配置したロケット砲など軍事施設を直ちに撤去すること。
(「ロシアミサイル配備に反発」を参照)
A ウクライナ紛争によって出されたロシアに対する一連の制裁を解除し、制裁によってロシア
が被った損失を補填する。
このロシアが要求する2点を米国が実行するのは、現段階ではとうてい無理であること明らか。 それだけに、両国における高濃度プルトニウムのMOX燃料化は、完全にストップ状態が続くことになりそうである。