聖地エルサレムで今何が起こっているのか
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(写真@)聖地エルサレムにあるイスラム教のドームが建つ丘は、
世界最終戦争・ハルマゲドンのスタート地点となるかもしれない
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11月にイスラエルの聖地エルサレムで起きた「ユダヤ人襲撃事件」。我が国ではあまり大きく取り上げられなかったが、一歩間違えると
、世界を巻き込むパレスティナ対イスラエルの本格的な宗教戦争に発展しかねないと世界は注視している。
この事件は11月18日に聖地エルサレムにあるユダヤ教礼拝所が襲撃され、ユダヤ人5人の死者が発生した事件で、容疑者は2人のパレスティナ人とされており、ここ数年でエルサレムで起きた最も凄惨な事件としてユダヤ人社会に衝撃を与えている。
どうやら事件の背景には、それより6日前の12日に発生した、ユダヤ人強固派と思われる人物によって、パレスティナ人が住むヨルダン川西岸地区のイスラム教礼拝所が放火された事件があるようだ。つまり、ユダヤ人とパレスティナ人の報復合戦というわけだ。
読者にこうした一連の事件の発生の背景を説明するためには、イスラエルとパレスティナの簡単な歴史を知ってもらう必要があるので、NHKのBS1で放映された「
エルサレム襲撃事件 深まる宗教対立」を参考に、簡単に説明させてもらうことにする。
来年には「イスラエル対パレスティナ問題」が脚光を浴びることとなるので、しっかり読んで頭に入れておいて頂きたい。
先ず下図Aを見て頂きたい。ユダヤ王国がアッシリアやバビロンに滅ぼされ、ユダヤ人が去った後にイスラム教徒が住むようになったこの地は、第2次大戦後の1949年に起きた第一次中東戦争によって、イスラエルとパレスティナに2分されるところとなった。
その時、パレスティナは図を見たら分かるようにイスラエルを挟んで「ヨルダン川西岸地区」と「ガザ地区」の東西に分離されてしまった
。
今年8月に発生したイスラエル対ハマスとの戦いで2100人の死者と数万人の負傷者が出たのは「ガザ地区」
の方であった。この地区はパレスティナ政府というよりハマスと呼ばれるイスラム組織が事実上統治している。
今回の事件の背景を知ってもらうには、もう一方の「ヨルダン川西岸地区」に目を向けてもらうことになる。
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図 A
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図 B
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「イスラエル対パレスティナ問題」が発生するたびに登場するのが聖地エルサレムであるが、エルサレムは図Bのように「ヨルダン川西岸地区」と「イスラエル」に跨がっており、その中でも最も重要な地である「エルサレム旧市街」は図Cのようにパレスな人居住区の中にある。
そこはさらに図Dのようにキリスト教地区とアルメニア正教地区、イスラム教地区、ユダヤ教地区に分かれている。
この図を見ただけで聖地エルサレムの中心地・エルサレム旧市街がどれだけややこしい場所であるかが分かるはずだ。
そのエルサレム市街地の中でも、イスラム教徒とユダヤ教徒にとって最も神聖な聖地とされている場所が、イスラム教地区にある「岩のドーム」と呼ばれている丘である(上段の写真
@ 参照)。そこにはよくテレビに登場する有名な金色に輝くドームのイスラム教のモスクが立っており、イスラム教徒はそこを「ハラム・アッシャリフ」(高貴なる聖域)と呼んでいる。
しかし、そこはまた古代ユダヤ王国時代にユダヤ教の神殿が立っていたとされる場所で、ユダヤ教徒にとっても「神殿の丘」と呼ばれて聖地でもあるのだ。
現在は宗教的対立を避けるためにこの地での礼拝はイスラム教徒にしか許されていないのだが、近年、強硬なユダヤ教徒たちは、そこで自分たちが礼拝しても許されるはずだと主張するようになってきているのである。
そうした経緯で「岩のドーム」を巡って宗教的対立が激化する中、ユダヤ人強固派と思われる人物によってイスラム教礼拝所の放火事件が発生、それに憤ったイスラム教徒過激派がユダヤ教礼拝所を襲い5人の死者を出す「ユダヤ人襲撃事件」が発生したのである。
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図 C
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図 D
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イスラエルに対するイスラム教徒の不満や憤りは一通りではない。その主なものを簡単に列記すると、以下の通りとなる。
@ 1941年の第1次中東戦争で国家が「ヨルダン川西岸地区」と「ガザ地区」に分離されてしまったこと。
A 1963年の第3次中東戦争で、「イスラエルのための西側」と「パレスティアンのための東側」の分かれていた聖地エルサレムが、全てイスラエルに占領されてしまったこと。
B パレスティナ人にとって最後の領地であるはずの「ヨルダン川西岸地区」にも、近年、ユダヤ人向けの住宅が次々と建設されパレスチナ人が排除され出してきていること。
中でも、Bに対する憤りは強く、移住してきた過激なユダヤ人入植者によるモスクへの放火や銃を使った暴力行為は、パレスナ人の怒りの火に繰り返し油を注ぐところとなってきている。しかし、パレスティナ人の青年が怒って石を投げれば、ユダヤ人は銃で反撃。まるで子供と大人の喧嘩で
ある。その結果、パレスティナ人に多数の死者が出る一方、ユダヤ人はわずかな負傷者しかでないのである。
今回のユダヤ人襲撃事件の行方は流動的だが、ネタニヤフ首相の率いるイスラエルがどう対応するかによっては、1987年と2000年に起きた「インティファーダ」(蜂起)と呼ばれる大規模な抵抗運動が「ヨルダン川西岸地区」で発生する可能性は大きく、それは一歩間違えると、中東諸国を巻き込んだ第5次中東戦争へと進むことになるかもしれない。
今年から来年にかけて発生するブラッドムーンはみなユダヤ教の重要祭事に重なる
2014年04月15日 皆既月食 過越の祭りの初日
2014年10月08日 皆既月食 仮庵の祭の前夜祭
2015年04月04日 皆既月食 過越の祭りの初日
2015年09月28日 皆既月食 仮庵の祭の初日 |
来年、イスラエルの新政権はどう動くか
ブラッドムーン(血の月)と呼ばれる赤みがかった満月が見られる皆既月食が、今年の4月15日から来年の9月28日までの間に4回連続して発生し、その全てがユダヤ教の重要祭事・「過越の祭り」(すぎごしのまつり)と、
「仮庵の祭り」(かりいおのまつり)に合致することは、「月食と中東情勢」に記した通りである。
問題は、この極めて希な現象が発生した1948年〜1949年と1967年〜1968年に
は、第1次中東戦争と第3次中東戦争が勃発していることである。 ネタニ
ヤフ首相は
総選挙を1年前倒しして3月に実施することにしたが、その結果
、もしも首相率いる右派政党・リクード党や現在同盟を組んでいる極右政党が勢力を伸ばすことになったら、「ヨルダン川西岸地区」への入植政策がさらに進められ、パレスティナ人との衝突はより一層激しさを増すことにな
りそうである。
また一方、対立が続いているイランやシリアなどの中東諸国との亀裂もさらに深くなりそうである。現に昨日のニュースでは、イスラエル空軍によるシリアの首都・ダマスカス国際空港周辺への空爆が伝えられてい
る。こうした行為は一歩間違えば、中東諸国を巻き込んだ第5次中東戦争へのきっかけとなりかねないだけに心配である。
もしも、1949年と1967年に次いで来年2015年に、第5次中東戦争が勃発するようなことになったら、今回は中東地区だけに留まらず、米国やヨーロッパ、ロシア・中国を巻き込んだ世界最終戦争(ハルマゲドン)に向かうことになるかもしれない。
今エルサレムの治安が悪化してきていることは間違いなく、市民が西エルサレムと東エルサレムを走る市街電車に乗るのを控えたり、拳銃や催眠スプレー
の発射銃が大量に売れていることが、緊張感の高まりを裏付けている。
2015年は自然災害や経済破綻だけでなく、どうやら世界的規模の戦争や社会動乱を引き起こす年となる可能性が、増してきそうな気配である。
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