「反腐敗キャンペーン」を政敵つぶしに利用しようとしている周近平政権の崩壊が、遠からずしてやって来そうなことは前回「中国のトラ刈り、キツネ狩り」で記した通りである。中国の崩壊劇
のきっかけは政権闘争だけとなるとは限らない。「経済の破綻」も「人心の動乱」もその要因となる可能性は大きいからである。
中国経済がここに来て一気に減速してきていることは、7.3%に落ち込んだ7〜9月期の経済成長率や、その他の主要統計指標を見れば明らかである。どうやら今年度の経済成長率は目標の7.5パーセントを大きく下回り、
7%台を維持するのが精一杯となりそうである。6%が上乗せ(誤魔化し)数字であることを考えると、事実上、0%成長に陥っているのである。
そんな中、中国経済の牽引役を引き受けてきたシャドーバンキング(影の銀行)の崩壊がいよいよ始まりそうな気配だ。シャドウバンキングと呼ばれる投資信託会社が、10〜20%という超高金利をうたい文句にした理財商品の販売で集めた資金の多くを、地方政府や国有企業に投資
して来たことは、「中国経済破綻の狼煙」などで既にお伝えしてきた通り
である。
地方政府や国有企業が、開発ブームに乗って行ってきた産業基地建設や巨大な住宅建設が「中国のトラ刈り、キツネ狩り」で書いた反腐敗キャンペーンによって一気に縮小し、不動産バブルが崩壊へと進んでいる。官僚や役人たちが出世より身の安全を優先した結果だ。その矛先が向かうのが理財商品で集めたた巨大な資金を、地方政府や国有企業に有してきたシャドーバンキングである。
今年の3月、中誠信託や吉林信託などのシャドーバンキングが、融資していた企業の経営破たんで元本返還が出来なくなり
、デフォルトが発生するのではないかと心配された。 しかし、期限ぎりぎりの段階で、経済破綻の始まりを恐れた中国政府が第3者を通じて負債の肩代わりしたことで
、危機一髪回避されたことは、「危うくなった中国」に記した通りである。
あれから9ヶ月、今度は江蘇省蘇州市の大手シャドーバンキングの高仕公司が破たん寸前となり、投資家から集めた25億元(約478億円)が全額返還不能となったため、被害者らが12月初めから連日抗議を続けている。これとは別に、河南省内でもこのほど、複数の信用保証会社が相次ぎ倒産したのを受け、政府の監督責任を問う大勢の投資家たちが大規模な抗議を続けている。
両ケースとも負債額が数百億円程度とその規模が小さいので、今回もまた中国政府が介入し、デフォルトは回避されることと思われるが、米格付け会社のムーディーズは、中国の影の銀行に関する初めての最新報告書で、2013年末までにその規模は37.7兆元(約720兆円)に達しており、GDP(国内成長率)の66%を占めるまでに至っていると記している。
私はこれまで市場に出回っている理財商品の額は300兆円
〜400兆円程度かと思っていたが、ムーディーズ社の報告書はその倍近い720兆円となっおり、この数値には驚かされた。報告書は「重大なリスクを抱えている」と警鐘を鳴らしているが、今の中国政府が救済できる額が数兆円規模であることを考えると、
中国経済はまさに危機的状況、薄氷の上にあると言えそうだ。
どうやら、中国、ロシア、欧州、米国、日本、世界経済の崩壊は、今やどこが発火点となってもおかしくない状況にあるようだ。