少年を巻き込んだ報復合戦
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(ロイター) |
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「アラブに死を!」「ユダヤ人に死を!」を合い言葉に、報復合戦の様相を
呈してきたユダヤ人とパレスチナ人の骨肉の争いは、一段と激しさを増してきた。
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シリアの内戦での死者が150,000人を突破する一方、イラクでは新たに内戦に突入し、宗派間戦争が一段と激しさを増してきている最中、今度はイスラエルで、パレスティナ人とユダヤ人同士の新たな紛争が発生、両者の憎しみが一段と増して来ており、中東情勢は更なる悪化に向かって進んでいる。
先月、イスラエルのヨルダン川西岸で、ユダヤ人の10代の子供3人が何者かによって誘拐されて殺害された事件で、イスラエル当局はイスラム原理主義組織
・ ハマスの犯行と断定し捜査を進める一方、パレスチナのハマスの活動拠点への破壊工作を展開している。
そんな最中、2日には今度は東エルサレムでパレスティア系の16歳の少年が連れ去られ、ガソリンを飲まされた上で、火をつけられて殺されるという残虐な殺人事件が発生した。さらに数日前には、首都エルサレムを訪れていたこの少年の従兄弟にあたる少年が、イスラエル人の警官によって殴る蹴るのひどい暴行を受け、一時拘束される事態が発生した。
こうした罪のない子供を巻き込んだ殺人行為に、憎しみと怒りを露わにしたパレスティナ人、ユダヤ人市民が抗議行動を起こしており、イスラエルは今、異常な緊張状態に置かれている。ネタニヤフ首相は両事件の捜査を平等に行うことを誓う一方、双方に冷静な対応を呼びかけているが、両者の憎しみや怒りは収まりそうになく、パレスティナ人、ユダヤ人の報復合戦はこれから先、一段と悪化しそうな情勢である。
1948年に多くのパレスティナ人が住む土地にイスラエルが建国されたことに端を発したパレスティナとイスラエルとの対立、あれから半世紀以上が経過した今も、その根の深さ故に事態は沈静化するどころか、報復の応酬によって更なる不安定化に向かって進んで来ている。
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イスラエル警察によって暴行を加えられ、一時軟禁されていたパレスティナ系米国人
の少年・タリク・アブ・ハディア君(15歳)が語る 「なぜ何もしていない僕がこんな暴行を
受けねばならないか知りたい」 という言葉が胸を打つ。 子供を巻き込んだ争いは、
相手に対する憎悪の感情が一段とが大きくなるだけに、これからの先行きが心配だ。 |
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イスラエルとパレスティナの紛争が起きるたびに、米国をはじめ国連や各国による仲裁が何回繰り返されてきたことか。最近行われていたオバマ政権による和平交渉もパレスティナ政権がハマスと手を組んだことで中断し、お手上げ状態となっていた。そこに来て、今回のユダヤ人、パレスティナ人双方の市民殺害の報復合戦の始まりである。
私が今回、両事件を取り上げたのには二つの理由がある。一つは、ユダヤ人、パレスティナ人両者の憎しみの対象となっている事件の犠牲者が、共に罪のない十代の子供たちであるという点である。それも拉致されたあとに無残な殺され方をしているという点である。
もう一つは、暴行を受け監禁された後に解放された少年がアメリカ人であるという点、それに暴行を加えたのがイスラエル警察当局者であったという点である。米国といえば富裕層であるユダヤ系市民がその政治力によってユダヤ人擁護に徹してきた国だけに、今回、自国民がイスラエル警察当局者によって厳しい暴行を受けたことは、大きな衝撃に違いない。もしも今回の事件が大きく取り上げられないようなら、米国のマスコミはユダヤ系組織に牛耳られていると言わざるを得なくなってくる。
シリア、エジプトと内戦や政情不安が広がる中、イラクで発生した新たな戦闘行為は、今やサウジアラビアやイランなど中東のイスラム社会全体を巻き込んで、「シーア派」対「スンニ派」の宗派間戦争へと向かわせようとしている。
そんな中で一段とドロドロしてきたイスラエルとパレスティナの紛争を見ていると、次なる中東戦争「ハルマゲドン」への口火となるのではないかという強い予感がして来る。「人権と和平」を名目に世界中の紛争に参画してきた米国に、今、戦争疲れの色がにじみ始めてきている時だけに、なおさらその感が強い。
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パレスチナのガザ地区に投下されるイスラエル軍のミサイルは、遠くないうちに強い憎悪
の念を乗せて、ユダヤの人々に向かって戻って来ることになりそうである。 (ABCニュース)
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