ウクライナ政府と親ロシア勢力との対立は、先の停戦合意で収まったかの印象を与えているが、小規模の戦闘は今もなお続いており、ウクライナのEU加盟が近づく中、加盟を目指すウクライナとそれを阻止しようとしているロシアとの間だけでなく、EU対ロシアの緊迫度も一段と増してきている。
それを裏付けるように、2日に開かれたNATO(北大西洋条約機構)の外相会議で、加盟国が攻撃された場合、短期間で現場に駆けつけることが出来る「速攻部隊」の運用を当初予定していた2016年より早めて、来年初めには始動出来るようにすることが決定された。
部隊の規模は4000人ほどで、その主力となるのはドイツ軍、それにオランダやノールウエー軍が加わることになり、指揮はドイツ軍がとることになるようだ。装備が充実しているドイツ軍が出動してロシアとの戦闘開始となると、事態は一気に緊迫度を増すことになる。
ウクライナ情勢を巡るロシアとEUとの対立により始まった経済制裁合戦は、一向に収まる気配が見えない状況が続いている。EU各国も輸出が激減して経済停滞が深刻度を増してきているが、一方ロシアも通貨ルーブルが急激に低下してインフレ率が急上昇してきており、国民の間で不満が高まってきている。
そうした中、フランス政府は先日、ロシアへの輸出を決めていた駆逐艦の輸出許可を、改めて取り消すことにした。一方、ロシアのプーチン大統領は、EUへのガスパイプラインの一つとなる予定で進めていた「サウス・ストリーム」(黒海経由)の建造を中止すること発表した。域外から輸入するガスの内40%をロシアに依存しているEU、中でも東欧諸国はこれでまた大きな痛手を被ることになりそうである。
こうした予断を許さないウクライナを巡る情勢だけでなく、宗派間対立とイスラム国問題で死者と難民が続出し続けている中東情勢、また先月18日、聖地エルサレムのユダヤ教礼拝所で5人の死者が出た襲撃事件により、再び対立が深まってきているイスラエル対パレスティナ問題。
こうした争いは一向に収まる気配がなく、世界はますます混沌の度合いを増してきている。
一旦どこかで大きな火の手が上がった時には、全ての情勢に油を注ぐこととなり、欧米対ロシア・中国の争いへと発展することになりかねない。年内はなんとか持つだろうが、年を越した辺りから自然災害の発生や国民の格差対立などと一緒に、大規模戦争の発生という面においても、世界は一段と厳しい状況に追いこまれることになりそうである。