ロシアの通貨ルーブルが急激な下落を始めた。もはや暴落と言わざるを得ない状況にあり、世界的な政治・経済の大混乱の引き金を引く気配を見せ始めている。
15日の外国為替市場では、対ドル、対ユーロで1日だけで10%も下落、上の図を見てもらえれば分かるように、先月初めには1ドル=40ドルほどであったのが、65ドルとなってきた。この1年で見ると、対ドルに対する価値はおよそ半分以下に下落したことになる。円換算に例えるなら、1ドル100円の円相場が一気に200円に下落し、輸入価格は2倍になったことになる。
下落の要因は幾つかあるが、最も大きな要因が原油価格の急落であることは、上の図を見てもらえれば一目瞭然である。原油価格は今年の6月にはおよそ110ドルで、昨日の価格は55ドル、こちらも半減である。
ロシアの政治経済はこれまでも石油価格に大きく左右されてきた。プーチン氏が2000年に大統領就任した後、ロシア経済は順調に伸び政局も安定して推移してきたが、その背景には原油価格の高騰があった。それがここに来ての急落である。さらに天然ガス料金の40%を越す下落も痛手だ。
ウクライナ問題で欧米諸国からの経済制裁によって、物価の上昇が続き国民の不満が高まりつつあるこの時に、ルーブル安によって輸入物価が2倍に高騰したのでは、不満の声が一段と大きくなるのは当然だ。そればかりか、ルーブル安と原油安は国家の財政を悪化させ、外貨準備高を減少させることにもなる。
ロシア政府は2004年に石油収入積み立て基金を創設し、原油の値下がりに備えて来ており、また、これまで原油・天然ガスをドル建てで売ってきているため、ルーブル安はあまり影響を受けないという見方をする人もいる。
しかし、ロシア財務省の高官は既に基金の取り崩しの可能性に言及しているだけに、さらなる原油安、ルーブル安が進むことになるならロシ政府の財政の破綻(デフォルト)は十分にあり得ることである。また、史上最高値を更新し続けている世界の株式市場も、原油安によって動揺し始めて来ている。原油の暴落によって商品市場のファンドが破綻し始めたら、株式市場だけが安泰でいることは出来ない。
どうやらロシアと中国の動きからは、一段と目が離せなくなってきたようだ。