とうとう米国のシリアへの空爆が始まった。シリア東部に本拠地をおく「イスラム国」の軍事施設への攻撃である。
上の写真を見れば、イラク戦争当時、何度も何度も見せられた、お馴染みの上空からのミサイル攻撃の映像を思い出す。軍施設を狙った攻撃で、ミサイルの精度が高く、住民への被害が少なそうに見えるこうした映像によって、米国をはじめ多くの国々の人々は、米国の参戦を悪を罰する正義の戦いのように思い込まされてきたのだ。
しかし、テレビドラマに登場するような綺麗事では収まらない。ミサイルの狙った先が民間の施設であったり住民の集合場所で、多くの市民が犠牲になって来たことは読者もご承知の通りである。今回のシリアでの空爆は、「イスラム国」に関する詳細な情報がつかめていない上に、シリア政府軍や反政府軍などが乱れて戦っているだけに、目標とする対象物が見当違いである確率はこれまで以上に大きくなることは明らかだ。
現に、昨日の攻撃の対象となったアレッポ付近の建物の崩壊現場(下の写真)には、シリアのアルカイダ系軍事組織「イスラム戦線」の兵士が写っており、「イスラム国」の施設とは異なった建物が攻撃されたことを示している。
思い起こせば米国は湾岸戦争以来長年にわたって、延々と中東で戦争を行ってきた。
そして、オバマ大統領はそのイラクとアフガニスタンでの戦争を終結に導いてきたことを、自ら最大の成果と位置づけてきた。
しかし、今またシリアに空爆を拡大したことは、新たな地・シリアで戦争を始めた指導者として、歴史に名前を残すことになってしまった。
なんとも皮肉なことである。
今回の戦いは、陸軍の投入が出来ない状況下にあるだけに、おそらくはこれから先、米国は長く関わることとなり、これまで以上に複雑でより多くの死傷者を出すことになるに違いない。結局は、イラクやシリアへの陸上部隊の投入に踏み込むことになるのではなかろうか。米国国民はえん戦気分もどこへやら、再び怨恨のエネルギーが渦巻く中東の地で、さらなるカルマを積むことになりそうである。
米国はこれまで一貫してアサド政権を敵対国と見なしてきた。そして今年初めには、そのシリア政府軍に対する空爆を決意したはずのオバマ政権は、今回の「イスラム国」軍への空爆で、一転してアサド政権を支援することとなってしまったわけである。
湾岸戦争以来積み上がってきたカルマによって、米国国家と国民は、何が正義で何が悪か、もはや判断がつかないまでの泥沼に、のめり込んでしまったようである。一方で、財政状況は破綻寸前にあり、また、気候変動による自然災害は、西部の干ばつ、山火事から中部や東部に至る洪水、ハリケーン、竜巻、更には北部の寒波、大雪と、災害のオンパレードが続いている。
米国の未来が決して明るいものでないことは明らかだが、それはまた、人類の未来でもある。昨日、死者2800人と報告したエボラ出血熱の死者は、今日にも3000人を越しそうな勢いで、9ヶ月後と予想されていた2万人の死者数は、6週間後になってしまいそうな勢いである。
まさに今世界は、ホピの預言が伝える「生者が死者を羨む」艱難、「日月神示」が預言した「すべてが壊され、この世に臣民いなくなるぞ」通りの艱難の時代に、とうとう突入してしまったようである。