実体は更に深刻化している
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エボラ出血熱の感染拡大はどこまで阻止できるか
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世界中が懸念しているエボラ出血熱感染の拡大。最新の発表では既に死者は1200名近くに達し、日々増え続けており、エボラ出血熱が世に知られるようになって以来最大の規模となっている。米国のCNNニュースは、8月11日の段階で、「2日間だけで
56人が新たに死亡した」ことを伝えており、その拡大の凄さが分かる。
しかし、実際の患者数や死者の状況は、我々が知らされている状況より更に悪化しているようである。それは、国境なき医師団のギニアの代表が語った次の発言が如実に物語っている。「
西アフリカのエボラ出血熱の感染状況については、感染者が出ていながら、我々がまだ把握できていない場所が多数あり、制御できないまま、状況が悪化し続けている
」
15日に、ジュネーブで記者会見した国境なき医師団インターナショナルのジョアンヌ・リュー会長の発言もまたそれを物語っている。「感染は対応能力を超えて急拡大しており、戦争状態だ」「感染の拡大は今まで経験したことがない(規模だ)で、現地では感染に対する恐怖心がまん延し、(あいさつの)握手をしなくなっている」
また、世界保健機関(WHO)は14日、「(発表されている)感染者と死者数は、実際よりも大幅に少ない」との声明を発表。感染対策には「前例のない措置」が必要だと訴え、各国に連携強化を改めて求めた。
リュー会長が「楽観的に考えても(封じ込めには)少なくとも6カ月以上かかる」と述べているように、今回の感染拡大の阻止にメドが立つまでには、これから先、長期にわたって対策を講じなければならないが、その対策の基本となるものは、住民の動員、監視、治療である。
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リベリアのエボラ隔離センターの様子
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ところが、16日には、最大の感染者と死者が発生しているリベリアの首都モンロビアで、武装した男たちによって感染者の隔離施設が襲撃され、備品や食料が略奪されたほか、20人を越す患者が連れ去られるという事件が起きている。住民の無知と生活困窮が要因と思われるが、隔離施設が襲撃され、患者が村に連れ戻されては感染拡大は進むばかりだ。
また、リベリアからの出国者によって感染が発生し、既に 2人の死者や10人を超す患者が出ているナイジェリアでは、政府がストライキをした医師たち16000人を一斉に解雇した、というニュースが伝えられている。
ナイジェリアの医師がどれほどの数か分からないが、16000人という数は大変な数であることは間違いない。エボラ出血熱の感染拡大阻止に当たらなければならないはずの医師が、緊急事態の今、これだけ解雇されては大変だ。国民から怒りの声が上がっているようだが、なんとも驚きの事態だ。
アフリカ以外への感染の懸念
感染拡大の心配はアフリカ国内だけのことではない。どうやら、アフリカ国外への感染も出始めているようである。8月14日付けの「Newsweek」は、アルバニアで検疫を受けた5人のアフリカ人不法移民が、エボラ出血熱に似た症状を見せていることを伝えている。彼らはギリシャ経由でアルバニアに不法入国した人々である。
アルバニアという国は、バルカン半島のギリシャに隣接する国であるが、今アフリカからは多くの難民が、アルバニアに限らずイタリアやスペインなど地中海周辺の国々に不法入国を繰り返している。欧州各国とも感染者の入国には万全の措置をとっているが、こうした難民を経由してのエボラ出血熱の感染拡大はあり得ないことではなさそうだ。
また、8月17日のインドのメディア「タイム・オブ・インディア」でも、首都ニューデリーの病院に3人のエボラ感染の疑いのある3人の患者が運ばれたことが報じられている。彼らもまた、ナイジェリアから来た人々で、3人は到着時に熱があり、国立疾病管理センターでサンプルの試験が行われている。更には、ナイジェリアから帰国したチャッティースガル州の32歳の
インド人も同じ病院に入院しており、 同様な検査がおこなわれている。
これから先しばらくの間、エボラ出血熱のニュースからは目が離せない日々が続くことになりそうだ。
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